彼女の実家に遊びに行った時に
彼女の父親が車に跳ねられたと警察から連絡。

とりあえず俺が家族と連絡を取るので彼女の家で待機って事に(携帯のない時代の話)。
彼女お母さん彼女や兄が仕事先から戻るまで推定で三時間はあった。
一時間後、彼女から電話があり命に別条はないが手術をしているから母親が帰宅したら着替えを用意して病院まで来て欲しいとの事。
俺も安堵の一息。
さらに一時間後に彼女が帰宅。
事情を説明すると彼女が慌てて飛び出し病院へ。
一気に暇に…さらに一時間が経過。
彼女母親が帰宅。
電気も点けてないでいる自分に驚いていたが、事情を説明すると彼女母親は慌てて荷物を整えた。
そして当たり前のように俺は留守番を頼まれた。

後はアニキか…それより俺の車がないから帰る事が出来ないなぁ…等と考えていたら…ウェイトレス4から電話。
買い出しとかに車を使っているから戻るのがもう少し遅くなるから出前でも取って食べてて…。
俺もそんな気にはなれずに電話を切るとウェイトレス4の部屋へ…ベッドに横になりぼーっとしてると本棚の上に手帳らしき物を見つけた。
身体を起こして手帳らしき物に手を伸ばしたら…電話が鳴った。
ウェイトレス4のアニキからだった。
残業で遅くなるとの電話だったが、俺が事情を説明すると、残業が終わり次第に行くと言われた。
ウェイトレス4の部屋に戻ると俺はウェイトレス4の手帳に手を伸ばした。
それは手帳と言うよりも日記帳だった。
パラパラと捲っていくとハートマークがセックスをした日、Sが生理だとわかった。
付き合い始めの頃からウェイトレス4の俺との初体験迄の話には「男と女じゃ考え方も違うんだな」と感心したり…同じ景色を見ていても目線が違うと見えるモノが違うんだと実感したり…。
ウェイトレス4の父親が無事なせいか和んでいた。
それから読み耽り四か月前くらいのページに辿り着いたら、ページの2、3枚がきれいに切り取られていた。
そしてそれ以前と以後では明らかに書き方が違っていた。
ぞんざいな書き方になっていたし、日記というよりも記録になっていた。
俺との事も日付とマークが書いてある程度でしかなくなった。
付き合い始めて二年だし当然かな…。
俺は日記(手帳)を閉じてとじて本棚の上におこうとしたら…カサカサって音がした。
何か他にある!?別に疑ってた訳でなく、位置がズレてたら困るのは俺で…盗み読みしていたから慌てて椅子を取り本棚の上をのぞいた。
そこには切り取られたページと手紙、ポケベルと布袋にビデオがあった。
!?胸騒ぎがした。
当時は93年でポケベル最後の時代だったが、俺もウェイトレス4もベルは持っていなかった。
俺は携帯を持っていたが、会社からの支給で私用に使ってはいなかった。
とりあえずポケベルを触ってみた。
ピーピーピー…。
止め方がわからない。
アレコレしているうちに文章が出てきた。
「アイタイ、デンワホシイ。ユウジ」「アレ ミタ?カレニミセル?」「デンワ ホシイ」「レンラク シロ」内容は微妙に違うかも知れないが、容赦して下さい。
俺はカァーっとなった。
同時にどういう事?って思った。
俺はとりあえず袋を開けた…。
開けた瞬間にゴム臭いというか、酸っぱいような甘いような臭いがした。
中身を取り出すとウェイトレス4パンティにくるまれたバイブに精液入りのコンドームが何個もぐちゃぐちゃに入っていた。
俺は完全にパニックになった…。
袋の横にメモがあり「バレたら恥ずかしいだろう、これは僕からのプレゼントだよ。ベルがなったら必ず電話するように」僕は完全にパニックになっていた。
慌ててビデオに手をやると僕はウェイトレス4のテレビデオにテープを放りこんだ。
その時、携帯がなった。
ウェイトレス4からだった。
今から病院を出るから一時間はかかるとの事、家に着いたら荷物を持って病院に戻るからよかったら病院まで送って欲しいとの事だった。
俺は努めて冷静に対応した。
一時間…俺は電話を切ると再生のボタンを押した。
ベルの履歴から…10日前後でしょう。
ホテルの一室、ラブホではなくてシティホテルってのはわかった。
男側から入口に椅子があり、そこに焦点が合わせてあった。
画質はかなり暗いし粗かった。
編集があり(ブツ切り)ウェイトレス4が部屋に入ってきた。
「よく来てくれたね、嬉しいよ」「こんな所に呼び出さないで下さい。」暫くやりとりが続くが椅子に座るように促されてウェイトレス4はそれにしたがった。
ウェイトレス4は脅されているようだったが、観念したのかキスを受け入れているように見えた。
男がウェイトレス4から離れると目に涙が浮いていた…。
(流れていたし、泣き声になっていた)ウェイトレス4は肩を落とし何かを言った後にシャワールームの方へ消えていった。
男は慌てて電話をかけ始め、すぐに玄関の方へ消えていった。
すぐに男が戻ると、側にもう一人の中年男性がいた。
そして男がもうひとりの男Bをクローゼットに押し込むと男はカメラをベッドに向けて調整していた。
服を脱いで素っ裸でベッドに腰をかけている男。
ウェイトレス4シャワールームから出て着たが服を着ていた。
「部長、やっぱり嫌です。許して下さい…」声と共にチラチラとウェイトレス4が映っていた。
男の声が聞こえるが何を言ってるかわからない。
ウェイトレス4が「本当にそれで許して貰えますね?」そういうとウェイトレス4は男の前に立った。
男がウェイトレス4の腕を掴み…男の前に膝間付かせた。
俺はビデオを止め、見るか止めるか悩んだ…。
そして決心してビデオを再生した。
男が何かを囁きながらウェイトレス4の髪を撫でていた。
そうして腕に力が入ったと思ったらウェイトレス4の首がうなだれた…。
フェラチオ!しかも股を開いてベッドに座っている男の足の間に立ち膝の格好で!音は聞こえないが…ときおり男が指示しだした。
そして男がウェイトレス4の胸に手を入れようとしたが、ウェイトレス4が激しく拒絶した。
男は大声で「イクまでの約束だろう?これじゃイケないから少しくらい触らせろよ」そういうとウェイトレス4のニットを無理やり脱がせブラをずらした。
男はウェイトレス4フェラチオをさせながら胸をもんでいた。
そして暫くすると顔を上げさせ、胸に吸い付いた。
「約束が違…」ウェイトレス4は両腕を後ろでに掴まれて乳首をしゃぶられていた…。
「なぁいいだろ!最後に入れさせてくれよ!」ウェイトレス4は激しく首を横に降り「それだけは嫌!」と拒絶していた。
俺はそこまで見るとビデオを止めた。
話の流れもわかったし、今なら戻れるような気がした。
俺はビデオを巻き戻して元の位置に直す事にした。
物凄く鬱な気分で椅子に乗り、袋やビデオを元の位置に戻していると破かれたページが目に入った。
それをおもむろに開いてみると、最初の頃はトレーナー(教育係り)と反りが合わないと書いてあった。
努力をしているがイジメに遭っていると書いてあり、藤原部長が間を取り持ってくれていたり…悩みを聞いてくれているとの事だった。
それから一か月の研修期間は丸々イジメられたが、配属先が藤原部長の部署になり安心した…なんて書いてあった。
その間はたしかにほとんど電話も出来ない(親元だし携帯がないからね)し、日曜も研修だったりしたからウェイトレス4が俺の会社の通用口で待っててくれた時や他には何日かしか逢えなかった。
そして部長主催の新歓飲み会があったらしいが、部長は接待でキャンセルだった事が判明。
後日、個別か新人を連れて改めて行くような事が書いてあった。
同時に私物が無くなるのが困るってのも目についた。
無くなるのは大したもんじゃなく、ペンやクリップの類で引きだしの中のモノらしかった。
俺もその話は聞いたが、「気にするなよ」みたいな事を答えた気がする。
そしてページをめくると犯人が捕まったとの事だった。
同期の男性社員がストレスから盗癖に走ったらしく、彼の机の引きだしにはペンや消しゴム、ブラシや…がごっそり出てきたらしい。
彼はとりあえず休職にして療養する事になり、親が田舎に連れて帰ったらしい。
俺は読み耽った。
その2、3日後に部長に連れられ飲みに行ったらしい。
そこには厭味なトレーナーも来ていたそう。
トレーナーがウェイトレス4に「将来性を見込んで他の新人よりもキツくあたったが我慢してくれてよかった」「部長にも怒られたが、伸びる社員だからと…」みたいな事を言い、小さなプレゼントを渡して謝ったらしい。
そして、そのトレーナーわ詫びを言うとすぐに帰ってしまったらしい。
その後は2時間程度飲んだそうだが、気分が悪くなったのでタクシーチケットを貰って帰宅したらしい。
次の日からはトレーナーと顔を合わせても、鬼トレーナーの雰囲気はなく気さくなオジサンだったみたい。
そして金曜日の夜に部長と飲みに行って記憶がなくなったらしい…。
気がついたらベッドで半裸にされて部長が上に乗ってたらしい。
フラッシュが焚かれた記憶だけが残り、朝方に服を着させられて部長に家まで送られた…そう。
部長は車を運転しながら「君が誘ったんだよ」と繰り返していたそう。
土曜日、日曜日と泣きじゃくったとの記述。
俺とのデートもキャンセルしたと書いてあった。
俺の気持ちは重かった…。
ウェイトレス4が苦しんでいた頃は何も知らずにいたんだし…次の月曜日が怖かったらしいが、何事もなく過ぎたらしい…。
三日経ち、何事もなかったので気持ちが落ち着いてきた時に部長が誘いをかけてきたらしい。
その時はきっぱり断り、週末に俺にすべてを話して許してもらえなくても仕方がない、みたいな事が書いてあった。
次の日(木曜日)部長が封筒をウェイトレス4に渡したらしい。
そこにはポラとメモがあり…「もう一度だけ逢って欲しい、週末の金曜日に。ポラも全部渡すから」みたいな内容だったそう…。
結局ホテルに取りに行ったら…例のビデオになるのだが…男Bはトレーナーだったそう。
二人に朝までレイプされてたらしい。
俺の頭は沸点に達していた。
俺はメモからポケベルの番号を控え、名前を胸に刻んだ。
日記に戻ると後悔ばかりが綴られていた。
そして破かれた最後のページにはビデオと袋とベルが入った紙袋を渡されたとの事。
ビデオは見てないが、脅されているとあった。
残りのスペースには死にたいとか…会社を辞めても脅されるような気がする、と書いてあった。
俺に言い出せないから遺書で謝るしかない…。
丁度、一週間前の事だった。
破かれたページはそこで終わっていた。
俺は元の位置に置くと日記の残りを開いた。
そこには破かれたページを読んでいなければわからないが、事務的にだが幼馴染みに電話した…とか、おばあちゃんの声を聞いた…とかが書いてあった。
そして日記のポケットから遺書の下書きらしきモノを見つけた。
俺は時計に目をやり時間を確認するとメモを財布にしまい、部屋にいた痕跡を消して階下に降りた。
居間の電気を点け、震える手でタバコに火をつけた。
落ち着け!落ち着け!落ち着け!2本目のタバコが灰になった頃に車が家の前に着いた。
ウェイトレス4は慌てて戻ってくると俺にありがとう、ごめんね…といい、状況説明をしながら荷造りをしていた。
俺は車の向きを変えウェイトレス4が来るのを待っていた。
車中…俺は励まし続けたと思うが、ウェイトレス4はごめんねの繰り返しだったような気がした。
40分程で病院に着いたとき、ウェイトレス4はありがとう…と。
とりあえず病院を出た俺はウェイトレス4達は何も食べてない事に気付いた。
俺は近くの寿司屋に車を停めて「特上を折りで…」3人前を注文した。
寿司が出来上がる迄にコンビニにお茶やジュースを買いに行った。
三十分後ぐらいに病院に戻り、差し入れをして帰った。
家に着いて一時間程したらウェイトレス4から電話があった。
「ありがとう、お父さんも意識が戻ったし大丈夫だって」全治3ヵ月以上の大怪我だったが、今でも健在でいる。
俺は親友に電話をした。
「明日…休み取れない?」いきなりだったが、彼はデパート勤務だから月曜日と水曜日が休みの事が多かった。
たまたま休みだったのと夕方からはデートだってので、それまでは大丈夫との答えが返ってきた。
事情を聞かれたが、「俺が暴走したら止めに入ってくれ、プライドが傷つけられたから取り戻しに行くだけ」そう答えたら「9時でいいか?」と聞くので「10時に迎えに行くよ」と言い電話を切った。
電話を切った後、心臓がバクバクと高鳴った…一睡も出来ないままに朝が来た。
会社に風邪で休む旨を伝えると、俺はスーツに着替え車に乗り込んだ。
車に乗りながらウェイトレス4の会社に電話した。
「お電話有り難うございます○○です。」「私、田中と申しますがライフグッズ企画部の藤原部長をお願いします。」少しの間があり女性社員が電話に出た。
ウェイトレス4は今日は休みの筈だったので、「田中と申しますが、藤原部長をお願いします。」と繰り返した。
「はい、藤原ですが…?」俺の手は震えた。
努めて冷静な声で俺は「田中と申します…。」「どちらの田中様でしょうか?」「どう…説明いたしましょうか?玉置がお世話になっていると言えば納得出来ると思いますが…」「…」「玉置が世話になったと言ってもわかりませんか?」「…」「私はあなたの携帯番号を知っています、そちらに掛け直した方が宜しいでしょうか?」「…お願い出来ますか?少し移動した方がいいみたいなので五分後にお願いします」俺は電話を切り一旦親友に電話を入れて少し遅れる事だけを伝えた。
五分後、携帯に掛け直した。
藤原部長はすぐに電話に出たが、声は明らかに狼狽していた。
「心配いりませんよ、藤原部長。何も強請るつもりはないんですよ、ただね…婚約者として上司の顔を見ておかないと不味いでしょ?」「上司も何も…勘違いなさってるんじゃ…」「ふざけるな藤原!言葉遊びを繰り返したいんか!」俺は怒鳴っていた。
「わざわざこっちが丁寧に話しているのに調子に乗るんか?」「この調子でお前んとこに行こうか?俺は腹括ってるし、ビデオも明るみに出るぞ!」「わかりました。私も男です、で、どうしましょう?」「テープや写真は何処にある?今はお前の家に向かっているんだが、奥さんにビデオを見て貰ってから家捜ししようか?」「ク…車のトランクにすべてあります。カ…家族にだけは黙っていて下さい!」「わかりました、車は会社にあるんですね?それじゃ会社のすぐ近くにクレバーと言う喫茶店があります」「そこに11:30でどうですか?トレーナーさんと一緒に来て下さい、私は一人で居ますから」電話を切ると俺は親友に電話をして降りて貰った。
親友は挨拶もそこそこに雰囲気を悟って、「半殺しで止めようか?その手前?」と聞いてきた。
一気に緊張が解け「ごめんな、事情は話せる時が来たら話すから」それだけ言うと車を喫茶クレバーが見える位置に止めた。
まだ約束の時間まで少しあったので、自販機でコーヒーを買い「じゃ、頼むよ」とだけ言って店に入った。
店に入り窓に向かう席に座った。
ホットを頼み時計を見た。
まだ少しあるな、俺が緊張してどうする?約束の時刻はもうすぐだ。
全ては終わる…自分に言い聞かせた。
約束の時間丁度に中年男が二人入ってきた。
一人は色白の眼鏡、こいつがトレーナー。
もう一人が藤原。
背が低い…藤原と目があって軽く会釈をすると二人は複雑な表情で向かってきた。
座るように合図をすると俺が切り出した。
「最初に断っておきますが、平和的に解決する為の話です。誠意として私は一人で来ているのです。わかりますか?」藤原は頷いて、「私達もそうして貰えるとありがたい」ウェイトレスが注文を取りにきたので中座。
「先ずは例のモノを貰えますか?」そういうとトレーナーが紙袋を差し出した。
「後でトイレにでも行って確認しましょう」コーヒーが運ばれてきた。
「砂糖はいくつですか?」俺はシュガーポットに手をやった。
藤原が「お構いなく…」。
暫くの沈黙。
トレーナーが口火を切った。
「私共も突然の事でして、どうお詫びすればいいか…」俺はコーヒーを飲み干し一息ついた。
「去勢しましょう、それしかないなぁ」二人は互いに顔を見た。
「こんな話に冗談ももない。アンタら計画的にハメたんだ。それ位の報いは当然だろ」俺は冷静にしかし熱く言い放った。
「フィリピンでもモロッコでもいいから取ってこいや」藤原が宥めるように、「それは無理な話だ。会社を辞めろと言われた方がマシだ」と言った。
俺は、「計画的にレイプしておいて、何を言ってるんですか?」「俺らの幸せをブチ壊しておいて、チンポを生かしてくれって…おかしくないか?」「レイプ犯がムショに入ったら大変らしいぞ、その歳で10年は長いぞ大丈夫か」俺はゆっくりと言い聞かせた。
藤原達はレイプ犯と言う言葉に反応してうなだれた。
「埒があかないな、それならアンタらが出来る誠意を見せろよ。」俺は鞄から紙とペンを取りだし、それぞれに書かせた。
他人から見たら契約でもしているかのようだった。
二人が書いたのは口外しない事と部署を異動して顔を合わせないって内容だった。
後は慰謝料を払うと書いてあった。
俺はそれを取り上げると「痛みがないじゃないか?レイプ犯として捕まったら退職金もパァ、一家離散だろ?その上毎晩おカマを掘られるんだぞ、10年もな」結局、一ヵ月以内の退職と退職金の半分をウェイトレス4に支払う事で合意をした。
その場で合意書を作り、公証役場に行く事を提案したが、二人が渋ったのでクレバーのゴム印を文章の真ん中に押して貰い、証人としてウェイトレスにサインをして貰った。
領収書を貰い、それも証拠とした。
「さて中身のチェックをしましょうか?」俺は二人を促し某ホテルの地下バンケットに連れて行った。
トレーナーに外で見張りをさせ、俺は藤原と一番奥の個室に入った。
藤原が、「一つはマスター、もう一つはコピーです。残りはポラが8枚」「あのトレーナーには渡してないのか?ポラって10枚あっただろうが?」「き北島君に渡しました。明日持ってこさせます」「俺が言わなきゃそのままか?」時間にしたら2、3分だが俺は藤原をめちゃくちゃにした。
藤原が半ば気絶状態になったので、俺は便器に顔を突っ込ませた状態にして北島を呼んだ。
北島さん!北島が俺に呼ばれて入ってきたので、その姿を見せ…「嘘は困るなぁ、北島さん。あんたも持ってるんでしょ?」北島は震えながら頷いた。
俺は笑顔で「明日の同じ時間にクレバーね、必ず持ってきてね」と言い、トイレを流した。
藤原が呻きながら抵抗したが、構わずに…「部長は転んだ事にしようね、その方がお互いの為だし…ね」俺がトイレから出ると近くから親友が覗いていた。
「終わった?」「飯行こうよ、奢るし」親友は紙袋の事も聞かなかった。
次の日定刻通りにクレバーに到着した北島を確認して、後を付けている人間がいないかを確認した。
クレバーに電話をし道が込んでいるから10分遅れる事を伝えた。
先に店に入っていたらアウトだけど、回りには誰もいないしそれ以上の用心はしようがなかった。
俺は店に入り笑顔で北島の席に向かった。
「すいません、道が込んでて…」北島は席を立ち、丁寧に挨拶をした。
「アレからどうでした?部長も不注意とはいえ、怪我はなかったですか?」「実はあの後、胸が痛むって事で病院に行ったんですよ。私が付いていきました」俺は笑顔のままで聞いていた。
「それでレントゲンをとったら肋骨が折れてました」「暫く安静にする必要があるみたいですが、入院はしていません。自宅療養です。」「そうですか、今日はあなたの番ですね」北島の顔は引きつっていたが、「冗談ですよ、昨日は彼が嘘を吐いたから罰が当たっただけです」俺は北島から藤原の住所を聞き出した。
北島は渋ったが簡単な地図を書いた。
「見舞いに行くだけですから、ご安心を。あなたが嘘を付いてたり、約束を果たさない…破ったら」「鬼になりますよ」私は伝票を取ると支払いをして先に店を出た。
暫く後ろに注意を払った後、藤原の家に向かう電車の駅にタクシーで向かった。
駅前のデパートで見舞いのケーキを買い、電車に乗った。
電車の中でぼんやりと…俺のしてる事って復讐の名を借りた自己満足だな。
等と考えると目的意識が薄らいできた。
果たしてウェイトレス4は喜ぶだろうか?それよりも俺とウェイトレス4はどうなるんだ?考えが纏まらないうちに駅に付き、俺は駅前の地図で確認しながら…藤原のマンションに向かった。
階下のインターホンを鳴らす。
すぐに奥さんらしき人物が出た。
「私、○○の田中と申します、北島からの遣いで参りました。」奥さんはすぐにオートロックを解除してくれた。
エレベーターを降りると奥さんがドアを開けて待っていた。
奥さんは玄関で丁寧に挨拶をされた。
「主人は先ほど薬を飲み寝た所なんですよ、階段から足を踏み外すなんて恥ずかしいですわ」俺は促されるままに部屋に入り、藤原の部下を装った。
「部長にはいつもお世話になっておりまして…」リビングに上がり冷たい飲み物を出され、奥さんと話した。
会話の中から高校生の娘がいる事を知り、大学受験が控えているのにテニスに明け暮れている話等を聞かされた。
俺は暫く奥さんの話を聞いていたが「ご迷惑でしょうから、そろそろおいとまさせていただきます。」「部長に宜しくお伝え下さい。社の方は大丈夫ですし、例の件もまだ期日まで日がありますから、とお伝え下さい。」俺は丁寧に挨拶をして藤原の家を出た…。
一つ片付いたな。
率直な感想だったし、俺自身ギリギリだった。
自分自身、復讐鬼として暴走する事が怖かった。
娘の勉強を見て欲しいと冗談混じりに言われた時には…俺の中の悪魔がざわついたのは確かだった。
当初の目的を逸脱しているのはわかったが、復讐という大義に酔っていた。
帰りの途中俺は何故か欲情してしまい、ヘルスに飛び込んだ。
ヘルス嬢があの手この手で尽くしてくれたが、結局は射精に至らずに時間切れ。
自己嫌悪に陥る。
次の日から溜った仕事があるので疲れていたが、ウェイトレス4の実家に向かった。
留守なのはわかっていたが、直接見舞いに行くのは度が過ぎている気がした。
見舞いの花束を買い、ウェイトレス4の実家に行き…チャイムを鳴らした。
誰も出ない、…しかしそれが何故か嬉しかった。
門を開け、玄関脇にそっと花束を置くとメッセージを残して帰宅の徒についた。
夜になり、ウェイトレス4からお礼の電話があった。
途中でウェイトレス4母親が代わり、お礼を言われた。
その日は夕方早くから寝てしまった。
次の日からは普通に仕事に戻り、週末にウェイトレス4の父親を見舞った。
ウェイトレス4は俺に何かを言いたそうだったが、言い出せない雰囲気だった。
それからウェイトレス4の父親が退院する迄は平日に待ち合わせして一日、週末に見舞いを含めてのデートを繰り返した。
四か月が過ぎ、ウェイトレス4の父親が退院をした後の快気祝いの食事会が開かれた。
俺も呼ばれて出席した。
ウェイトレス4の父親は久しぶりの酒の酔いも手伝って、普段より饒舌になった。
そして突然「君の気持ちが変わらなければ娘を貰ってくれないか?」と切り出された。
俺やみんなが呆気にとられていると、ウェイトレス4母親が助け船を出してくれた。
「そういう事は時期がきたら二人で決めるものよ。娘の父親が言うものじゃないわ」ウェイトレス4も「お父さんがプロポーズしてどうするの?」そう言い、場が笑いで包まれた。
横目でウェイトレス4を見たが、ウェイトレス4は俯いたままだった。
それから一ヶ月後のウェイトレス4の23歳の誕生日。
俺はウェイトレス4を恵比寿のイタリアンに誘った。
そこは二人で何度も行った店だった。
二人で食事を楽しんだ後、エスプレッソを飲みながら…会話が結婚の話になった。
俺は「まだ準備もしてないけど、エリカが嫌じゃなければ結婚しないか?」って言った。
沈黙に耐えられずに…続けて「プロポーズみたいな重いもんじゃないよ」みたいな事も言った。
時計の針がカチカチ鳴ってるのが聞こえ、周囲の喧騒が聞こえなくなってくる。
カチカチ…カチカチ…暫くしてウェイトレス4は重い口を開いた。
「ごめんなさい。あなたに話さないといけない事があるの…」ウェイトレス4はそういうと泣き出した。
「いいよ、言わなくて」それが俺の無意識に出た言葉だった。
「言わなくてもいい事だってあるんだよ。俺はお前の全てを受け入れる覚悟してるから…」エリカは泣きじゃくっていた。
そして、「私も同じ気持ちなの!でも、あなたに言わなければ一生後悔する!」ウェイトレス4は続けた。
「実は会社の…」俺はウェイトレス4の名前を呼び制止させ…「知ってるよ、問題は既に解決してる」ウェイトレス4は信じられない…という表情を見せた。
「嘘、嘘でしょ…当てずっぽうでしょ?」ウェイトレス4は懇願するように俺に聞いた。
俺は少し間を置いてから「藤原だろ?」って答えた。
ウェイトレス4は冷めた目で俺を見つめ「何で?何で?…」と繰り返し、俺が答えないのがわかると…「信じられない!」って席を立った。
俺も伝票を取り後を追いかけたが、支払いをしている時にウェイトレス4は走り出した。
レジを打つ間が待てなくて「これで足りるよね?」って財布から3、4万を抜き出しマネージャーに渡して後を追った。
エレベーターは既に降りていたので階段を必死にかけ降りた…。
階段を必死に降りながらも後悔していた…と思う。
正直、記憶がなかった。
一階に辿りつき、辺りを見回したがエレベーターホールには人影もなく、エレベーターも止まっていた。
どっちだ?と飛び出した瞬間…光るモノが目に入ったと思ったのと同時に衝撃が襲った。
身体が跳ねた感覚と暖かい水のような流れと悲鳴や怒声が聞こえていた。
どうやら跳ねられたらしい。
記憶がそこで途切れた。
意識が戻ったのは救急車の中だった。
左目がぼやけていたがウェイトレス4が泣きながら救急隊員と話をしていた。
死ぬのかな?このまま死ぬのかな…意識が朦朧としていたから断片しか思い出せなかったが、ウェイトレス4の名前を呼んだような気がする。
救急隊員が何か言ってる…覚えてないが、受け答えはしっかりとしたらしい。
そのまま「寝かせて…」俺は気を失ったような眠ったような状態になった。
はっきりと意識が戻ったのは次の日になってからで俺の両親もウェイトレス4の両親も来ていた。
結局頭を強く打っての脳滲透だったのと、右手首を折っただけだった。
アチコチ痛いしすり傷は沢山あった。
精密検査と療養の為に五日間入院したが、後は通院にした。
事故の相手は徐行に近いスピードだったが一方通行を逆走してしまい慌ててその区間を通り過ぎようとしていたらしい。
事故後の交渉等は父親に任せたので割愛します。
暫くは右手が使えなかったが、俺は左利きだったので問題なかった。
仕事にも影響なく、すぐに戻った。
ウェイトレス4から状況だけ聞いたが、ウェイトレス4は俺が支払いをしている間に化粧直しをしていたらしい。
それに気付かずに俺は慌てて追いかけたのだが、ウェイトレス4はマネージャーからキチンと釣りを貰ったとの事だから、それも本当の話なんだろう。
ウェイトレス4がエレベーターを待ってる間に俺が事故に遭ったらしくウェイトレス4は泣き叫んでいたそうだ。
時間の感覚とかがズレていて、今でも思い出せません。
退院してから暫くして、俺は再度ウェイトレス4にプロポーズした。
ウェイトレス4は困った顔をして「でも…」俺はとぼけて「何の事?確かオッケーだったよね?もう一度返事を聞かせてほしい」ウェイトレス4は今度は嬉し涙ながらに「わたしでよければ…」その後…二年後にウェイトレス4と結婚しました。
結婚後半年が過ぎた頃に何故だか帰宅拒否症になった。
俺自身でも意味がわからなかったし、理由もなかった。
毎日朝帰りが続き…それでもウェイトレス4は何も言わなかった。
今は謎の帰宅拒否症も当然治まりました。
今年で結婚10年目ですが夫婦喧嘩もありません。
例のビデオはまだありますが、見てはおりません。
そして藤原と北島ですが、多少の遅れはありましたが退職しました。
退職金は受け取りませんでした。
化粧直しの件ですが、ウェイトレス4と俺の記憶に差があるのと深く思い出せない、また思い出したくないのでしょう。
事実は違うのかも知れませんが、医者から聞いたのですがその間の記憶がない時には「こうだったよ」って言われるとそのような気がするそうです。
長い時間ありがとうございました。