ゆっくりと流れる、昼過ぎの時間。
 メインストリートの車の流れも、いつもに比べて閑散としているように思える。
(しかし……やっぱり慣れない服装は、妙に肩が凝るなぁ)
 ターゲットを欺くために、変装を施した。

 自分ではどうかわからないが、人が見ると、立派なガスの点検員に見えるだろう。
 少々衣服が綺麗過ぎる感もあるが、卸したばかりと思えばいい。
(まぁ、余計なことは考えずに、さっさとやってしまおう)
 慣れない服装で、佐藤はターゲットの家へと向かう。

――3週間前。
 テレビ関係者同士、といっても雑用的な役回りの連中ばかりだったが、の飲み会があり、
佐藤も出席していた。
 皆、酒の力
を借りて日々の仕事の愚痴などを言いあっていた。
 誰から始まったかは忘れたが、ある若い女優の話になった。
 どうやら、皆その女優には嫌な思いをさせられ、迷惑を被ってきていたらしい。
 もちろん、佐藤も例外に漏れず被害を受けた1人だった。

 アルコールのせいか、だんだんその女優への愚痴はエスカレートしていき、遂にはお仕置きが必要だの、懲らしめてやろうだのと、そういう方向へと来てしまった。
 終いには、お仕置きの計画まで皆で立てていた。
と、そこまでは良かったのだが、計画実行となるとやはり皆気が引けてしまった。

 実行した時点で犯罪者となるのだから、好んで行おうとする者などいるはずもない。
 だが、ここまで考えたのだから、酒の席の話だけにするのも勿体ない。
 何より、あの女に仕返ししなければ腹の虫が治まらない。
 そこで白羽の矢が立ったのが、飲み会出席者の中で年下の佐藤だった。

(ここか……)
 ほどなくして、佐藤はターゲットのマンションの近所に着く。
 後は、計画通りに事を進めるだけである。
(ここまで来て失敗しないよう、気を付けないと……)
 何せ失敗したら佐藤の人生が終わってしまう。落ち度があってはいけない。
 もう一度、計画を見直しておこう。

(まず……アイツの部屋に侵入することが先決だ……)
 ターゲットが自分の部屋にいることは、既に承知済みである。
 まず、佐藤がガスの訪問点検員という事を信用させ、侵入する。
 おそらく彼女は点検を拒否してくるだろ。
 そこをどのように納得させるかが、佐藤の腕の見せ所という事になる。
(ま、理由なんて、何とでもでっち上げれるからな)
 彼女の部屋に侵入した後、隙を見て彼女を襲う。

 そして、実行結果として彼女のあられもない姿をカメラに収めてくる。
 皆で計画を立てたわりには穴だらけではあるが、ここまで来たら仕方ないだろう。
(よし……行くか)
 佐藤はマンションに入り、ターゲットの部屋を目指した。 ピンポ?ン。
 ターゲットの部屋の前で立ち止まり、インターホンを鳴らす。
 ピンポ?ン。ピンポ?ン。

「はい? どちら様?」
 数回インターホンを鳴らした後、いかにも面倒そうな声で彼女は応対する。
「毎度お世話になっております。◯◯ガスの者ですが」
「ガスなら間に合ってるんだけど」
 思った通りの反応を返してくる彼女。
 なかなか、単純な人間のようだ。
 ちなみに、会社の名前は偽名である。

「ガスの点検に参りました。よろしいですか?」
「要らないって言ってるでしょ!」
 佐藤の問い掛けに苛立った彼女は、佐藤に向かって声を張り上げた。
 なかなか、短気な人間なのかもしれない。
「いえ、そう言われましても……大家さんの方から頼まれておりまして……」
「……そうなの?」
 いかにも怪しんでいる口調で、彼女は答えてくる。
 だが、佐藤もここで引くような人間ではない。

「えぇ、先日ご依頼がありまして。 各部屋で点検を行っているんですよぉ」
「私は、何も聞いていないわよ……?」
「大家さんが連絡された時に、外出なさっていたのでは?」
 彼女の仕事仕事だけに、家にいる事は少ないだろう。
 こう言ってしまえば、引く事はできまい……。

「とりあえず、少し開けてもらえませんかね?」
「仕方ないわね……ちょっと待ってて」
 目の前のインターホンから、彼女の声が遠のく。
 その後、部屋の奥の方から足音が聞こえ、鍵を開ける音がする。
 
カチャ。
ドアが開かれ、中から不機嫌そうな表情をした「沢尻エリカ」が現れる。
 彼女が姿を見せた瞬間、佐藤の鼻腔に高価そうな香水の匂いが届いた。
「……ふぅ」
 エリカはあからさまに嫌そうな表情をガス点検員に向け、肩で溜め息を吐く。

「いやぁ、すいませんね。 わざわざ」
「勘違いしないで。 ちゃんと言わないと、アンタ帰らないでしょ?」
「そう言われましても……私も仕事でして……」
 早く追い返したいという表情で、彼女は佐藤を冷たく睨んでいる。
 さっさと信用させないと、面倒な事になりそうだ。

「大家さんからの頼みでして……そこを何とか……」
「……はぁ、まぁ仕方ないわね」
 食い下がる佐藤に呆れたのか、ようやく彼女が折れた。
 騙されたとも知らずに、のんきな奴だ。
「すいませんねぇ……」
「わざわざ、こんな点検なんかに、お金払うの嫌なんだけどね……」
 いかにも鬱陶しいといった態度で、エリカは遠くを見つめている。
 ここはもっと騙して安心させた方がやりやすいかもしれない。

 佐藤は適当に嘘をつくことにした。
「いえいえ、代金の方は構いませんので。 既に大家さんから頂いています」
「そうなの? あぁ、それなら好きにやってちょうだい」
 佐藤の言った言葉に、一気に彼女の表情が明るくなっていく。
 思った通り、金銭面のことがネックになっていたようだ。

「そうですかぁ?」
「だって、私がお金払わないでいいんだもん。
 ついてるわぁ、最近、ガスの調子が悪いと思ってたのよねぇ」
 自分の金が関わらないとわかった瞬間、大はしゃぎするエリカ。
 まったく、なんて女だ……。
 これは、本当にお仕置きが必要のようだ。

「えぇ、それは丁度良かったですね」
「ホント、私って、ラッキーだわ」
「早速ですが、キッチンの方に案内してもらえますか?」
「えぇ、それじゃぁ、付いて来て」
 入口からキッチンに向かって、ゆっくりと歩き出す彼女。
 彼女の後ろに付き、キッチンを目指していく。
 これから、自分がどうなるかもわからずに……馬鹿な女だ……。

「ここよ。 それじゃ見てちょうだい」
「えぇ、すいませんね……」
 キッチンに案内された佐藤は、適当にガス管を調べ始める。
 何食わぬ顔で作業をするフリをする。
「どう?」
「……これは酷いですねぇ」
「やっぱり、どこかおかしくなってた?」
 自分の推理が当たったことが嬉しいのか、エリカは嬉しそうに話しかける。
彼女の声を聞き、佐藤の中でゆっくりと彼女を辱めたいという衝動が大きくなってくる。

 どのように犯してやろうか……。
 そのようなことばかりが、頭の中を支配していく。
「そうですねぇ……時間がかかるかもしれないですね……」
「えぇ!? さっさと直してよ」
 エリカが佐藤に向かって、苛ついた声で言い放つ。
 感情の起伏が激しい奴だ。

「そう言わないでくださいよ……」
 すっと立ち上がり、彼女の方に身体を向ける。
 目の前には、不服そうな顔をして、ガス管を見つめる彼女がいる。
「アンタ、プロなんでしょ? この位、すぐに直しなさいよ」
「えぇ、すぐに直しますよ……お前の性格をなぁ!」
「えっ!?」
 佐藤の言葉にエリカの瞳が泳いだ瞬間、佐藤は彼女を後ろにあるテーブルに押し倒した。

「きゃぁぁっ! 何すんのよっ!」
「大人しくしてろ!」
「ちょ、ちょっと、放しなさいよっ!」
 テーブルの上で、佐藤はエリカの上半身を力いっぱい押さえ付ける。
 身体の底から、何か熱いものが込み上げてくるような感覚に見舞われる。

「こ……このっ! アンタ、こんなことしていいと思ってるの!?」
「へっ……自分の胸に聞いて見やがれ!!」
「何言ってるのよっ! 馬鹿言ってるんじゃないわよっ!」
 佐藤に押さえ付けられながらも、エリカはジタバタと身体と捩る。
 だが、彼女が暴れる度にスカートがめくれ上がり、少々派手な下着が露になる。


エリカ様お仕置き1  2  3  4  5  6