敬語なんか使っちゃったりして。「○○クンこのプリント○○さんに

渡してくれますか?」とか、おいおい先生と関係する前だって先生そんな

言葉使いしなかったじゃんとか思ったけど、今にして思えば俺だってそんなに

信用できるかどうか分からないし変に周りに俺が先生との体験談とか

チクっちゃったら・・・とか思ったんじゃないかな。逆の立場だったら

マジ緊張もんだと思う。可愛そうに・・・。

だからもうほとんど先生が来てくれることなんか有り得ないのに

トキメいてもな?みたいな。ま?自ら約束したんだから行くだけ

行ってみるか?みたいな感じで完璧惰性って感じだった。

で、結局4時ぐらいになってあ
?タルイなぁ・・・とか思いつつ一応
身支度してね。ドアを開けたのよ。真夏の4時っつぅとね、もー殆ど

昼と同じ明るさなんだよね。約束したときは夕方って意識だったん

だけど「ありゃちょっと約束早すぎたかな?」と思った記憶がある。

だってこんなに明るいのにラブホ前で待ってる厨房ってちょっと

怪しくない?いや実際怪しいんだけど。人目ひくだろ?とか



思って・・・。それでもまぁテクテクと30分の道のりを歩き始めたわけ

30分あれば着く道のりを1時間前に出たんだからね。相当時間的に

余裕がある。おれは歩道のわきの盛り上がった部分の上を歩いたりして

チンタラチンタラ歩いてったわけ。ちょっと先生の事に思いをはせて見る。

明るい盛りにラブホ前で待つ先生・・・。(ブハ有り得なね?!超有り得ねぇ)

一人想像しながらあまりのリアリティの無さに思わず噴出す俺だった。

俺が何でそのラブホを選んだかと言うとこの辺では珍しく民家が少ない

っていうか周辺が雑木林だったの。まぁ逆に言うとだからこそラブホが

建てられたってのもあるんだろうけど。で、そこに高速だけが上を

スーっとコンクリの無機質なグレーでビヨ?ンと長ったらしく通ってるだ

けなわけ。要するに人目がないんだよね。だから選んだという・・・。

で、結局そうね、最大級にチンタラ歩いても20分前後でその雑木林が

見えるとこまできちゃった・・・。時計を確認する俺。

「はやっ」まだ4時20分かよ、不思議と時間を引き延ばそうと思うときに

限って時間がたつのが遅いんだよな。あ?もうそう思ってる間にも

雑木林が目の前に迫っているわけ・・。痴漢注意と赤い文字で書かれた

看板が目に入った。確かに痴漢が出そうな雰囲気だった。

だってエロ本とか無造作に捨てられてんだもん。雨ざらしになって

変色したりして。が、逆にそれが妙に厭らしさを感じさせるんだよな。

実を言うと何で俺がここのラブホを知ってたかと言うとこのエロ本拾いを

小学校のころ友達としてたからなんだがw で、まだ明るいのにも

かかわらず気の早いヒグラシっていうの?あのカナカナカナ・・・とか

夕方になると物悲しく鳴くセミ。あれが鳴いてんのよ。

あのロケーションで鳴かれると何だか雑木林に死体でも捨てられてんじゃね?

みたいな気になるわけ。実を言うと小学校の頃実際ここに虫取りに来た

友達がそこで自殺してる奴見つけた事あんのよマジ。ノイローゼだったらし

いんだけどね。いや、んな事はどうでもいい。そんな余計な事を考えるから

ますます気持ちが萎む俺だった。(あ?やめときゃよかったな)と

思いつつもここまで来ちゃったら引っ込みがつかない。俺は雑木林の

中の舗装された細い道路をテクテク歩いていったわけ。あ?もう!蚊ウザイ!

やぶ蚊がプンプンいってんの。俺は歩調を速めてラブホに向かって

歩いていった。ラブホは雑木林を抜けたところのちょっと坂を

上がった小高いところにある。ま?いわゆる普通のラブホだ。

見えてきた見えてきた・・・。さすがにここまで来るとちょっと

ドキドキする俺。(先生が来てたりして?)みたいなありもしない

妄想が急に脳内を巡り始めた。もうあとちょっとでそれが確認できる

位置だ。が、確認したいような確認したくないような複雑な気持ちに

襲われる俺だった。だって居ないの確認しちゃったらもう終わりじゃん?

俺は意図的にインコース側を歩き確認しにくい位置で歩を進めたわけ。

が、んな姑息なジラシ自演術など大した引き延ばしにもならないわけで。

もう俺がヒョイとアウト側に体を傾ければラブホの入り口部分を

確認できるところまで来てしまった。急に立ち止まる俺。

(ど、どうしよ?せ先生が立ってたら・・・)馬鹿な俺はこの期に及んで

急にトキメキはじめてんの。深くス?っと息を吸いハァ?と吐き出す。

で、ゆっくりと体を右に傾けはじめる俺。

(た、頼む居てくれ・・・いや居るわけね?・・・いやでももしかして・・)

ドックン!ドックン!と波打つ心臓の鼓動。え?い!面倒くせーや!

俺は意を決し体を完全に右に逸らしラブホの入り口部分を確認したわけ。

(・・・・・・・居ない・・・)人っ子ひとり居ないわ(ま、そりゃそうだ)

急に現実に引き戻される俺だった。そうだよな?居るわけねんだよハハ。

しかし一応約束したんだから入り口まで行こうっと・・・。俺はテクテクと

入り口まで歩いていった。はは?んなるほど中は見れないようになってん

だな、何ていうの?ビニールののれんじゃないけど門の上から下がってて

車が入っても中は見えないようになってんのよ。めてマジマジ見て

知る俺だった。門の脇に空室ありって表示されてる。ま、そりゃそうだな。

こんな明るいうちからセックスしようなんて思う馬鹿は俺ぐらいなもんだろ。

と妙に納得する俺だった一応ご休憩料金とご宿泊料金を確認する俺だった。

馬鹿な俺はセックス相手も居ないのに一応財布の中を見て足りるか

確認してたのを今でも覚えてる。(うんうん一応足りるな使わないけど)

そう思いながら時計を確認する4時45分。う?ん・・・一応な、約束だからな。

時間まで待つか?そう思いながら、いくらなんでもラブホ前に厨房が

突っ立ってるわけにもいかないから雑木林の坂の下まで降りたところで

待つことにしたわけ。どのみち先生もこっちから来るわけだし、先生の

赤い軽自動車が来ればすぐにわかる。とりあえずボーっと時間が経つのを

待つ俺だった。フぅ・・・何であんな約束しちゃったかな?

腰に手をあて自分にあきれる俺だった。するとそのときだ・・・。

ゴロゴロゴロと地響きにも似た小さな音が聞こえんの。

つい最近聞いた事のあるいや?な音だ・・・

俺は恐る恐る空を見上げた。晴れている・・・。が、むこうの方に

こないだ見たのと全く同じ真っ黒い雷雲が迫ってきてたのである。

やっべ!俺は同じ過ちを繰り返したくない気持ちで一瞬帰ろうと

思った。が、そこが青さというか若さなんだよな。俺の中の青春君が

(お前約束したのにこんな事で逃げていいんか?ヘタレが!)と

言うのである。今なら間髪いれずに(いいんです!)と即答するとこだが

俺は要するになんと言うか・・・豪雨に打たれながら先生を待つ自分を

演じたくなっちゃったわけ。あ?恥ずかしちぃっす。

そうこうしてる内に雷鳴が大きくなりピカッ!と稲光が間近にせまって

いる・・・。この徐々に迫ってくる感じの怖さってのいうのはちょっと

言葉では言い表せないね。さっきまですっごい明るかったのに急に

真っ暗になるし。怖ぇ怖ぇ。ポツ・・・ポツ・・・と頬を打つ雨粒。

あ?来た来た。好きなだけ降ってください俺は大きく両手を広げて

プラトーンばりにこの豪雨を受けてとめてやるぜ!格好よく(どこが?)

もう完全に自分ワールドに入る俺だった。ポツ・・ポツ・・ポツポツ

ぽつぽつビシャビシャ!ビシャ!ドッシャー!!!!と、俺の心の声が天に

聞こえたのかプールをひっくり返したんじゃないか?っつぅもんの凄い

豪雨が俺の顔面を叩き始めたわけ。(まけんぞ!俺はまけん!)

かんぺき青春君に心を支配された俺は意地でも動かぬ気持ちだった。

ドガーン!!!とすごい雷が雑木林に落ちた。たまげた、これにはマジ。

本当に間近に落ちると雷って鉄臭い。これはこのときめて知った。

あ?俺死ぬんだ・・・先回りして悲劇の主人公を演じはじめる青春君。

俺がここで死んだと知ったら先生だけが死んだ理由分かってくれるんだな。

な?んて超マヌケなことを思ってたw(氏ね) 先生泣いてくれるかな?

な?んてな。が、状況はそんなのんきな事を言ってる場合じゃない。

すでに許容量オーバーになったドブにかかったコンクリートの隙間から

ゴポゴポと凄まじい噴水を上げはじめている。雑木林はかなり低い立地条件

にあるため見る見る俺の足元に水が迫ってきていた。俺はしょうがないので

小高いラブホの方へ引き返したわけ。水かさがどんどん増してきている。

さすがに心配になって空を見上げる俺だった。が、

黒い雷雲は全く勢いを衰えさせる気配を見せない。

ラブホの所まできたら暗くなったからなのか料金灯と

ラブホのネオンが灯りはじめた。とりあえずここにかくまってもらうか?

と現実クンが俺にささやきかけるが(ダメ!それ格好イクナイ!)と

青春君が却下する。結果俺は延々と土砂降りの中に晒されることに・・。

(バチだな、先生にひどいことしたバチだきっと)俺は雨に打たれながら

そう思っていた。時計を確認してみる、もう5時40分・・・。

先生は絶対に来ない、もうそれは決定だ。それは受け入れよう。

が、雨が止むまでは立っていよ…