僕は今年20になる、新一(仮名)と言います。

ちょっと暗くて友達もいません。

もちろん彼女だって。

年齢=彼女いない歴みたいな冴えない奴です。

こんな僕だから、中学の頃は同級生のヤンキー達にはいいようにイジられ、かなり馬鹿にされていました。

それ以来、ヤンキー、不良という人達を見ただけで、毎回逃げたり、こそこそ隠れて日々過ごしてきました。

あの日までは…。

あの日というのは、今年の1月3日、実家は商売をしている為、僕は父親に頼まれて事務所に飾る為の破魔矢を買いに、地元ではそこそこ大きな神社へ行きました。

一人で破魔矢を買って、詣もついでに済ませて、境内を歩いているといきなり
後ろから肩の辺りをパンチされました。

ビックリして振り向くと同じ中学だったヤンキーの後藤がニヤニヤしながら

「おう!新一じゃね~か」

と慣れ慣れしく肩を組んで来ました。

僕は愛想笑いをしながら内心は

…うわ~最悪だ、逃げなきゃ…

と、焦っていましたが後藤は肩を組んだまま僕を神社の裏の方へ連れて行きます。




神社の裏の方に向かうにつれて、詣に来ていた人達の姿はだんだん少なくなり、僕は愛想笑いすら出来ない状況になりました。

その間も後藤は

「お前何やってんの?」

とか

「まだあそこに住んでんだべ?」

など色々聞かれた気がしましたが、あまりハッキリ覚えてません。

そんな時に前から人の声がしたので顔を上げると、そこには中学のヤンキー軍団がいました。

男5人女3人の、合わせて8人です。

皆、僕とタメで中学時代は散々僕をいたぶった奴らです。

その軍団を見るなり後藤は叫びました

「おい。今小便行ったら新一見つけた。懐かしくね?」

そう言うと、男達は

「お~!新一かよ。懐かしいなぁ」

なんて薄ら笑いで近寄って来て、なぜか皆僕の腹にパンチしたりりを入れたりしてきました。

そんな状況でも、僕はヘラヘラしながら(我ながら情けない…)

「久しぶり…皆はまだ一緒に遊んでるんだぁ」

なんて事を呟いてました。

内心では…高校すら行ってねぇおまえらの最終学歴の友達同士だもんな。

そりゃ~仲良くしてなきゃな。

なんて事を考えながら。。

そんな時間が少ししたら、周りでそんな様子を見ていた女ヤンキー達が、

「ねぇ、そろそろどっか行こうよ~」

と言い始めました

そのタイミングで

「僕もそろそろ帰らなきゃ」

と言ったのですが、再び後藤は強く肩を組んできて

「冷てぇ事言うなよ!久々なんだから付き合うべ!?」

と睨みながら言ってきたので、僕は脱出は諦めて小さく頷きました。

そして、その後はヤンキー軍団の趣味の悪い車に乗せられて国道沿いのボウリング場へ連れて行かれました。

貸し靴代とジュース代を奢らされ、その後のゲームセンター代もかなり出させられ、僕の財布から札が無くなった頃に、

「じゃあ、俺等行くとこあっからよ」

と、その場で急に解放されました。

家までは歩いて40分位かかりましたが、脱出出来た喜びで苦痛に感じませんでした。

そしてその2日後に…。

■2日後の1月5日

その日は、夕方17時から0時までコンビにのバイトでした。

いつものようにレジにいると、21時頃後藤と工藤と女ヤンキーの大川由利の3人が店内に入って来ました。

「おう!新一~来たぞ」

そういえば僕はボウリングの時に、会話が途切れるのが何となく怖くてバイト先まで喋っちゃったんだ…というのを思い出し、1人で凹みました。

そんな僕の気持ちなんか全然無視して後藤は

「お前バイト何時までよ?待ってるから終わったら遊ぶべ~よ」

と言い、0時までと伝えると

「またその頃来るわ」

と店を出て行きました。

奴らが出て行ってからの時間はずっと憂欝で、また金を取られると嫌なのでバイト先に金を隠しておきました。

23時30分頃に再び後藤、工藤、大川の3人で店に来て0時まで大声で騒ぎながら立ち読みしたりして僕を待っていました。

バイトが終わると同時に

「飯食い行くべ」

と言われDQNカーに乗せられファミレスに行きました。

ファミレスでは僕の隣に工藤が座り、正面に後藤、その隣に大川が座りました。

飯を食いながらまた下らない、つまらない話に愛想笑いで付き合っていると、後藤がいきなり真面目な顔になり、こんな事を言い出しました。

「実はよぉ、しばらく俺と工藤は○○県に行くから、もう新一となかなか会えないかもなぁ」

詳しく話を聞くとこうです。

後藤の家は建設関係の仕事をしていて、その会社で工藤も働いている。

その会社の新しい現場が○○県であるらしく、2人はそっちに住み込みで行くらしい

それを聞いて僕は嬉しくなり、かなりニコニコしながら

「淋しくなるなぁ」

なんて心にも無い事を言っていました。

それを聞いて後藤と工藤の二人は

「だべ?だから今日の飯は送別会代わりに新一の奢りな」

と言われ、やっぱりきたか…バイト先に金置いて来て正解!と思いつつ

「でも僕、今持ち合わせ2000円位しか無いよ」

と言いました。

それを聞いて二人は舌打ちをしながら

「じゃあ、今持って無いなら由利がとりあえず立て替えておくから、近いうちに新一のバイト先に由利が取りに行くってのはどうよ。それでいいべ」

と言われ、まぁ金輪際この2人と会わないなら安いもんかと了承しました。

それを聞いて大川由利も軽く笑いながら頷いていました。

しかしよく見ると、この大川って女ヤンキー、中学の頃から妙に大人っぽく見えたけど、この歳になって改めて見たらかなりのいい女。

化粧も上手くなってるし、茶色の髪もサラサラでスゲー綺麗!!

ちょっとツリ目で性格キツそうだけど、たまんねーなぁ。

なんて事を考えながら、明後日、バイト先に大川が金を取りに来る約束をした。

工藤と後藤は明日から他県に行くらしいので口先だけでは応援してるフリしてその日は別れた。

大川由利と約束の日、また夕方からバイトだった僕は一応立て替えという名目の訳もわからない6000円を封筒に入れて、それ以外の金は自宅に置いて、働いていた。

23時45分頃、約束通り大川由利は店に来た。

派手目な軽自動車に乗って。

で、この前3人で来た時の大騒ぎとは全く違う態度で、ほっとレモンをレジまで持って来て、またあの時の様に軽く笑いながら

「今日も0時までなんでしょ?とりあえず車の中で待ってるからさ」

と言って支払いを済ませて、良い匂いを残しながら店から出て車に乗り込んだ。

バイトが終わり、駐車場に停まっている大川の車の窓ガラスをノックするとゆっくり窓が空き

「お疲れ~寒いねぇ」

と笑いかけてきた。

その笑顔を見て僕も自然と笑顔になり

「ハイこれ。この前はありがとう」

と金の入った封筒を渡した。

なんで金せびられてるのにお礼を言ったのか今となってはかなり疑問なんだけど…封筒を受け取ると、中身も確認しないで、

「これ捨てといて~」

と飲み干したほっとレモンのペットボトルを僕に手渡し

「じゃ、またね~♪」

と言って帰って行った

大川の車が見えなくなるまで、ぼ~っと見送ってゴミを捨てようとごみ箱まで近づいた時に、ふと僕はペットボトルを眺めた。

これって…今まであの大川が…あの綺麗で大人っぽい大川が口つけて飲んでたんだよなぁ…。

そう考えると同時にゆっくりと慎重にキャップを緩めた。

飲み口の所には薄っすらと口紅がついていて、それを見た瞬間にハッとして意味も無く周りに誰もいないかキョロキョロしてしまった。

それから自宅までの約10分僕はずうっとペットボトルの口紅を舐めながら、飲み残ったわずかなほっとレモンを味わいながら帰った。

部屋に着いても、大川由利の顔と匂いとと笑顔を思い出しながら、ペットボトルを舐めて、2回抜いた。

本物のはどんな味でどんな感触なんだろう……。

あんな強気な顔してる女がベットの上ではどんな顔して悶えるんだろう?

そんな想像ばかりでその夜はあまり眠れなかった…。

それから数日経ったが、僕はほぼ毎日大川の事を考えていた。

そんなある日バイトをしていると、大川が店に来た。

入ってくるなり僕を見て一瞬笑顔を見せて、雑誌コーナーへ。

雑誌とジュースとサンドイッチとお菓子を持ってレジに来た。

また意味も無く笑ったのだが、僕の目はそのぽってりとした大川のに集中していた。

ろくな会話もせずに支払いを済ませて釣りを渡すと、大川は身体をひねってウエストポーチに財布を仕舞った。

サラサラの茶髪はフワッとなびいて、その時に胸のデカさが強調されて僕はドキッとした。

その日以来、2日に1度位のナースで僕のバイト先に大川は来るようになった。

まぁ、来てもろくに会話もせずに目が合う度にいつもの笑顔を見せてくれるだけだったが。

しかし1月の末に事態は急展開した!

その日はバイトも無く、逆に客として僕は自分が働いているコンビニに行った。

ヤンマガと弁当を買って店を出たら、あの詣の時に会った軍団に遭遇した(後藤と工藤はいないが、大川は居た)。

今からカラオケ行くから新一も来いと半ば強制的に連れて行かされ、あまり得意じゃない酒もガブガブ飲まされ、支払いも当然させられた。

飲み過ぎて帰り道、歩きながら吐いてしまったら、ヤンキー軍団には

「汚ねぇんだよ!」

と罵られ、笑われてからかわれた。

1人であまりの気分の悪さにしゃがんでいると、大川が

「汚ねぇなぁ。。早くこれでウ…