学年主任ノ女性事情(「咲子さんノ女性事情」二次創作) (その他) 70440回

2009/10/23 14:09┃登録者:えっちな名無しさん┃作者:名無しの作者
今、ワタシの前には1枚のDVDと1通の手紙がある。これからこのDVDと手紙の内容について記そうと思うのだが、そのためにはその前にいろいろと事情を説明しなければならないことがある。読者諸氏の貴重なお時間を頂戴し恐縮の限りだが、お付き合いいただきたい。*「欲しい女はどんな事をしても手に入れる」これはワタシの信念の一つ、いや自分の行動の根本原理といってもいい。事実今までワタシはこの信念に忠実に従って生きてきた。自分がいいと思った女には猛烈なアタックをかけ、何とか自分のものにする。
たとえその女に夫や恋人がいようともそんなことは関係ない。 ワタシが彼女を欲しいと思ったのだ。 このあまりにも単純な理由を前に何を躊躇する必要があろうか。 こんなワタシの考えを卑劣だ、下品だ、と嫌悪する人間がいる。 その気持ちはわからないではない。 一般的な倫理観の目で見たらワタシは典型の好色漢であり、卑劣漢だ。それは認める。 だが、変に世間一般の倫理観に縛られて、目の前のいい女を逃がしてしまうよりも、 自分の努力で何とかその女を落としてしまう方がはるかに楽しいではないか。 少なくともワタシはそう思う。 だからワタシは周りにどう言われようがそれは一切無視して、 ただただ自分の信念に従って生きてきた。 今もこれは間違っていたとは思わない。 そして、そのための努力をワタシは一切惜しまなかった。 ワタシは正直言ってそんなに見た目がいいわけではない。 分厚い遠近両用のメガネをかけたワタシは脂症で小太りで色黒だし、頭は早くもシルバーグレー。 はっきり言えば典型のさえない中年オヤジそのものだ。 そんなワタシだから、欲しいと思った女を自分のものにするためには、 人一倍努力してあらゆる手段を講じてきた。 欲しい女の情報を徹底的に分析して、 彼女がワタシと安心して楽しく時間を過ごせるよう演出することを常に心がけ、 初めてのデートの際には彼女が喜ぶプレゼントを用意することは忘れなかったし、 (ちなみにこれは品物よりも渡すタイミングのほうがはるかに大事なのですよ) 彼女の心を少しでも惹く事が出来るよう魅力的で楽しい豊富な話題を常に用意しておいた。 二人で入ることのできるムードのある店をリサーチしておくのも当然のことだ。 ちなみにこの際に大事なのは、必死になりすぎないこと。 あくまで自然体で紳士的に彼女と今の時間を楽しむこと。これが大事。 慌てる乞食はもらいが少ない、というでしょ。 そういうことだ。 そして、大概はこれで女は落ちる。 そのままホテルに直行。そして二人仲良く素敵な朝を迎えるわけだ。 が、これでもどうしようもない時がある。 身持ちの固い女、というのはいるのだ。 こちらの施した演出に楽しんでくれるのだが、そこで終わって帰ろうとしてしまう女。 もっとひどいのになるとワタシの一切を無視して、相手すらしようとしない女。 こうなると、こちらも自然体だの紳士的だの言ってられなくなる。 そうなるとワタシは意地でもその女を自分のものにしようと手段を選ばなくなる。 何とかその女の弱みを探し、脅し、半ば強引に彼女を奪うのだ。 ここがワタシの嫌われる理由の一つだな。 これも思い返すと色々やってきた。 たとえば一見清純派のお嬢様そのもので、ワタシの口説きにも全く反応をしなかった女性がいるのだけど、 実は彼女は手癖が悪くて、いつもどこかの店に入ると巧みに万引きをしてしまう癖があった。 その癖に気付いたワタシは、ある日彼女を尾行してその決定的瞬間の現場を押さえると、 そのままこれを脅迫材料にホテルに連れ込み、強姦ではないが、ずっと泣き続ける彼女と強引に関係を持った。 要は彼女にやむなく身体を開かせたわけだな。 もちろんその後も関係を維持できるように新たな脅迫材料として写真や動画を撮影することは忘れずに。 ちなみにあれは昼過ぎにホテルに入ってそれから翌朝までずっとやり続けていたわけだから、 半日以上セックスし続けていたことになる。 ちなみに彼女処女ではなかったが、かなりの好きものでね。 泣きながらも最後は夢中になってたな。 その後も脅迫材料のおかげもあってか彼女とは結構長い間楽しませてもらいました。 ちなみにここまで書いてきて今更かもしれないが、 ワタシが「欲しい女を自分のものにする」というのは、 何も女を口説き落として、恋人になってめでたしめでたし、というものではない。 ワタシは正直言うと恋愛というものにあまり興味はない。 二人仲良く幸せになって、とかそんなのはどうでもいいのだ。 確かにワタシは結婚をしていたが、それはあくまでの父親が地元の有力者で、 自分が出世をするためには彼の存在が非常に有利であるためにすぎなかった。最初からに愛情など抱いたことはなかった。 まあ、の父が生きていたころは彼の手前、彼女を愛している「フリ」をしていたが、 の父が死亡して以後はまさにの存在など何の値打もなくなっていたから、もはや彼女はどうでもいい存在だった。 で温室育ちで来た人で今更働きに出ることも出来ず、 ワタシがいないと収入も得られないから、ワタシに寄生しているだけにすぎない。 に外に男がいるという話は何となく耳にしていたが、どうぞ好きにしてくれ、と思っていた。 その方がワタシも気楽に他の女と楽しめるからだ。 このようにワタシたち夫婦の関係は冷めきったものとなっていた。 だが別にその事を哀しいとも何とも思ったことはない。 それよりもワタシが欲しいのは女の身体、要はセックスしたい、ということ。 この一点に尽きる。 自分が飽きるまでその女と肉体関係を持ち続けたい、そう思うのだ。 そしてこれがワタシが卑劣だ、下品だ、といわれる最大の理由だと思う。 だが、セックスしたいだけとはいえ、ワタシは自分だけが満足するセックスをしてきたつもりはない。 それなりに経験をつんだおかげなのか、 相手を悦ばせる技を身につけていた自信はあったし、実際女を何度も絶頂に導くことが出来た。 先に書いたように、ワタシに脅される格好で関係を持つようになった女でも、 ワタシはいろいろと技を使って彼女を悦ばせ、いつしか女の方がよがり狂うほどに楽しませてやることができた。 そしてこれは自分勝手な話かもしれないが、 女を悦ばせることが出来た、という点に、ワタシはどこか自分が救われるような思いがするのだ。 こんなワタシだが、女とセックスをしまくる自分にまったく後ろめたさを感じなかった、と言えば嘘になるのですよ。 * 前置きが長くなった。 そろそろ本題に入ることとしよう。 好色漢卑劣漢そのもののワタシだが、実はワタシはとある高校で勤務する教員であり、学年主任をしていた。 自分でいうのも何だが、こんなワタシがお固い教師などをしているというのは滑稽だと思う。 で、ワタシが教員だというと必ずこういう質問が出てくる。 「女生徒と関係を持ったりしたのですか?」 馬鹿なこと言うなと思う。 教師が自分の学校生徒と関係を持つなど言語道断じゃないか。 ってこれは何も倫理的な事を言っているのではなく、 そうではなくデメリットが大きすぎるということ。 万一生徒との関係が発覚しようものなら、そこで一切合財終わりだ。 長年かけて築き上げてきた信用は一気に失われ、間違いなくワタシは生活のすべてを失うことになる。 それに今まで高校生中学生と関係を持った事がないと言えば嘘になるが、 彼女らの場合、性的にも未熟で正直自分の好みではないということもあって、 (それを自分流に仕込むのが楽しい、というのもよくわかるのだが) 自分の学校生徒に手を出すということはしなかった。 ただし、教員には手を出した。 生徒に手を出すよりもデメリットははるかに少ないし、大人の女性は子供よりもはるかに魅力的だからだ。 大学を出たての、これからの教員生活に夢見る乙女の新人の音楽教師。 30を越えて落ち着いた色気をもった人妻の国語教師……。 あげていくといろいろいるが、そんな彼女たちをワタシは先に書いたように口説き、時に脅して自分のものにしてきた。 そんなワタシが出会ってきた教員たちの一人が咲子だった。 職員室で他の新入りの教員たちと一緒に彼女と初めて出会った瞬間ワタシは言葉を失った。 ??こりゃあ上物じゃないか! 漆黒の長髪を後ろに綺麗に一まとめにした咲子は、 ツーポイントのメガネをかけ、その奥にある気高く涼しげな瞳が印象的で、 凛とした美しさを持った女性だった。 その瞳に思わず吸いこまれそうになるのをぐっとこらえて、次に目が移ったのは胸。 この時の彼女は黒いスーツに身を包んでいて、教員らしく落ち着いた装いで我々の前に現れていたが、 彼女の豊かな乳房はスーツをはちきれんばかりに膨らましていて、 その証拠に胸元のボタンはパンと音を立てて弾けてしまいそうだった。 そしてそのまま視線を落としていくと目につくのは、 純白のストッキングに包まれた美しくすらりと伸びた長い。 ??こりゃすごい……。 そんな咲子に見惚れて思わず言葉を失っていると、 「主任?」 怪訝そうに首を傾げた彼女に声をかけられた。 自分の身体をじっと見つめるワタシに不快感を覚えたのだろう。その声は冷徹そのものだった。 そして、おそらくはこの時に咲子のワタシへの印象は決まっていたのだろう。 ??このスケベ親父め。 と。 そんな彼女の言葉にワタシは数回わざとらしくせき込みながらあわてて視線を戻し、 ややぎこちなく挨拶を始めることしかできなかった。女性を前に久々に犯した失態だった。 ここからワタシは必死になった。 目の前に突然現れた上物の女だ。これは何としても自分のものにしなければいけない、そう思った。 まずはいつも通り咲子の情報を徹底的に解析することから開始。 幸いにもワタシは彼女上司である学年主任。情報を入手することはたやすかった。 最初に驚いたことは彼女20代にして既に未亡人であり、 しかも亡夫が先との間に出来た子供を育てている母親である、ということだった。 ちなみにこの子供がうちの生徒の御堂であるというのにはさらに驚かされた。 咲子の前の勤務先の人間の話を聞くなどして、もう少し突っ込んで調べてみると、 どうやらこの子供が中学校に入って間もないころに彼女は結婚。 しかし今から4年前に夫とは死別してしまい、 そのあとは女手一つで血のつながりのないこの亡夫の子供を育ててきていた。 実に立派な話だ。 世間一般の目から見たら彼女はまさに褒め讃えられてしかるべきだろう。 なかなか出来る事じゃない。少なくとも自分には出来ないことだ。 だが、ワタシがこの時関心を抱いたのは、 そんな咲子の立派な行動よりも、彼女が既に夫と死別して4年となっている、ということだった。 夫との間に子供はないし、いろいろ話を聞いている限りでは咲子はこの夫の死後、 特に誰か男性と付き合ったということもないようだ。 ということは彼女はかなりの「ご無沙汰」の可能性が高かった。 夫の死後いつしか咲子が御堂と一線を越えてしまっていた、というなら話は別だが、 少なくともワタシが見る限り、あの子に咲子と関係を持つ程の勇気はないし、 咲子もそんな事をしてしまうような女性とは考えにくかった。 彼女はその仕事ぶりから見てもそうだが、優しく立派な人格者そのものだったからだ。 それは咲子がすぐにたくさんの生徒から慕われ、人気教師となったことから見てもわかる。 ??これは落とし甲斐があるな……。 ワタシはそう思った。 女手一つで亡父の子供を必死に育てる人格者の彼女が、 果たしてワタシの腕の中で久々の快感に身を任せたらどこまでとろけていくのか、その姿を見てみたい、 いや絶対にワタシのものにしてどこまでも落としきってやろう、そう思いワタシは行動を開始していた。 こんないい女が目の前にいるのに、指を咥えてみているだけなんてそれは馬鹿のやることだ。そう思った。 しかし、第一印象は非常に大事なのだな、とこの時ほど実感したことはない。 ワタシは他の女性にしていたのと同じように実に紳士的に咲子に誘いをかけた。 ワタシから気さくに話しかけ彼女の心を開き、やがてお互い気持ちよく大人の世界へ……。 が、全くダメだった。 咲子はワタシに心を開くどころか、仕事上でも最低限の関係を持つ以上の事をワタシに望まなかった。 これはすぐに気付いたことだが、どうやら彼女はワタシとの初対面の際に、 好奇の目線で自分の身体を見つめられたことから、ワタシに嫌悪感を抱いてしまっているようだった。 それは咲子が他の男性教員とはフレンドリーに会話をするのに、 ワタシに対しては露骨に態度を変えて冷徹にしていることからも明らかだった。 ??失敗したなあ……。 ワタシはため息を漏らすしかなかった。 だが男性諸君ならわかってくれると思うのだが、目の前に突然魅力的な女性が現れて、 心を奪われない、という方が無理だろう?  咲子は自分の魅力についてあまりにも鈍感すぎた。 それからもワタシは紳士的に彼女にアプローチを続けた。 こんなに魅力的な女だ。簡単に諦め切れるわけがなかった。 紳士的に穏やかに何とか彼女との会話のきっかけを探そうとするのだが、しかしそのいずれもが不発に終わった。 あげく咲子はワタシにはっきりとこう言い放ってきた。 あれは確か演劇の鑑賞を一緒にどうか、と勧めた時だったと思う。 「何度も申し上げますが、プライベートのお誘いは受けません。 これ以上仕事に差し障る事を繰り返されるようでしたら、校長や奥様にご相談させていただきます」 ??仕方がねえな……。 咲子の言葉にワタシは内心つぶやくと決心した。 こいつは普通に攻めてもダメだ。何とか弱みを握ってそこから攻めるしかない。 勘違いをしてほしくないが、ワタシだってこんな方法を元から採りたいわけではなかった。 もし最初の誘いの時点で彼女が応じてくれていたら、ワタシと咲子の関係はまた違ったものになっていたと思う。 だが現実はそうはいかなかった。 ここでワタシが咲子を諦めていればまた違った展開もあったのだろうが、 元々魅力的であり、またワタシの誘いを彼女が無下に断り続けたことが、 かえってワタシの彼女への執着の炎を一層燃え上がらせることとなり、 何が何でも咲子を自分のものにしてやろうと意地になっていた。 そして、ワタシが狙いをつけたのは咲子のあの「息子」御堂だった。 大人しげで自己主張も満足に出来ない男として何の魅力もないこのつまらないガキをダシにすれば、 咲子を攻略できるのではないか、そう思ったのだ。 そして、御堂を利用すると決めた瞬間、一つのアイデアがひらめいた。 我ながら残酷というかひどい考えだな、と思ったが咲子を手に入れるためだ。 もはやこの時のワタシに手段を選んでいるゆとりはなかった。 * これまでさんざん繰り広げた咲子へのアタックは中止した。 かわりにそれを数学教師の千夏にむけることにした。 千夏は咲子より年下で肩までのショートカットがよく似合う童顔のさわやかで愛くるしい女性だった。 ただ彼女が自分の好みだったか、というとそれは違う。 スタイルは咲子ほどボリュームのあるものではなく細身で、 (それがいいという人もいるのだろうが) また元々童顔な作りに加えて学生気分が抜けていないのか、 生徒と見間違えそうになるような瞬間も多々あって、それ故彼女があまりにも幼く見えてしまって、 個人的にはそんな千夏にあまり魅力を感じることはなかった。 なのにそんな千夏にワタシが猛攻撃を加えた理由は一つだ。 彼女は自分の教え子である例の「息子」御堂に恋心を抱いていたからだ。 もちろん千夏から直接この恋心を聞かされたことはない。 しかし、何かといえば自分の仕事を御堂に「のみ」手伝わせ、 御堂と話すとき「だけ」少し頬を赤らめて嬉しそうに話す千夏を見ていたら、 よほどの鈍感でない限り誰でも彼女の心の内はわかってしまうだろう。 もっとも、ここで滑稽なのはそんな千夏に恋心を抱かれている御堂自身は、 おそらくは彼女の想いには全く気付いていない様子だった事だ。 もしワタシが御堂の立場であったなら、すぐに千夏に対して何らかの行動に移していただろうに、 彼はそんな事をする様子もなく、いつも素直に彼女の言われるままに千夏と同じ時を過ごしていた。 そしておそらくは御堂と離れた後、そっと寂しげにうつむく千夏の事など彼は全く気付いてはいなかったろう。 そんな二人を見ていて、こんな鈍感なガキのどこがいいんだ、とワタシは内心思うが、 御堂のそんな鈍感でうぶなところに千夏はひかれていたのかもしれない。 千夏は咲子に比べたらワタシの誘いに応じるのは早かった。 ワタシのあまりのしつこさに、そして上司の誘いを断り続けるのはまずい、と思ったのか、 強引だなあ、と思えるほどしつこく誘いをかけるワタシに、 「分かりました。じゃあ今夜……」 と苦笑いを見せると、ワタシと一緒に常連の料亭に行くことに同意してくれたのだった。 店に入ってからもワタシは基本的には紳士だった。 千夏は何かとおしゃべり好きでもあったようなので、 この店のお勧めの小料理に一緒に箸をすすめて舌鼓を打ちながら、 自分が知る限りの学校内の色々な噂話を聞かせてやって、彼女を楽しませてあげた。 面白いものだが、女性というのはこういう他人の噂話とかは興味津々で乗ってくる。 これはなかなか使えるので、どんどん有効活用した方がよい。 しかし、彼女を楽しませるだけではワタシの目標は達成できない。 楽しく話をしながらワタシは冷静に彼女に酒を勧めていった。 酒を勧めてばかりではどこか不安を与えてしまう危険があるので、 彼女を安心させるためにワタシも一緒に嗜みながら。 千夏はふだんあまり酒を飲まないのだろう。あっさりと酔い潰れた。 店を出て足取りもおぼつかない彼女の肩を支えてあげながら、 タクシーで自宅まで送ってやった。 と、ここまでなら普通だ。 酔い潰れた部下を心配して自宅まで送った。別におかしな話じゃない。 ここでワタシがそのまますんなりと家に帰っていたら、の話だが。 しかし、ワタシの今夜の目的はむしろここからが本番だった。 料亭に誘い出すのはあくまで序章。これからが勝負なのだ。 先にリサーチしておいた通り、千夏は学校近くの駅から数駅離れた駅前にあるマンションで一人暮らしだった。 もしこれが親と同居とかいうと話は違ったが、彼女は一人暮らしだったのは今夜の目的を考えると幸いだった。 タクシーを降りても相変わらず足元がふらつく彼女を支えてやりながらエレベーターに乗り、 なんとか自宅まで送り届ける。 「今夜はぁ……ありがとぅございましたぁあ……」 そう言って玄関でワタシに大げさに頭を下げる千夏。 「いえいえ、またの機会がありましたらその時はよろしく……」 にっこり微笑んだワタシはそう言って頭を下げ、静かにドアを閉めようとする。 ごくごく自然に。 と、ここでワタシは大げさに倒れた。 「うわっと!!」 声を上げて思い切りもちをついたのだ。 「しゅ、主任!!」 さすがにびっくりしたのだろう。それまでとろけきっていた様子の千夏がビックリして声を上げて、 もちをついたまま身動きが取れないでいるワタシの前に慌ててしゃがみこんできた。 「な、情けない姿をお見せしてしまって……どうやら私もお酒に呑まれてしまっていたようです……」 照れ笑いを浮かべながら腰をさするワタシ。 「大丈夫ですか? 主任もたくさん呑んでらしたから……」 心配そうに声をかける千夏にワタシは、 「だ、大丈夫です……。あいたた……」 そう言ってふらふらと立ちあがると、千夏は言った。 「本当に大丈夫ですか? 少し休んでいかれます?」 心配そうな表情でワタシを見上げる千夏を見て、素直で優しい、いい子だな、心からそう思う。 「そ、そんなわけには……。御心配には及びません……大丈夫です、帰ります……」 腰をさすりながらワタシは千夏に笑顔を見せるとふらふらとエレベーターのほうに歩きだす。 が、再び足がもつれて大きな音をたてて転倒。 「主任!!」 千夏は声を上げると倒れているワタシに肩を貸してくれた。 「うちでしばらく休んでください。危ないです」 そう言ってワタシを家の中に招き入れてくれた。 「す、すいません……申し訳ない……」 ワタシは重たいワタシを懸命に支えながら歩く千夏に何度も頭を下げた。 ??本当に申し訳ない。全部演技なんだよ……。 酔い潰れて転倒してみせる渾身の演技が成功して、見事に千夏の家に入り込むことが達成されたことに、 内心大きな満足感と少しの罪悪感を覚えながら、ワタシは彼女と一緒にドアの中に入っていった。 * 先に結論を書くと、親切にもワタシを介抱しようと自宅に招いてくれた優しい千夏は、 そのワタシに強姦ではないが、それに近い形で処女を奪われた。 しかもその光景を撮影され、これをネタにワタシから脅迫されることとなった。 我ながらひどい話だ。 だが、これこそがこの夜のワタシの目的だった。仕方がなかった。 ワタシを自分のベッドに休ませた後、 ベッドの脇で横になっていた千夏はそこで酔いの影響もあったのだろう。熟睡していたのだが、 いつの間にかワタシの手でベッドに抱きかかえられてここで衣服を脱がされ、 酔いと睡魔で意識が混濁している中、ワタシに唇を奪われ、乳房を舐められ、 花びらをさんざん舐めまわされ、そしてあげく処女を奪われてしまった、というわけだ。 最初から彼女の同意があったわけではない。 「や、やめてください……」と千夏は嫌がるものの力が入らず、 唇を奪われ、幼さの残る乳房をたっぷりと舐めまわされた後はなし崩し的に、 ワタシの好きなようにされていっていたのだ。 もっとも最後、ワタシが挿入をしようとした際は、 「は、初めてだから……挿れないで……こんなのは……イヤ……お願い……」 と千夏は涙を流して哀願してきて、これにはさすがのワタシも胸が痛んだが、 そんな彼女の願いを残酷に無視して、ワタシは千夏の貴重な忘れられない3を奪った。 「いやあぁあっ!!」 ワタシのものが入った瞬間、千夏は一際高い声を上げて叫んだ。 ふと見るとワタシのものに彼女の真っ赤な血が染みついていた。 初めての女性特有のあの乾ききった独特の固さを自分の醜いものに感じながら、 ワタシが無理やり挿入行為を繰り返す中、千夏はずっと泣いていた。 これをワタシは最初無視していたのだが、彼女のあまりにも悲しげな泣き声に、 何ともいたたまれないものを感じてきて、 「……そろそろ泣き止みなさい」 と思わず声をかけてしまっていた。 千夏にしたら自分の処女は大切な想い人にあげたかったのだろう。 ワタシのような中年のスケベ親父ではなく、自分の本当の大切な人。 そうたとえば、自分の教え子の御堂に……。 いまどきの女性にしては珍しいほど、千夏は貞操観念が高い女性だったのだと思う。 だが、現実はこの中年のスケベ親父に自分の大切なものを奪われてしまった。 しかもその光景を動画として撮影されながら。 千夏の両の瞳からこぼれる涙が止まらないのも当然のことだろう。 だからワタシは、せめてもの償い、といっては何だが、 彼女にセックスの悦びだけは教えてやりたい、と思った。 このような形で経験をすることは不本意だっただろうから、 せめて心からセックスを楽しませてあげたかった。 だからワタシは言ったんだ。 「あるがままを受け入れるんです」と。 余計なことは考えなくていい。今のこの行為に没頭すればいいのだと。 が、結局最後まで千夏の表情は晴れることはなかった。 何度か絶頂を迎えたようだが、それは一層彼女の哀しみを煽る結果になってしまったようだった。 今にして思えば、それも当然の事だと思う。 すべての行為が終わった後、ワタシはベッドの上で放心状態の彼女に言った。 千夏とセックスして終わりじゃない。これもあくまで目的達成のための手段なのだ。 これからが肝心要なのだ。 「御堂君を誘惑して欲しいんです」 「え?」 ぼんやりと天井を見つめていた千夏だったが、その瞬間意識が戻ったのか、 はっきりと声を上げると身体を重たげに起こして、ワタシを見つめた。 「そのままの意味です。今度ワタシが場所をセッティングしますから、そこで御堂君を誘惑してください」 「……」 意味が理解できないのだろう。ややうつむき加減に沈黙する彼女にワタシは続けた。 「意味が理解できないなら、こう考えてください。 ワタシがあなたのために御堂君に想いを伝える場所をセッティングする、と。そこであなたの今までの想いを伝えてみるんです」 「そ、そんな……」 不安げに口を開く千夏にワタシは笑顔で言った。 「大丈夫。あなたは優しい素敵な女性だ。御堂君もきっと受け入れてくれますよ」 「そ、そうでしょうか……」 寂しげにうつむいた千夏は再び涙をぽたりぽたりと落とし始めた。 ワタシに辱められて、もうさんざん流して枯れ果てたと思った涙が再びあふれてきたようだった。 彼女の裸体を包むシーツに彼女の涙がうっすらと滲んで広がっていく。 「多分あの子、私の事なんて何とも思っていないと思います。それにわたし、もうあの子に……」 「先生」 千夏の言葉を遮るようにしてワタシは冷たく言った。ここはあえて冷酷にならざるを得ないと思った。 「嫌だと言われては困ります。あなたにそう言われてしまったら、ワタシが取るべき行動は一つしかなくなる」 そう言って彼女の前にUSBメモリーカメラをかざす。 その中にはベッドの上でワタシと交わる彼女の姿が撮影され保存されているのだ。 これを見て千夏の表情が一気に凍りついた。 「これをワタシが持っていることがどういうことを意味するかお分かりですね? ワタシは出来たらこれはあなたにお渡ししたい。そのためにはあなたの協力が必要なんですよ」 これは嘘偽りない本音だった。特に最後のセリフは。 ここで千夏に協力してもらえなかったら、ワタシは何も得るものがないのだ。 千夏は再びうつむくと、きゅとシーツを持ち上げ、さんざんワタシに舐めまわされた乳房を覆い隠した。 その表情をはっきりとうかがうことは出来なかったが、どこまでも哀しげだった。 「それじゃあ……例の件、考えておいてください」 ワタシの言葉にも彼女はうつむいたままだった。 『主任の言われたとおりにします。どうすればいいですか?』 千夏からの返事があったのは3日後の事だった。 ワタシの携帯電話に深夜、突然連絡が入ったのだ。 こういう返事がくるのは予想していた。 決定的なのはあの夜の事を動画に撮影していて、それをワタシが持っていること。 これを持っている限りは、おそらくは千夏はこちらの言う通り動くとは思っていた。 それに彼女には御堂への想いがある。 憎々しいワタシが用意した場とは言え、彼女は初めて自分の想いを御堂に伝える事が出来るのだ。 それも大胆に……。 しかし万一という事がある。 それを思うと不安で不安で仕方がなかった。 しかもあの夜以降、千夏が学校を休みっぱなしになっていた事もワタシの不安を一層煽っていた。 もし思いつめて自殺なんかされでもしたらどうしようもない。 それだけにこの深夜の千夏からの電話はそれまでのワタシの不安を一気に融解してくれるものだった。 ワタシは大きく安堵のため息をつくと言った。 「先生、ありがとう。そして本当に申し訳ない……」 『そんなことはどうでもいいんです。それで私はどうすればいいんですか?』 千夏は無表情に、そして驚くほど冷たく鋭く返してきた。 「あ、ああ……」 思わずワタシはたじろいでしまったが、すぐに息を落ち着けると、 「よろしいですか……」 そう言って彼女に指示を与えていった。 いよいよ鉄壁の要塞である咲子の外堀は確実に埋まっていこうとしていた。 この事にワタシは喜びを感じずにはいられなかった。 勝手なものだが、この時は千夏への罪悪感はかけらもなかった。ひどい話だ。 * 「チッ、ガキが……」 ワタシは自宅のPCのモニターを見つめながら、あまりの腹立たしさにたばこを咥えながらつぶやいた。 モニターには学校の放送室内の御堂と千夏の姿が映っている。 それはワタシの指示通り動いた千夏が御堂を学校の放送室に呼び出し、中で二人きりになった時の光景だった。 ワタシは二人の待ち合わせ前にこっそり隠しカメラをセットし、二人の模様を極秘で撮影していたのだ。 ワタシが千夏に与えた指示はこうだった。 放送室に御堂を呼び出し、そこで御堂とセックスをしろ、と。 そしてワタシはこの模様を千夏たちには内緒で撮影し、これをネタに咲子を脅迫するつもりだった。 さすがに咲子を脅迫するために御堂を口説け、とは千夏に言えなかった。 が、現実はワタシの思い通りにはいかなかった。 先に断っておくが、千夏には何の不手際もない。 彼女は密室とはいえ、学校の敷地内でありながら大胆に御堂に迫っていた。 上半身を露わにし、御堂に濃厚な口づけをし、 そして「一度だけでも良いんです……」と涙ながらに自分を抱いて欲しいと御堂に訴えていた。 あんなに切ない女性の訴えをワタシは見たことがない。 もしワタシが御堂の立場ならそのまま千夏を抱いていただろう。 が、このガキは何を思ったかそれをしなかった。 かなり動揺した様子ではあったが、 結局大慌てで千夏に上着をはおらせると、 あとはコーヒーを二人仲良く啜りながら、そのまま楽しげに話をして終わりだった。 世間一般から見たら御堂の行動は優しいものなのかもしれない。 突然女性に迫られても冷静さを失わず、暴走しようとする女を踏みとどまらせ、 優しく話をして慰めてあげた立派なものなのかもしれない。 それが彼にとっての優しさなのかもしれない。 が、ワタシにはそれが不快で仕方がなかった。 いや、不快どころじゃない。腹立たしくて、そして御堂の事が憎らしくて仕方がなかった。 女の方から男に迫るというのはかなり勇気のいることだ。 しかも女教師学校という危険極まりない場所で、自ら裸体を露わにして生徒に迫るなんていうのは、 簡単に出来る事じゃない。 しかし千夏はそれを行った。 自分の乳房を露わにし、口づけをして御堂に迫った。 それはワタシに例の「強姦」シーンを撮影されている、という脅迫が利いていたのも理由の一つだろうが、 それ以上に「汚された」自分の身体を愛する御堂と交わることで清め、慰めてもらいたかったのだろう。 そして自分の想いを御堂に伝えたかったのだろう。 実際最初のうち彼女は無表情に冷静に御堂に迫っていたようだが、最後は、 「……お願いします。一度だけでも良いんです。忘れたいこと……あるんです……」 と、涙ながらに御堂に哀願していた。 千夏は間違いなく御堂に救いを求めていたのだ。 彼女は御堂に愛してもらいたかったのだ。 だから千夏はワタシの指示通りに動き、そして御堂に迫ったのだ。 勝手な意見を承知で書くが、ワタシは出来ることならこの放送室の情事を通じて、 千夏と御堂はそのまま結ばれてほしいと思っていた。 御堂の事を想いながら先にワタシに辱められた千夏にとってはそれがせめてもの救いとなるだろうし、 ワタシもこの情事を通じて千夏と御堂が結ばれ、千夏に以前のような笑顔が戻るならば、 少しは彼女に対して後ろめたい思いをしなくて済む。 そして後ろめたさを抱いているのは御堂に対しても同じだった。 彼の「母親」をワタシは御堂をダシに脅迫し奪おうとしているのだから。 冷静に考えたら、こんな悲劇はないだろう。 自分の存在が、「母親」を他の男に奪われる脅迫材料になるなど。 ワタシなら耐えられない。 しかし、ワタシはそこまでしてでも咲子が欲しい。 だったらせめて千夏という彼を想う女性と結ばせることで救いを与えてやりたかった。 この中年に「母親」を奪われる哀れな御堂に、やわらかくあたたかな千夏の身体を思う存分味わわせてやりたかった。 そしてそのまま二人仲良く末永く結ばれてほしかった。 自分勝手な論理だ。 だが、これがこの時のワタシに出来るせめてもの誠意だった。 そうすることで少しでも自身の後ろめたさから逃れたかった。 しかし、御堂はこれら一切を無視した。 いや、それ以後の彼の行動を見る限りでは、 先に書いたとおり、千夏を抱かず話をすることこそがあの時の御堂なりの懸命の優しさだったのだろう。 それは美しい純粋なものなのかもしれない。 これこそが愛と呼ばれるものなのかもしれない。 しかし、この「純愛」気取りにこそワタシは腹が立つのだ。 腸が煮えくりかえるほどに。 こんな非道のワタシだが、昔は熱烈な恋をしたことがある。 それは中学生の時。同学年のマドンナ的存在だった美少女の女生徒に対する片想いだった。 当時のワタシは今と違って初心で、女性に対して声をかけることも出来ないほど小心な男だった。 彼女に対する気持ちはいっぱいなのだが、それを言葉にして伝える勇気などなく、 時折会話を交わしたり、登下校時に一緒になったりすることに喜びを見出すような、本当に甘っちょろいガキだった。 このころは恋愛小説を狂ったように読んでいた。 小説の主人公に自分の姿を重ねて、彼女との恋を妄想し楽しんでいたのだ。 フィクションの中で描かれるような美しい恋に恋焦がれる純粋(バカ)少年だった。 そんな憧れの彼女が、ワタシと同じクラスの特にモテる二枚目の男子生徒と恋仲になった、 というのを知ったのは卒業間際の事。 卒業式に思い切って彼女告白しようと思っていた矢先のことだった。 この男が得意げに周囲に話をするのを聞いてしまったのだ。 今思えば自分から彼女に対して積極的なアプローチも何もしていなかったし、 それに恋仲になった男と比べると、ルックスでもはるかに劣るワタシだったので、 他の男にとられてしまうのもやむを得ないことだったのだけど、 しかし、彼女を取られたことが悔しいし、何も出来ないままだった自分が情けないし、 もう言葉に出来ないほどの絶望感を味わわされた。 当時のワタシの恋は確かにプラトニックなものだった。 今の自分から見たら想像もつかないほど、もう恥ずかしくて顔を隠してしまいたいほど、純粋で穢れのないものだった。 それは傍から見たら「純愛」として美しいものだったかもしれない。 しかし、いかにその恋が美しかろうと何であろうと現実に彼女は他の男に奪われてしまった。 それでは何の意味もないではないか。 絶望感のどん底にいた当時のワタシはそう思った。 いかに想いが美しかろうと何であろうと好きな女を他の男にとられてしまっては何の意味もない。 楽しい思い出も共有できない。その可憐な唇を奪うことも出来ない。 あたたかくやわらかな身体を楽しむことも出来ない。 そこには何もない。唯一存在するのは絶望だけだ。 こんな思いをするのは二度とごめんだった。 だから、この経験以降、ワタシは先に書いたように、 「欲しい女はどんな事をしても手に入れる」 これを自分の信念として行動し、なりふり構わず、欲しい女を自分のものにしてきた。 このことは今も間違っていたとは思わない。 あの経験があったからこそ、ワタシは自分を磨く努力をし、女を口説くテクニックを身につけ、 数え切れないほどの女性たちと楽しむことが出来たのだ。 そして、同時に御堂のような「純愛」気取りを見ていると、 昔の自分を見ているようで吐き気がするほど腹が立つのだ。 馬鹿じゃないのか、と。綺麗事抜かすな、と。 目の前に「自分を抱いてくれ」と懇願する女がいるなら抱けばいいじゃないか。 御堂、あの時お前のとった行動は優しさだけじゃないだろう? 本当は単に千夏を抱く勇気がなかった、お前の肝っ玉が小さかった。ただそれだけだろう? そう、あのときのワタシのように……。 そして、御堂、お前は気付いていたか。 あの時、お前と話をして笑いながら涙を浮かべていた千夏を。 お前のつまらない話を聞きながら、寂しげにうつむいて静かに頬笑みを浮かべることしか出来なかった千夏を。 御堂の「純愛」気取りのおかげか、少なくともこのガキに対する後ろめたさだけはなくなった。 こんな馬鹿なガキの御守をいつまでも咲子が務めるなんてもったいなさすぎる、そう思った。 咲子はワタシの手によってもっと女の悦びを知るべきなのだ。 千夏を使ったワタシの作戦は当初の思惑とは違う方向に流れたが、 それでも千夏と御堂のキスシーンは十分撮れていたし、これでも咲子に対する脅迫ネタとしては十分だった。 ついに濠は埋まった、ワタシは思った。 ワタシはこれを境に一切の性活動をやめ、来るべき記念日に備えた。 * 「御堂君の事で話がありまして……」 職員室でワタシが切り出したのはとある週末の事だ。 たっぷり楽しむには翌日は休みの方がいいに決まっている。だから休み前に勝負を仕掛けることにした。 いよいよ決戦の火ぶたは下ろされたのだ。 「はい?」 突然の言葉に怪訝そうに顔を上げた咲子に、 「推薦の可否にも影響しかねない話でして……」 ワタシが穏やかに続けると、彼女は一瞬戸惑いの表情を見せたが、 すぐにいつもワタシにむける軽蔑の眼差しを取り戻すと冷たく言った。 「どういうことですか?」 ??いいね、この強気。 そう思いながら、ワタシはニコニコと微笑みながら言った。 「ここで? いやとてもとても……」 ワタシがこの言葉を発した瞬間、頭のいい咲子はワタシが言わんとしたことを理解したようだった。 ふぅと小さくため息を漏らすと彼女は言った。 「ここじゃ無理だから帰りに別の場所でお酒でも飲みながら……というわけですか?」 「おっしゃる通りで……」 そう言ってワタシが小さく会釈をすると、咲子は嫌悪感を露骨にして言い放った。 「最低ですね」 正直この言葉を聞いた時は焦った。 「息子」をダシにさんざん手を施してきたこちらの脅迫には乗らないか、そう思ったのだ。 表向きは笑顔をそのままにしていたが、内心はひやひやしていた。 が、ワタシへの軽蔑の眼差しをスッと手元の書類にそらすと咲子はこう言った。 「わかりました。ここで話が出来ない、というならそうしましょう」 話だけ聞いたらさっさと帰りますよ、そう言わんばかりの実に冷たい反応。 だが、心のうちではやはり自分の「息子」に関することだ。不安だったのだろう。 ワタシへの嫌悪感を露骨にしながらもワタシの誘いには応じてくれた。 「ありがとうございます」 とりあえず先ず彼女を誘い出すことに成功したことに心の中で安堵のため息を漏らしながら、ワタシが頭を下げると、 「まだ何か? 私、忙しいんですけど?」 咲子は不快感を露わに鋭く言った。 「ああ、ごめんなさい。それじゃ失礼しますね」 ワタシはあわてて彼女に頭を下げるとその場を離れた。 自分の席に戻ってふと咲子の方を見ると、不機嫌そうに書類に目を通している彼女の姿が目に入った。 ??子供までダシにするなんてなんてやつ……。 そんな咲子のワタシへの恨み節が聞えてきそうだった。 咲子を誘った店は、以前に千夏を誘ったのと同じ料亭だった。 ここでなら周りの目も気にせずに話もしやすい、そう思ったのだ。 何よりなじみの店でいろいろ勝手もわかっていたのでね。 料亭についてからもいきなり御堂の事を切り出すようなまねはしなかった。 彼女自身はさっさと要件を聞いて帰りたかったようで、「この後友人との約束もある」と急かしてきたが、 ワタシはこれを穏やかになだめながら酒と料理を楽しみつつ、 彼女が受け持つ生徒の進路の話をしたり、間につまらない雑談を織り交ぜたりして、なかなか本題を切り出さないようにした。 理由は二つ。 脅迫するタイミングをはかっていたのと、 もし千夏のように酒に酔い潰れてしまうようならその方が手っ取り早いので、 どうなるか様子をうかがっていたのだ。 が、時間が経って結構酒が進んでも彼女は千夏と違って酔い潰れる様子はなかった。 さらに彼女はこうして飲んでいる間にも頻繁にメールを確認することがあって、 何気なく尋ねてみると「この後会う予定の友人が心配性なもので頻繁にメールが送られてくる」とのことだったが、 これには内心舌を巻いた。 ??なかなか用心してるな……。 相手が何者かは知らないが、こうして頻繁にメールのやり取りをして、外との連絡を保ち、 自分の安全を確保しようというのだろう。 ??こりゃ、いよいよ勝負をかけるしかないねえ……。 ワタシがいよいよ切り札を出す決心を固めたのはそれからすぐの事だった。 ワタシが用意したのは放送室内における御堂と千夏のキスシーンなどの写真数枚。 それまでお酒をたしなんだせいで頬を少し赤く染めながらも冷静さを保っていた咲子だったが、 写真を目にした瞬間、大きく目を見開き明らかに狼狽の表情を見せた。 ワタシはそんな彼女を前にいたって冷静に穏やかな表情を保っていたのだが、 内心はひやひやしていた。 そりゃこの写真を見ただけであっさりと咲子がこちらの言う通りになってくれたらいい。 だがもしも、 「この写真をどこで手に入れたんですか?」 と逆に突っ込んできて、ワタシが何らかの策を講じた事を嗅ぎ付けたり、 「公表するならしてください。私もあの子も責任を取ります」 と開き直られたりしたらそこで終わりだ。 さんざんこちらがいろいろ施してきた策は水泡に帰してしまう。 現実はそう簡単にはいかないのだ。 ??とりあえず逃がしちゃだめだ……。 そう思ったワタシが席を立ち、咲子の両肩に背後からポンと両手をかけた瞬間、彼女はビクンと身体を震わせた。 「……帰ります。この件は少し時間を」 帰ろうと席を立とうとした咲子にワタシはすぐさま言った。ここは勝負どころなのだ。 「明日の職員会議で提出する予定です」 「っ……」 哀れな咲子。 とっさの事に動顛したのだろう。普段のように冷静な彼女だったら、先にワタシが想定したような反論もしてきたかもしれない。 が、この時の彼女は突然の出来事を前に委縮してしまっていた。いや、どう対応するか迷っていた、と言うべきか。 そんな咲子を前にワタシはここは一気に押すべきだと思った。 今一気に押し流さないとチャンスは流れる。このまま強引に押し流すしかない。 ワタシは彼女の肩やあげくその豊満な乳房などをマッサージしながら、耳元で囁き続けた。 この問題は重大な不祥事であること、 このことが理由で推薦が取り消されてしまえば奨学金や学費などの面でも大きな影響が出てきて、家計にも重大な打撃となりうること、 将来有望な若者にとってこのスキャンダルは大きすぎる、ということなどなど……。 要は「あんたが身体開いてくれりゃすべて無事に済むんだよ」ということを、 咲子の身体を揉み、撫でまわしながらワタシは優しく脅し続けたわけだ。 立派な脅迫ですよ、これは。 が、彼女もなかなか頑固で、ワタシの要望に応えようとはしてくれなかった。 唇をかみしめ、悔しそうに歯噛みしながらこちらを見つめるんだよね。 ??これはまずいんじゃないか……。 咲子を脅しながら、こちらも内心びくびくと不安だった。 だけどここは勝負の山場だ。ワタシも簡単に引くわけにはいかなかった。 結局咲子が落ちたのはそれからしばらくしての事。 確かワタシが、 「こんなことで息子さんがすべてを失うのは誰にとっても不幸だと思いませんか?」 と言った時だと思う。 咲子は小さくうつむくとそっとこぼした。 「分かりました……。主任の好きなようにしてください……」 ワタシが咲子との駆け引きに勝利した瞬間だった。 この言葉を聞いた瞬間、ワタシはその喜びのあまり思わずガッツポーズをして叫びたくなったが、それをぐっとこらえ、 かわりに満面の笑みを作って彼女の顔を覗き込んで言ったんだ。 「ありがとう」 この時のワタシの表情は彼女にはどんな風に写っていたのだろう。 この瞬間を迎えるため、全く関係ない一人のけなげな女性の処女が奪われ、 罪のない一人の子供のスキャンダルがねつ造され、 そしてそれをネタに教師として、として立派に生きてきていた若く美しい女性が脅迫されたのだ。 ふと見ると咲子の両眼にはうっすらと涙が滲んでいた。 いつもワタシに対してぶつけていた軽蔑の眼差しは既にそこにはなかった。 * ホテルに向かう途中のタクシーの中で咲子はメールを送っていた。 おそらくは例の「友人」だろう。 と、そのあともまた時間をかけてメールを送っていたので、ワタシは何気に言った。 というか、探りを入れてみたのだが。 「息子さんにもメールですか?」 「ええ……」 料亭の中では狼狽していた咲子だったが、タクシーに入りホテルに向かうころには、 いつもの冷静さ、鋭さが戻っていた。携帯に視線を落したまま、ワタシには一瞥もくれずに静かに呟いただけだった。 おそらくは決意を固め、ホテルでワタシをさっさと満足させてそのまま終わらせようというのだろう。 ??甘い、甘いよお嬢さん……。 ワタシはこれから先の事を思うと笑みがこぼれるのを我慢できなかった。 はっきり言って自信があった。 どれほどお固い女性でも、さんざん御無沙汰をしていたのなら、 ゆっくりゆっくりと口の中でたっぷりの唾液をまぶして飴玉を舐めまわしてとろかすようにして、 優しくゆったりねっとりと責めていったなら大概は堕ちるものだ。 これは根拠のない自信ではなく、自身の経験に基づく自信だった。 実際さっき料亭で彼女を「マッサージ」していた際も、 いつしか咲子はかすかにではあるが息を弾ませていた。 あの反応を見て、絶対にいける、この女は堕ちる、ワタシはそう確信していた。 そして同時にこうも思っていた。 ??ざま見ろ。 咲子の息子御堂に対してだ。 あの純粋坊やは今ごろ「ママ」のメールを見て、 「今日は帰ってこないのかあ」とのんびり待っているだけだろう。 お前のために「ママ」は身体を張って頑張ろうというのに、その事に気づくこともなく、 この馬鹿はさっさと夢の国へと立つだけだ。 だが現実は違う。 お前が夢の国にいる間にワタシは「ママ」の全身を貪りつくし、 そして夜が明けるころには「ママ」はそれまでの女性とは生まれ変わって「ワタシのもの」になっているだろう。 大胆に女に迫られても抱くことも出来ない純愛気取りの馬鹿はそんな咲子の「転生」に気付くことすらないだろう。 以前のあの不快感を思うと、御堂に強烈なカウンターをくらわせてやったことが出来たような気がして、 その事も痛快で仕方がなかった。 世の中綺麗事だけではうまくいかないんだよ。馬鹿が。 * ホテルに入ってからの事だが、結論を先に言えば、ワタシの思っていた通り咲子は堕ちた。 初対面の時から咲子のそのスタイルの良さに目を奪われていたが、 実際に全裸となった彼女を目の前にした時は生唾を飲み込んでしまった。 まず目を奪われるのは大きく豊かで見るからにやわらかそうなミルク色の乳房。 しかし巨乳の女性にありがちなように重たげに垂れているとかいうことは全くなく、 ピンと張りつめて美しい円を描いたそれは形の良い乳房だった。 そして、左右の乳房の先端で淡く滲むようにして広がる桃色の乳輪とやや小さめの乳首が、 この純白の乳房を可憐に彩っていて、あまりの美しさに思わず見惚れてしまう。 視線を下の方にずらしていくと、 ねっとりと肉づきながらも滑らかな曲線を描いて美しくくびれた腰とうっすらと腹筋が割れたおなか、 さらに視線を下にずらすと、たっぷり盛り上がった豊かな肉の丘を恥ずかしげに淡く彩る黒い草叢が目に入った。 ??これは素晴らしいな……。 あまりにも豊かで美しい裸体を晒す咲子の前で、改めてワタシは極上の女を手に入れたことを実感していた。 しかしこれほどの肉体を持ちながら、生徒の事を、そして息子の事を思うばかりに、 女性としての悦びも知らぬまま日々を過ごすのはあまりにももったいない。 ワタシはこの身体にとことん悦びを与えてやろう、そう思った。 そして咲子をその悦びの中で大きく転生させ、快楽のそしてワタシの虜にしてやろう。 そう決意を固めていた。 もっとも、咲子は最初は気丈に頑張っていた。 職場と同じようにメガネも取らずに声も漏らさず唇を噛みしめて、さっさと時間が過ぎて終わるのを待っているだけのようだった。 だがワタシがじっくりとたっぷりと責めていくうちに、 彼女はまるで氷が解けていくようにその身体から緊張を緩めていき、 そしていよいよワタシと交わり、唇を重ね合わせたあたりから、官能の虜になり始めていた。 このころには彼女メガネを外しており、いよいよ咲子が長く秘めていたであろう女としての素顔が露わになり始めていたのだ。 途中、一回御堂の馬鹿から咲子の携帯に電話がかかってきたけど、 お楽しみを阻害されては嫌だから、それからは携帯の電源は切らせた。 ちなみにワタシは意地悪でね。 彼女の中にワタシのものを挿入する際、これを咲子にやらせた。 仰向けに横たわる彼女の開かれた花弁の中に自分のものの先端をあてがったままにしておき、 あとは咲子自身にワタシのものを受け入れさせるのだ。 これも理由は二つ。 一つは咲子自らがワタシを受け入れる形をとることで、 この夜の出来事はあくまで強姦ではなく、「合意のもとである」という手続きを取りたかったこと。 もう一つは彼女自身に行動をさせることで、 咲子の中で固く秘められた悦びの扉を自ら開いていってもらおうと思っていた。 何でもかんでもこちらからリードするのは子供のすることだ。 いよいよ咲子が大きく生まれ変わろうというこの瞬間、 こういう貴重な瞬間の第一歩はその転生するもの自らに踏み出させるべきなのだ。 内に秘められた固い扉は外から無理やりこじ開けるのではない。自ら開かせる。その方が自然にスムーズに事は運ぶのだ。 そして自分で行動しながら、開かれた扉からとめどなく溢れ出る官能にいよいよ我を失いそうになるころに、 ワタシは一気に攻め立て、彼女を堕とすのだ。 ちなみにワタシはここで一つの策を巡らしていた。 この時、咲子を不安にさせないためにコンドームをつけていたんだが、 実はこれには細工を施してあって、先の方は穴があいており、 要はワタシのものはゴムに包まれながらも頭の部分のあたりはむき出しだった、というわけだ。 つまり避妊具としての意味はないんだね。 ちなみに千夏にはこんなことはしていない。それは彼女があまりにも可哀想だ。 だけど咲子は違う。自分のものにしないといけないから、余計なものをつけずに自然に楽しみたかった。 だがコンドームもなしというなら彼女はそのリスクの高さ故にワタシとの交わりを拒んでしまうだろう。 それでは意味がない。そこでワタシはあえて「安心」を見せかけながら、 彼女自身にその官能の中に身を沈めていったもらうことにしたのだ。 挿入後も幸い咲子はワタシの策に気付くことはなかった。 仰向けの姿勢のままぎこちなく腰を動かしてワタシを受け入れていたが、 次第に息がはずんできて、その頬が紅潮してきたころ、ワタシは一気に責めることにした。 ここでもワタシの思った通りに行った。 ワタシが腰を突き入れた瞬間、彼女は大きく声を上げ、思わず身体をのけぞらせていた。 突然の出来事に驚いたのと、そしてワタシが動いたことでさらなる大きな刺激に襲われたことに戸惑ったのだろう。 それからも咲子はワタシに腰を突き入れられながら自ら腰を振るのを止めることはなく、 全身汗まみれになって自身の燃え上がる官能に振り回されながら、何度も絶頂を迎えていた。 ワタシが思い切って唇を奪うと最初は拒絶の意思を見せていたものの、 そのままゆったりワタシが唇を舐めまわしているうちに緩やかに彼女の唇は開かれ、 いつしか舌を交らせるようになっていた。おそらくキスに弱いのだろう。 唇を重ねながら咲子は何度も身体を震わせ、こぼす声は一際大きくなっていた。 そして、最後の方になるとバックの姿勢で髪を振り乱しながら自分でも大きく腰を振り始める有様で、 ワタシの腹に何度もパンパンパンパンと乾いた音を弾かせながら、きゅっと引き締まった可愛いおしりをぶつけていた。 ずっとご無沙汰だっただけにもはや自分でも抑えようがなかったんだろう。 最初はあまり濡れずに固かった彼女の中が、 いつの間にか熱くたっぷりとドロドロに濡れて、きゅうきゅうきゅうきゅう締まる。 あの心地よさと言ったらない。最高ですよ。 そしてワタシの思惑通り、いよいよ彼女は生まれ変わろうとしていた。 そのうちこちらも我慢できなくなってきて、 「射精(だす)ぞっ!」 ワタシがうめき声を上げると、咲子は一瞬戸惑った様子を見せたが、 なおも自ら腰を振るのをやめず、官能にそのまま流されていこうとしていた。 ワタシがゴムをつけているという安心も彼女にはあったのだろう。 「ハッ! イクッ……アッ……イくっ!!」  と、ワタシと共に絶頂を迎えようとするようにひときわ高く声を上げ、腰の動きを激しくしていっていた。 射精したのはその直後。 ゴムは先に書いたとおり細工してあるので、思いっきり中にぶちまけていた。 あの瞬間には最高の達成感があった。 咲子は最初何が起こったのかわからないでいる様子だった。 身体をブルブルと震わせ、絶頂の余韻の中で惚けていた。 が、異変にはそのあとすぐに気付いたようだった。 ドロリとワタシの吐きだしたものを濡れた花弁から溢れさせながら、ビクッと身体を震わせると、 「えっ……コレ……ウソッ!?」 と、はあはあと息を弾ませながら彼女は戸惑いの声を上げた。 「おっとゴムが破れてしまっていたようですね」 彼女の中から自分のものを抜いて、ワタシがわざとらしく苦笑いを浮かべると、 「な……んてことを!」 彼女は憎々しげに声を上げ、すぐにショートカット3を浴びると焦るんだが、 腰が抜けているのか立ち上がることが出来ないでいた。 そして、これをいいことにワタシが焦る咲子に構わず再び腰を突き入れていた。 ゴムもつけずにもはや生のままで。 今逃げられては困るのだ。 いよいよ今こそ完全に堕ち切ってもらい、そしてワタシの腕の中で完全な転生を果たしてもらうのだ。 ワタシが腰を付き入れられながら彼女は最初暴れた。 そりゃ恐ろしかっただろう。このままじゃ危険が高すぎる。 だがワタシは逃がさない。 焦り涙を浮かべ、「ショートカット3を浴びさせて!」と懇願する彼女を押さえ付け、 余裕で見下ろしながらなおも腰を突き入れ続ける。 再び自身の中で炎が燃え上がってきたのだろうか。 咲子の息は弾み始め、そして焦るその思いとは裏腹に悲しいかなワタシのものを締め付け始めていた。 「お願いします……ああっ! 許して……! お願い……ショートカット3を……あああっ!!」 なおももがき続ける咲子にワタシは慈愛の笑みを浮かべながら腰の動きを止めない。 「このままじゃ……あああっ……主任……このまま……じゃ……ああっ!! ……ダメっ……ダメっ……ああっ! ああああっ!!」 涙を溢れさせワタシに両手をあわせて懇願しながらもその動きが徐々に緩んでくる咲子。 こぼす吐息は大きく乱れ、そして一層ワタシを締め付ける力が強まっていく。なおもワタシは動きを止めない。 「ダメ……ダメ……私……私……!! ダメ……ダメ……やめて……やめて……あ……あ……!!」 ワタシに懇願するため両手を合わせたまま、咲子は大きくうんと喉元を露わにして仰け反りかえる。  「あ……あ……あ……も、う……あ……あ……!」 もはやその抵抗する動きは止まり、大きくのけぞったまま、 身体をガクガクと震わせながら、咲子は短く哀しげに声を発するだけになる。 そんな彼女の姿はいよいよその時が迫ろうとしているのをワタシに感じさせずにはいられなかった。 ワタシの中でもぐんと興奮が高まり、動きが思わず激しくなる。 「あ……あ……!!」 大きく目を見開き、はらはらと涙を溢れさせながら、ワタシのされるがままになっている咲子。 今起こっていることが悲しいのだろう。怖いのだろう。 同時にとめどない悦びが身体の奥底からあふれ続け、恐怖と悦びが合わさってどうしていいかわからないのだろう。 ??いいんだよ、もう悩まなくても。あるがままを受け入れたら。楽になっておしまいなさい。 ワタシが心の中で小さくつぶやき、そっと彼女の唇を奪う。 優しくて甘い小さな切ない口づけ。 と、次の瞬間だった。 ふっと力なくゆっくりと両眼を伏せた咲子はワタシの身体を深く抱きしめると、 そのままなおも重ねた唇を離そうとせず、さらに自ら舌を差し出しワタシに絡めてきた。ねっとりと熱く、深く……。 「ん……ん……んん……」 儚げに切なげに声をこぼし、涙を一層溢れさせながらも、彼女は無我夢中でワタシの唇を吸い、 これに加えて、腰を突き続けるワタシに応じるようにして、自分の両をワタシの腰に絡めうねるように自ら腰を動かしてきた。 これこそが咲子が完全に堕ちた瞬間だった。 彼女の中に存在していた理性も恥じらいもなにもかもがついに消えさり、 ただただ無限に溢れる底のない官能の中に咲子は堕ちていったのだ。 ワタシはそんな咲子を前に得も言えぬ満足感を覚えながら、なおも腰を打ちつけ、その唇を奪い続ける。 咲子は涙を流しながら、そんなワタシを自ら積極的に受け入れ、激しく身悶えながら悦びの声を溢れさせ続けていた。 そして狂った夜が終わり、さすがに疲れを覚えたワタシがショートカット3を浴び終え、 洗面所で心地よくバスタオルで身体を拭いていると、 ドア越しにいつの間に目を覚ましたのか、咲子の泣き声が聞こえてきた。 それはあまりにも儚げで切ない、哀しい泣き声だった。 ワタシは身体を拭き終えていたが、洗面所から部屋に戻ることがしばらく出来なかった。 * この夜でワタシと咲子の関係は終わったわけではない。 この夜こそはすべての始まりだった。 この夜を境に咲子はワタシの忠実な僕となった。 最高の女を手に入れた絶頂の時だった。 ワタシがこの夜の事はきっちりと隠し撮りし、これをネタに脅したことも大きいのだろうが、 それ以上にワタシとの関係に悦びを見出したようだった。 咲子はワタシを嫌がってはいる。しかしワタシといざ関係を結ぶとその瞬間は悦びに身を任せてよがり狂うのだ。 色々やったものだ。 学校フェラをさせたり、際どい水着を着せて海水浴に行き、周囲の男どもの注目の的とさせたり。 他にも地元の有力者(これが本当につまらない男だった!)に「捧げもの」として肉体接待させたり。 で、ワタシは当時自分のホームページを持っていて、自分の落とした女についてここで紹介してきていたのだが、 咲子についてもこれらの光景を撮影すると詳細を自分のHPに紹介していっていた。 このHPは自分の中ではかなり重要なものだった。 つまらぬ優越感かもしれないが、ネット上で自慢のコレクションを陳列することで、 「どうだすごいだろう?」と誇りたかったのだ。 咲子の事は特に自慢したかった。 もっとも写真撮影に納得している咲子だったが、 ネット上にいろいろ公開していることについては彼女には伏せておいた。絶対嫌がるだろうから。 安全のため、公開している写真の咲子の顔には一応モザイクもかけておいたのだが。 しかし、ワタシの女となった咲子だったが、唯一ものすごく反発をしてきたことがある。 それは彼女の自宅で関係を結ぶこととなった時の事だ。 これについては咲子はものすごく嫌がり、ワタシに対する嫌悪感を露骨にしてきたのだが、 ワタシは彼女を口説き説得し、懇願することで何とか一回だけその許しを得ることが出来た。 自分で言うのもなんだが、かなりしつこくみっともなかったように思う。 最終的に咲子は渋々了承してくれた。 御堂のガキが友人と小旅行に行く間なら家に誰もいなくなるからその間なら、というのだ。 そしていよいよ迎えたその当日の事。 憂鬱そうな表情でワタシを迎えた咲子はかつての夫との寝室でワタシと関係を結ぶこととなった。 あのときの嫌がりようと言ったらなかった。 ワタシの頬を何度もビンタし、あげく庭に出てやってもいいからこれだけは許してと泣いて懇願してきたが、 しかし、ワタシは咲子の願いを無視し、半ば強引に関係を持った。 こうすることでワタシは完全に咲子を支配したかったのだ。 もうお前は旦那のものでもない、ワタシのものなんだ、と。 それを咲子にわからせるためのこれは重要な儀式だった。 だからこそワタシは咲子の自宅で関係を持つことを強く望んでいたのだ。 かつて夫と愛を育んできた寝室で、 ワタシに呪詛の言葉を放ちながら、何とか感じまいと頑張る咲子だったが、最後は哀しいかなよがり狂っていた。 ワタシは得も言えぬ優越感を覚え、これでこの女は完全に俺のものになった、と得意になっていた。 そのあとは咲子もあまり抵抗を見せることはなくなり、家中のありとあらゆるところでワタシと関係を持った。 彼女にとって唯一心休める場所であったろう自宅もワタシの手によって完全に汚され、 もはや逃げ場はなくなったのだ。 最初のうちは涙を流しながらワタシと関係を持っていた咲子だったが、 いつしか涙を流すこともなくなり、最後は開き直ったのかまるでのように声を上げながら夢中でワタシと交わり続けていた。 そして最後の一発と思って、ワタシは一つの場所を指定した。 御堂の馬鹿の部屋でやろう、と提案したのだ。 自分のために身体を張って頑張る「母親」の事に全く気付かず、 のんびりと旅行に行くような甘っちょろいお坊ちゃんの部屋で、こっそり関係を持つなんて痛快じゃないか。 まあ絶対にあの馬鹿が気付くようなことはないだろうが。 が、この提案をした直後の咲子はすごかった。 あのときの事はワタシはいまだに忘れられない。 ワタシが提案した際、ぐったりと台所で横たわっていた彼女だったのだが、 ワタシの言葉を聞くと静かに身体を起こし、のそりのそりとワタシのもとに近づくと、 そのままワタシを抱きしめ耳元で甘くこう囁いたのだ。 「そんなことするならここでお前を殺して私も死んでやる」 ワタシは最初これはOKの意味なのかな、と思っていた。 嫌だと言いながらワタシを抱きしめ甘く囁いているのだから。 だから、 「そうかい」 とワタシは小さく微笑み、彼女のおしりにそっと手を添えて、そのまま御堂の部屋へと行こうとしたのだが、 ここで咲子は乱暴にワタシを振りほどくと突然駈け出して台所の戸棚をあけ、中から包丁を取り出し、 恐ろしいほどの憎悪と憤怒を込めた表情でワタシを睨みつけながら言った。 「嫌だと言ってるでしょ? それとも今すぐここで死にたい?」 あの夜以降咲子はワタシの前では非常に弱々しい存在となっていた。 最初のうちは強気に振舞うのだが、最後はワタシの中で弱々しく小さくなって、好きにされているのだ。 先に書いた地元の「有力者」に彼女を捧げた際も咲子は最初のうちこそ、 「あなたよりもあの人の方がずっと良かった」とワタシに強気に話すのだが、 そのあとワタシと関係を持つうちに最後は涙を流しながらワタシの好きにされているように。 だがこの時の咲子は違った。 ワタシを睨みつけながら、ぴたりと包丁の切っ先をワタシにむける彼女は驚くほど静かだったが、 そこにははっきりと鋭い殺気が漂っていて、いつでも遠慮なくそのままワタシを突き刺すことができそうだった。 そしておそらくはその後彼女は自分の首を掻き切るなどして、自殺するつもりなのだろう。 それは彼女のまるで光のない冷たい氷のような瞳が物語っていた。 さすがにこれにはワタシもおびえた。 今思うとそのまま強引に攻めても良かったのかもしれないが、この時は咲子の殺気に圧倒されてしまい、 「冗談だよ」と苦笑いを浮かべることしか出来なかった。 ワタシが諦めると彼女の方もふっと口元に笑みを浮かべて包丁を静かに置き、 「じゃあここでしましょ。もうすぐあの子が帰ってくるだろうから最後になると思うけど」 そう囁いて自らテーブルに両手をついてこちらにおしりを突き出し、ドロドロに濡れた花弁を露わにしながら誘っていた。 「……来て」 そう呟いて振り返ってワタシを見つめる咲子にワタシは彼女に言われるまま腰を突き入れることしか出来なかった。 咲子の家での情事が終わり、そのあとは自宅に戻ったのだが、 この御堂の部屋の件を巡る一件のために非常に不快で腹立ちが一向に収まらなかった。 せっかく咲子を完全に支配しようと思ったのに、 最後の最後で彼女に見事に返り討ちにあったようで、これが腹立たしくて仕方がなかった。 そしてそれ以上に御堂のガキに腹が立って仕方がなかった。 ワタシは自分のHPには基本あるがままを書いているのだが、この日の事はあまりにも不快だったので、 適当にごまかして書くことにした。 読んでいるのかいないのかわからないが、御堂のガキに自慢をするようにむなしい嘘を並べたてながら。 それからどれくらいした時のことだろうか。 多分初めて関係を結んだ夜から半年ほどたったころだ。 ホテルで情事を終えた際、咲子が涙を浮かべながらワタシに言ってきた。 「子供が……出来たみたいなの……」 初めての夜からさんざん避妊具なしで好きなだけ中に出してきたのだ。当然の帰結だった。 ワタシは得も言えぬ優越感に包まれていた。 御堂の部屋の一件は確かに屈辱的だったが、彼女妊娠にまで至らせたことで、 ワタシは咲子を完全に自分のものにすることが出来た、そういう強い実感があった。 だからワタシはこぼれる笑みをそのままに言ったんだ。 「堕ろしなさい」 この言葉を聞いた瞬間、咲子の表情は凍りついていた。 彼女にしたらこの妊娠という事実を前に何か救いがあるかもしれない、と思っていたのかもしれない。 これをきっかけにワタシが咲子を真剣に愛するようになるかもしれない、そう思っていたのかもしれない。 だが申し訳ないが、ワタシは咲子の身体には興味はあるが愛とかそういったものにはいっさいの関心がないのだ。 そんなものはどうでもいい。セックスが楽しめたらそれでいい。 だからあっさりと言ってやったんだ。「堕ろせ」と。 あの時の咲子の表情は明らかに彼女の中にあった最後の何かが音を立てて崩れたことを物語っていた。 そっとうつむいてぽたぽたと涙を落とすと咲子は小さくつぶやいた。 「そうね……」 そして、この後すぐに咲子はワタシの子供を堕ろしたようだった。 ワタシはその報告を受けた後、得意満面で自分のHPを更新していた。 最高だった。 * 非常に長くなったが、ここまでが事情説明だ。 長すぎて本当に申し訳ない。 だがこのことを説明しないと、これからの肝心要の内容について話のしようがないのだ。 さて、では話を進めることとしよう。 咲子の妊娠騒動の後も、ワタシは彼女と関係を持つつもりでいた。 やや飽きつつあったがあの豊かな身体は簡単に捨てられるものではない。 他の女を物色しながらも、咲子は大事に大事にキープしておかないといけない、そう思っていた。 そんなある日のことだ。 ワタシは職員会議に出席するべく会議室に向かっていた。 学年主任なんだから当然のことだ。 会議はいつものようにつまらない退屈な内容。 それよりもワタシが興味があったのはそのあとの事。 臨時教師として赴任してきた女性教員がいるのだが、これがまた非常に美人で、 咲子に負けず劣らず魅力的な女性だった。 その彼女がこの会議後、ワタシとの飲みに付き合ってくれるという。 咲子と違って彼女はガードは低かった。 ワタシはここで一計を巡らせていた。 飲みに行って彼女を酔いつぶした後は他の女性に対するのと同じように彼女と関係を持つつもりでいたのだが、 ここに咲子を混ぜよう、そう思ったのだ。 咲子を入れた3人で乱れに乱れるのだ。 この臨時教員と咲子が官能にとろけきって淫らに口づけを交わす中、 ワタシは二人を交互に責め続ける。なんて素敵なことなんだろう。 会議前そんなこれからの事を楽しみにしながら、会議室近くの職員トイレに入り用を足している際、 ここで突然意識がなくなった。 「結構づくめのことにはいずれ必ず悪魔のツケがやってくる」 有名な作曲家であるリヒャルト・ワーグナーの言葉だ。 こういうのは教訓的な説教臭い言葉であり、 そんな「ツケ」がやってくるのはドジで馬鹿な奴だ、ワタシはそう思っていた。 常に用心していれば大丈夫だ。 実際ワタシは慎重で用心を欠かしたことはない。 それは咲子との関係を振り返ってみてもよくわかるだろう? が、これが慢心と言うのか、なんというのか……。 落とし穴は思わぬところにあった。 まずワタシが意識を失った理由について説明しよう。 脳内出血。脳幹部の出血いわゆる橋(きょう)出血だった。 これは脳幹という脳の中でも生命維持の中枢がやられてしまった状態であり、脳内出血の中でも最悪の部類に入るものらしい。 ワタシはこの出血のために自分の生命維持の機能を大きく失ってしまったのだ。 痛みも何もなく突然目の前が真っ暗になって意識がなくなったという感じで、 当たり前の話だが、この後の事はさっぱりおぼえていない。 目が覚めた時は病院のベッドの上で、それは倒れてから1ヶ月ほどたってからの事だったらしく、 職員トイレで倒れた後かなりして(これが悪かったようだ)別の教員がトイレに入ってきた際、 ワタシが倒れているのを発見し、すぐに救急車を呼んで病院に運ばれていったらしい。 これは目覚めてからだいぶ経ってようやく理解出来た話だ。 だがこの1ヶ月の間にすべての状況は一変してしまっていた。 まずワタシは身体の自由を失った。右半身が麻痺してしまい、全く動かせなくなった。 移動のための車椅子は必需品となり、言語も失った。 耳鳴りがワンワンとひどく、モノがだぶって見えるようになり、 頭の中はいつも圧迫されているような痛みがあり、 逆さづりをされているような苦痛が常時伴う。 平行感覚が失われ、少しでも身体を動かせば猛烈な吐き気に襲われ、まともに睡眠をとることすらできない。 肉体を失っただけで済めばまだよかったのだが、社会的な地位も失った。 学校はいつの間にか自主的に退職させられていた。 長く昏睡状態にあり、そのあとも重度の障害が残っているのだ。当然のことだろう。 これに伴って長く連れ添った女房がワタシのもとを離れた。 教員をクビになり収入を失ったワタシだ。そんなワタシにはもはや何の価値もなかったのだろう。 愛などなかった典型の仮面夫婦だ。これも当然の帰結だろう。 何よりも一番堪えたのは咲子をはじめとする今まで手に入れてきた女性たちも一気にワタシのもとを離れたことだ。 身体の自由を失ったワタシにはもはや以前のようにセックスをすることなど出来ないし、 脅すなどして彼女たちを縛りつけるだけの力もなかった。 これも当然と言えば当然なのだが、これは本当に堪えた。一番絶望的な思いをさせられた。 結局この突然の脳内出血でワタシはすべてを失ってしまったのだ。 長年かけてコツコツと築き上げたものが音を立ててあまりにもあっけなく。 だが、ここが面白いと思うのが、ワタシをどん底に突き落としたこの脳内出血の原因だ。 後々話を聞いたり、猛烈な吐き気に襲われながらなんとか調べてみてわかったのだが、 この原因はどうもワタシの行動にあったようなのだ。 まず女性を誘うために頻繁にワタシはよく酒を飲んでいたが、これが非常に悪かった。 酒を飲むと血圧が上がり、これに伴って脳出血を起こすリスクが非常に高まるのだそうだ。 さらにワタシの場合、もう一つ。 ワタシの大好きなセックスだ。 諸君、セックスの最中に死んでしまういわゆる「腹上死」。これの原因はなんだか知っているか? 一番多いのは心臓マヒ。次いで多いのは脳卒中なのだそうだ。 理由は簡単。セックスも飲酒と同じく血圧が上がってしまうからだ。 特に飲酒後のセックスと言うのは非常にリスクがあるものらしい。先に書いたことを考えたら当然だ。 まあもっともこれも適当にほどほどにしていたら何の問題もないのだろう。 だがワタシの場合は違った。 酒は毎日当たり前のように楽しんだし、50を過ぎてからも若いころと変わらぬペースでセックスを元気いっぱいに楽しんでいた。 大概は酒を飲んだ後にしこたま楽しむのだ。咲子や千夏の時のように。 この長い積み重ねが脳にはかなりのダメージとなっていたようで、 そしてあの倒れた日、ついに限界を迎え、脳内出血という結末に至ってしまったわけだ。 先に出したように、 「結構づくめのことにはいずれ必ず悪魔のツケがやってくる」 とはよく言ったもので、ワタシが倒れたことはいずれ来るべき当然の結末だったのだ。 因果はめぐるとはよく言ったものだ。 ワタシは慎重に慎重を重ねていたつもりだったが、この点については完全に盲点だった。 高血圧を指摘されたことは何度かあったし、周りで倒れた脳出血の人の話も聞いていたが、 まさか自分がこんなことになるとは思わなかった。 自分にはそんなことは起こらない、そう根拠のない自信を持ってのぞんでいた。 この点は今も悔まれてならない。だが気付いたのはあまりにも遅過ぎた。 いまだに思うが、こんなことになるならいっそ死んでしまった方がよかったと思う。 肉体の自由は失われ、社会的な地位も失い、猛烈な苦痛の中でただ息をしているだけの存在だ。 もはやワタシの未来には何の希望もなかった。 * 結局倒れてから1年ほどしてようやく病院を退院した。 脳内出血の後遺症は全く改善していない。だが、一人で生きていかなければならなかった。 昔女房と住んでいた家には戻れなかったので、 市内の別の小さなアパートで暮らすこととなった。 倒れる前に使っていたPCだけは引き取らせてもらった。 この中には以前楽しんだ女性たちとの思い出が残っている。 何もかも失った今、この思い出だけがワタシの拠り所だった。 吐き気をこらえて何とかPCの電源を入れる。 そして思い出のフォルダを探す。 が、なかった。 いくら探してもフォルダは見つからなかった。 視界がだぶり吐き気に襲われ何度も嘔吐しながら、必死で探すが見つからない。 誰がいじったのか知らないが、ワタシの一番大切な思い出は残酷にも消去されてしまっていた。 USBメモリーなど外部に保存したものも一切合財なくなっており、 なんとかネットに接続して自分のあのHPを探したが、そこも既に消去されており、跡形もなくなっていた。 咲子をはじめとする女性たちとのワタシの思い出のすべてはこの世から完全に抹消されてしまっていた。 もはやどうしようもなかった。 ワタシは本当に何もかもを失ってしまったのだ。 そのような中、突然届いたのが、冒頭に書いた1枚のDVDと1通の手紙だった。 それは1枚の大きな封筒にセットにして入れられており、 差出人を確かめるとそれはあの御堂。純愛気取りの馬鹿ガキだった。 ??今さら何だ……? ワタシは突然このようなものを送ってきた彼の真意が理解できず、首をひねった。 先に手紙を読もうか、とも思ったが、これは正直かなり苦痛だった。 内容がどうこう以前に、単純に文字を追うという作業がしんどいのだ。 だから先にDVDを見ることにした。 震える手で何とかPCにDVDを挿入し、自動再生するのを待つ。 しばらくして再生は突然始まった。 いきなりそこには全裸の女性が映っていた。 顔はよくわからないが、上下に激しくぶるんぶるんと揺れる大きな乳房が映っている。 撮影者がへたくそなのか、カメラがぶれまくっていてアングルが安定せず、 ただでなくても視界がぼやけるワタシにはそれは苦痛で、猛烈な吐き気に襲われたが、 それでも何とか嘔吐をこらえ、必死にモニターを見つめる。 と、ようやく女性の顔が映った。 ??あ……! ワタシは内心声を上げた。 女性は咲子だった。 全身汗まみれになり、頬を真っ赤に染め、乱れた髪をそのままに、 おそらくは撮影者であろう男性に腰を突き上げられながら、 悦びの声を上げて、夢中でその行為を楽しんでいる。 『いいよ、いいよ……! ねえすごく気持ちいいよ……! ああっ!! もっとして、ねえ……もっと!!』 咲子は涙を溢れさせながら、男を抱きしめ、なお一層乱れていっている。 なんとなくこのDVDの内容の想像がつきつつあった頃、 カメラが不意に動き、それまでと違い咲子を横から映すようになった。 と、その直後夢中でよがり続ける咲子を、上から腰を突き続けている男が覆いかぶさり、 息を弾ませ続けていた彼女の唇を奪った。 自然、男の顔が映し出される。御堂だった。 二人とも深く抱きしめ合い、無我夢中で舌を交らせ吸いあっている。 思えば咲子もキス好きだったが、どうやらそれは御堂も同じようだ。 長く舌を絡ませ合った後、幾筋もの唾液の糸を互いの唇の間に引きながら、二人は顔を離すと、 『咲子さん気持ちいい? ねえ、気持ちいい?』 と息を弾ませながら、御堂が必死に問いかけ、そんな彼を優しくかき抱きながら、 『うん、気持ちいいよ。すごくいい。気持ちいいよ……ああっ!!』 咲子は御堂の耳元で甘く囁き、なおも二人は夢中で行為にのめり込んでいた。 と、 『ちょっと、私もまぜてよぅ』 不意にモニターの中から別の聞き覚えのある女の声が不意に響いた。 御堂と咲子が二人仲良く声のした方に顔を向けると、 そこから別の全裸の女性が一人姿を露わした。 「ええっ!?」 ワタシは驚きのあまり声を上げた。 それは千夏だった。 くだけた調子で二人のもとに近寄ると、ベッドの上にちょこんと座り、咲子の顔を意地悪そうにのぞきこむと、 『咲子ばっかりずるーい。私も一緒にちゅうしたいー』 そう言って、強引に御堂の頬を抱き寄せ、彼の唇を奪った。 『ちょっと、千夏! あんたさっきいっぱいしてもらったじゃない。今度は私の番よ!』 御堂と一つになったまま咲子は身体を起こし千夏に抗議の声を上げると、 『だってぇ……ねえ、御堂君はどうしたい?』 千夏は咲子の抗議に半ベソをかいたような表情を見せると、瞳を潤ませながら御堂の顔を覗き込んだ。 御堂は二人の顔を見比べながら苦笑いを浮かべると、 『じゃ、じゃあ三人でキスしようよ……』 そう言って咲子と千夏の顔を近寄らせた。 『しょうがないなあ……』 咲子は不満げに唇をとがらせたが、すぐに何のためらいもなく千夏と大胆に舌を絡ませ合うと、 そこに御堂も加わって三人でぴちゃぴちゃと卑猥な音を立てながらしばらくの間、舌を絡ませあっていた。 その後誰からともなく唇を離すと、御堂はおどおどとした口調で言った。 『じゃあ、さっきは千夏さんの中で出したから、次は咲子さんに……ね?』 『うん、わかった』 口調は渋々と言った様子だったが、千夏はその口調とは裏腹に嬉しそうに笑顔を見せると、 咲子の豊かな乳房に舌を這わせ、可憐な乳首を唇に含み舌でれろれろと転がし続けていた。 『どう、気持ちいい?』 目線を上げて問いかける千夏に咲子は、 『うん……感じちゃう……』 そう言って小さく顔をのけぞらせ、 『お願い、来て……』 御堂に甘く囁いた。 『うん……』 御堂はこれに小さく何度もうなずくと再び腰を激しく突き出し始め、 これに合わせてぶるんぶるんと激しく上下する咲子の乳房を優しく揉みながらなおも千夏はその先端の乳首に舌を這わせ続け、 そして咲子は大きく身体をのけぞらせ、自らも腰を突き動かしながら、悦びの声をあられもなく溢れさせ続けていた。 ??なんだこれは……。 ワタシは茫然としながらモニターの映像を見つめていた。 どういうことかさっぱり分からないが、この状況をみる限り、 御堂、千夏、そして咲子の3人はこうして仲良くセックスをするほどの仲になってしまっているようだった。 その後も映像は続くが御堂の責めはワタシのものと比べたら幼稚そのもので、 果たしてこんなことで女性たちは満足するのか、と思う。 しかし、長く映像を見ていると思う。 千夏も咲子も何と嬉しそうにセックスを楽しんでいるのだろう。 全身汗まみれになり、髪を振り乱しながらも、彼女たちは心からセックスを楽しんでいた。 時に女性同士でありながらも大胆に口づけを交わしあい、嬉しそうに笑顔を見せ合い、 幸せそうに貪欲に自分の欲求に身をまかせながら、お互い求め続けていた。 ここまで至るのにいろいろと葛藤もあったかと思う。女性同士でキスするなど抵抗もあるだろう。 だが、もはや今の3人はそんなものをすべて超越していた。 一切の束縛から解放され、何のためらいもなくありのままの自分をさらけ出し、 ただただ無限に溢れる快感に身を任せ、悦びの声を上げ、涙を流しながら心の底からセックスを楽しんでいた。 咲子や千夏を淫乱だと非難することはたやすいのかもしれないし、実際そうなのかもしれないが、 この映像を見る限りはそれ以上にこの二人はあまりにも幸せそうで、 少なくとも「淫乱」だの非難しても彼女たちには通じないのだろうな、と思った。 そんな周りの声などどうでもいいのだ。この幸せの絶頂の中にいる彼女たちにっては、今のこの瞬間こそが最高なのだろう。 現にモニターを見るがいい。 事が終わって3人仲良く並んで横たわるその姿を。 御堂を挟み込む形で横になる咲子と千夏の心から満たされた幸せそうな表情を。 『……ねえ、気持ちよかった?』 『すごくよかった……』 『私もすごくよかったよ……ねえ?』 『うん……』 『大好きだよ……』 『僕も……』 『……私も……』 『ずっと一緒だよ……』 『……うん……ずっと……ずっと……』 優しく慈しみに満ちた表情で交互に口づけし合い、 いつしか再びまたも3人仲良く求めあっていくその姿を。 嬉しそうにはしゃぎながら幸せそうに何のためらいもなく、淫らな姿を晒すその姿を……。 それは淫乱などという非難が下種なものに思えるほど神々しく美しいものだった。そのあまりの眩しさに目がくらむ。 千夏も咲子もワタシの腕の中で大いに乱れた女性だ。 その時はもしかしたらこの映像以上に激しく乱れていたかもしれない。 いや、実際咲子はこの映像以上に乱れたことが何度もある。あの初めての夜のように。 しかし、このように幸せそうな表情をワタシに見せたことはなかった。 二人ともその時はよがり狂っても、事が終ったあとはうつむき、寂しげに涙をこぼしていた。 手練手管のワタシが与えるのは絶望。 未熟極まりない御堂が与えるのは幸福。 ??この差は何だ……。 ワタシはもはや言葉を失う。 千夏や咲子が御堂と関係を持っていることにショックを受けていないと言えば嘘になるが、 それ以上にこのワタシと御堂との差にショックを受けた。 不意に猛烈な吐き気がワタシを襲い、思わず眼が眩んだ。 モニターの中では再び3人が激しく求めあい始めている。 御堂が咲子の乳房にむしゃぶりつきながら、千夏の花びらの中に指を差し入れ、 そして咲子と千夏の二人は思い切り抱きしめ合ってぴたりと肌をくっつけ合い、 濃厚に舌を交らせ合っている。 ??なぜだ……なぜだ……。 もはやモニターの中の映像も正視できず、猛烈な吐き気と強烈な耳鳴りに襲われる中、 頭を抱えながらワタシはなおも自問自答を続ける。 そして激しく嘔吐しながら得た結論は一つだった。 ??そうか、こいつらは愛し合っているのだ……。 それしかなかった。 元々御堂に想いを寄せていた千夏。 そして御堂のためにワタシに身を捧げた咲子。 そんな二人にこの御堂は応えていた。 かつては千夏の誘いにも応じてやることが出来なかったような肝っ玉の小さな男が、 今や二人の女を同時に愛していた。 こんなことは簡単に出来ることではないが、それを御堂に可能にさせたのはワタシの存在だろう。 そしてこれは御堂から送られてきた手紙が証明していた。 脳出血の後遺症のため視界がぶれる中、手紙を懸命に読んでいくと、 この3人がいかにして結ばれたか、その経緯がご丁寧にも記されていた。 どうやらワタシが倒れる直前、御堂は咲子にワタシとのことを問い詰めたらしい。 偶然にも例のワタシのHPをこのガキは見つけて、ワタシと咲子の仲を知ったとのことで、 咲子に事の経緯を問い詰めたらしい。彼女をワタシの手から救おうと。 最初はごまかしていた咲子だったが、その直後ワタシが倒れると、 不安がなくなったためなのか、重々しく真相を話していった。そしてわかってきたのは千夏の存在。 そこで千夏も交えて3人で話をするうちにわかったことは、 ワタシが千夏を強姦同然に襲い、千夏に御堂を誘わせるように指示したこと、 そしてその光景の写真を見た咲子がワタシに脅迫されて身体を開いていった経緯がすべて明らかになったらしい。 真相を知った千夏は、 「生涯かけて償わせてもらう」 と咲子に泣いて土下座をして謝罪をしたらしいが、 「あなたもあの男の犠牲者なんだから……」 と咲子はそんな千夏を許し、その後はいつしか3人はお互い「被害者」同士友情が芽生えるようになった。 手紙を読む限り御堂は、 「自分のせいで二人を不幸にしてしまった。だから自分は懸命に二人に尽くさないといけない」 と考えているようで、咲子と千夏の二人に心から誠意をもって接したようだ。 そして、そんな御堂の想いが通じたのだろう。その後は3人同居をするようになり、 このように3人が3人ともそれぞれを愛するという奇跡的に良好な三角関係を維持しているようだった。 このような関係がいつまで保たれるのかは分からない。将来は破綻するだろう。 これは負け惜しみでも何でもなく、それが現実というものだ。 そしておそらくこの中で出ていくことになるのは一人しかいないだろう。 だが、少なくとも今はその懸念はないようだ。 3人とも固い絆で結ばれ、深く愛し合っている。 それはこの映像を見ていたらよくわかる。 モニターに目を向けると、3人はまたも濃厚に絡み合って深く求めあっている。 幸せそうに悦びの中に身を沈め夢中で交わり続けている。 それはワタシが決して見ることの出来なかった光景。 はるか昔に憧れながらとうとう手に入れることの叶わなかった光景。 だがその事に別に悔いはない。 決してこれは負け惜しみじゃない。 ワタシはこれまで十分楽しませてもらった。 咲子についても千夏についても御堂よりもはるかに楽しんだ。 咲子は妊娠させるほどまでたっぷりと味わいつくしたし、千夏のその貴重な処女はワタシが頂いた。 こんな映像を送りつけ、そして手紙まで送ってきたのは御堂なりのワタシへの復讐なのだろう。 どうだ、俺はお前の手から女を取り戻したぞ、と。 もはや身体を動かせない無力でみじめなお前と違って、ずっと幸せなセックスをしているぞ、と。 それをワタシに見せつけたいのだろう。 だがな御堂、お前はしょせんワタシの使い古しを愛しているにすぎないんだ。 そもそもワタシがこんな脳出血などというアクシデントに巻き込まれず、 今まで通り健康体で過ごしていたなら、お前は何も出来なかっただろう。 仮に咲子とワタシの関係を知ったとしてもお前は涙を流しながら勃起し、 指をくわえて眺めていることしか出来なかったはずだ。 強運・偶然・僥倖・奇跡……。 お前はたまたま恵まれただけ。 本来ワタシはお前になど負けるはずがないのだ。 だから、お前の復讐ごっこは負け犬の虚しい自己満足だ。 せいぜいワタシの使い古しで用済みの女たちと虚しい恋愛ごっこでもしていたらいい。 一時取り乱したが、ワタシは次第に冷静さを取り戻してきていた。 そしてモニターの中の御堂をあざ笑ってやろうとした時、 咲子が御堂と唇を重ねあって深いディープキスをしている映像が目に入った。 きらきらひかる唾液の糸を引きながら唇を離した咲子は頬を真っ赤に染め、涙を溢れさせながら、 ぎゅうと抱きしめたままの御堂に笑顔でこう言った。 『……愛してる。大好き』 そして二人は再び唇を重ね合い、ぐちょぐちょと淫らな音を立てながら深く貪り合っていた。 ??あ! この咲子の言葉を聞いた瞬間、ワタシは気付かなくてもいい決定的な事実に気付いてしまった。 心臓の鼓動が早まり、再び収まっていたはずの猛烈な吐き気が込み上げてくる。 ??何と言うことだ……。 それは咲子の事。 義理の息子の御堂をダシにして関係を持つにいたった咲子。 そうなのだ。 咲子は御堂の事があって初めてワタシに『やむなく』身体を開いたのだ。 すべては息子の御堂を守るために。 そのために自分を犠牲にしてみせたのだ。 ??何と言うことだ……。 ワタシは咲子を手に入れられたことに得意になっていた。 純粋馬鹿の御堂とは違うと思っていた。 だが、ワタシはその純粋馬鹿である御堂の存在、 いや咲子の自らの身を捧げてもかまわないほどの御堂への愛があってはじめて、 何とか咲子を手に入れることが出来たにすぎない。 ワタシは咲子の御堂への愛につけ入ったにすぎないのだ。 そして咲子がワタシのために御堂と同じようにそこまで身を捧げてくれる可能性はない。 ワタシと御堂では咲子の中でその存在価値が根本的に違っていたのだ。 そもそも、そこまでワタシを愛してくれた女性も今まで独りも存在しないし、 逆にワタシがそこまで人を愛したこともなかった。 一人の男を愛して、自分の身体を犠牲にすることも厭わなかった女。 そんな女を懸命に愛する男。 そして恥ずかしげもなく「女とはセックスできたらそれでいい」と豪語して、 一人の女を愛することもなく、逆に一人の女から愛されることもなく、 ただただむやみやたらに多くの女を手段を選ばず抱きまくり、泣かせ、 それを「コレクション」と称して自慢することしか出来なかったワタシ……。 これに気付いた瞬間、ワタシは底のない真っ暗闇に身体が沈んでいくのをはっきりと感じた。 もはやそこに一片の救いもなかった。 ワタシは再び激しく嘔吐していた。 その時はすでにもはや吐き出すものはなく、胃液と胆汁が出てくるだけだった。 嘔吐がおさまり、息が乱れる中、再びモニターに目を向ける。 『ねえ、来て……いっぱい愛して……』 モニターの中の咲子が蠱惑的な声を漏らしながら優しく両手を差し出し御堂を誘う。 そんな御堂のことを優しく後ろから支えながら、咲子と繋がるのを千夏は介添えする。 『ああ……入ってる……嬉しい……』 御堂と繋がった瞬間、咲子は大きく仰け反りうっとりと心地よさげに声を漏らした。 そのあとは3人仲良く悦びの声をこぼしあい、深く濃厚に交わり続ける。 これほど愛し合えば、ワタシから受けた穢れなどとっくに癒されているだろう。 もはやワタシの存在など入る余地もないし、今のワタシにこの3人の関係を乱すほどの力もない。 3人は心の底から通じあい何のためらいもなく不安も懸念も何もなく、 無限の悦びの中で自分の心の思うままに結ばれていた。 それはなんて美しいのだろう。とても卑猥であるのに、3人の姿はあまりにも神々しく眩しい光を放っていた。 そんな3人を見ながら、ワタシはもはや笑うことしか出来なかった。 脳出血の後遺症で醜くゆがんだ顔を一層ゆがませながら、声を上げて笑った。 笑いながらいつしか涙がこぼれた。気がつけば声を上げて泣いていた。 追記 最後になるが、ワタシのHPのデータなど一切を消したのも、御堂であるようだった。 ワタシが入院中に勝手に処分したようだ。 「このようなものがあることは先生の名誉にかかわると思い、勝手ながら消去し処分させてもらいました」 と手紙の末尾にあった。 ワタシのため、というがどうせ千夏と咲子のためなのはわかりきっている。 消去したとはいえ、過去のHPのデータのネット上への流出を防ぐことは困難かもしれないが、 あのモザイクの入った写真や匿名の記事だけで咲子たちを特定することは出来ないだろう。 少なくとも彼女たちの大きな不安材料は御堂の頑張りのおかげでほぼ消滅したといっていい。 ご立派なことだ。そりゃそこまで頑張れば御堂も咲子たちから感謝され愛されるわな。 だが御堂に感謝したいのはワタシも同じだ。 なぜなら、今、すべてに気付いたワタシがそんな過去の思い出を目にしたら、 自分の救い難いみじめさに、激しく身悶えするしかなかっただろうから。 ちなみに、この御堂から送られたDVD。 この映像をネットにばらまくなどすれば咲子たちに大きなダメージを与えることが出来るだろう。 ここにもあられもなく淫らな彼女たちの姿が映し出されているのだから。 御堂も間抜けだ。ワタシへの憎悪のあまり、そうなる危険があることに気付かなかったのだろうか。 それとももはや無力のワタシにはそんなことすらできないとタカをくくっていたのだろうか。 だが、御堂がどう思っていたかはともかくとして、この映像を流出させることは止めておこうと思う。 そんなことをしたらもはやワタシのみじめさは救い難いではないか。 救いのないどん底にいるワタシにだってぎりぎりのプライドがある。 これがワタシに残された最後の意地だ。 だからワタシは御堂からの手紙を捨てると、DVDは何度も椅子に叩きつけてめちゃめちゃに割ってやったのだった。 出典:2ch リンク:寝取られスレより