前編:真帆の手コキ
【序章?製品展示会で】
今日は、製品展示会のため、俺は、技術課長として会社を代表し、都内の大手催事場に出かけていた。
自分の会社の小間(ブース)には自分ひとり。
小さなブースだし、そう何人も展示会に派遣できる余裕もない。来場者にパンフレットを渡して説明したり、製品の配置を見直したりしていると、隣のブースから罵声が聞こえた。
「説明できないだと、ふざけるな」「申し訳ありません」
「他にエンジニアは来ていないのか」「はい、申し訳ありません」
隣は取引先の部品メーカー、B社のブース。平謝りなのは、最近入社したばかりの事務の女の子、香織さん。確か、2
3歳と聞いている。
「すいません、どうしたんですか」
「どうしたも何も、儂はこの会社の部品を見たくてわざわざ九州から出てきたのに、この娘はチラシ1枚で追い返そうとするんだ」と、町工場の社長さん風体のおやじ。
「香織さん、今日は一人なの??」
「はい。上司からは『チラシを渡すだけでいいから』と言われてきました」
「どうも、申し訳ありません、社長さん。私が代わりに説明しましょうか」
「あんたは??」
「私は、このB社製の部品を我が社の製品に取り付けているメーカーのエンジニアです。では・・・・・」
・・・俺は、しばし説明した・・・・
「そうか、そんなに良い部品なら儂の会社でも採用しよう。お嬢さん、怒鳴ったりして悪かったな。」
町工場のおやじは、満足して帰っていった。
「すいません、ありがとうございました」香織さんはほっとした表情でお礼を言った
「本当に香織さん一人なの??」
「はい」
B社社長、展示会の意味を間違えているぞ。皆、製品について詳しく知りたいからわざわざ東京まで足を運ぶのに・・・
そうしているうちにもひっきりなしにお客がブースを訪れる。俺は、香織さんと相談して、役割を変更することにした。
受付をくっつけて、香織さんは俺の会社とB社、二社分の受付とパンフレット渡し。俺は香織さんから受けたお客に対する説明を二社分。
受付係を任された香織さん、さっきとはうって変わって、水を得た魚のようにお客さんに接していた。
笑顔でパンフレットを渡し、説明を求めるお客が重なったときは、他愛のない世間話をして間を持たせる。俺は説明だけしていればいいので、気分的には楽。お客さんの流れもスムーズになった。
俺は改めてベージュ色のパンツスーツを着た香織さんを眺めた。丸顔に後ろで束ねられた髪は少し脱色している。ボーダー柄のキャミソールに包まれた胸がジャケットの胸元を押し上げ、パンツは大きめのむっちりとした尻に少し食い込み、ショーツのラインも見えている。B社の事務員は私服勤務なので、初めて見るスーツ姿、決まっているじゃん。
夕方、お客さんの流れが切れたとき、香織さんは会社に電話を入れた。
様子を話すと、電話口から罵声が聞こえ、香織さんは泣きそうな顔で電話を切った。
「どうしたの??」
「『取引先の人に迷惑をかけるな、まじめに言われたことだけやればいいんだ』と怒られたんです。中部さん(俺の仮名)、すみませんでした」
「ううん、香織さんが謝ることではないよ・・・」
俺は無性に腹が立ち、B社社長に電話をかけると、怒りをぶつけた。
「この展示会はパンフレットの頒布会ではない。どの会社もエンジニアをよこしているのに、お宅だけ入社して3ヶ月のolをよこすとは非常識だ。今日の彼女は私の片腕としての役割を立派にこなしている。が、明日、うちの会社は若い社員が来るからB社製品の説明まではできない。お宅のエンジニアが忙しいのならあんたが来い。それよりも、まず、香織さんに謝って欲しい」
B社社長は平身低頭して謝り、香織さんに電話を代わってほしいと言った。
「はい、いいですよ。社長、明日はお願いします。今日は中部さんに甘えさせてもらってがんばります・・・」少し顔に赤みが差した香織さんは電話を切った。
「中部さん、何から何までありがとうござ・・・」
俺は香織さんが涙ぐみそうなことに気がつかないふりをして言った
「さあさあ、あと1時間、がんばろう」「はい」
会場に蛍の光が流れ、場内は閑散となった。各ブースでは片づけと翌日の準備をする各社のスタッフが動き回っている。俺たちも、受付台を離し、パンフレットをそれぞれの会社に分けるなど、明日の準備を整えていると・・・・香織さんの手が止まった。
「ぐすっ、ぐすっ」
「香織さん??」
「うっ、うわーんっっっ」
香織さんは俺の胸に飛び込むと、いきなり泣き出した。
「うわーんっ、あーん、」
「香織さん、みんな見てるよ」
「ひーん、うわーん」
確かに、回りのブースからギャラリーが集まっている。
「私、今日、何にもできなかったの。中部さんやここにいる皆さんに一日中迷惑をかけてしまった、ごめんなさい、ごめんなさい」香織さんは俺にしがみつくと、今日あったいろいろなことをぶつけているのか、胸板にくぐもった泣き声が響く。
と、向かいのブースから別の会社のエンジニアがやってきて声をかけた。
「お嬢さん、そんなことはないよ。今日のあんたは、明るい声でお客さんを楽しませていたじゃないか。私たちも癒されたよ。こちらの中部さんと組んで、立派に大役を務めたよ。お疲れさま」
と、周りにいた人から拍手が。
香織さんは、俺にしがみついていた手を離すと、回りの人にお辞儀をして拍手に応えた。
【展示会のあと】
会場を出て駅に向かおうとすると「取り乱したりしてすみませんでした」と、香織さんがぺこりと頭を下げた。
「じゃあ、食事にでもつきあってもらおうかな。こんな若くてきれいな子と食事なんて、滅多に出来ないからね」と俺。
「まあっ。でも、お金が・・・。地元の駅に着いてからのバスにも間に合わないし」
「おごってあげるよ。帰りも送ってあげるし」
「はい。では、喜んで」香織さんは、俺の腕にぶら下がった。
以前、利用したことのあるレストランに入り、軽いコースを頼む。
と、メニューを見た香織さんが「わあっ」と目を輝かせた。
「このワイン、一度飲んでみたかったの」ということで、ハーフボトルを注文。
ところが、注文はしたものの、俺は向こうで車に乗らなければならない。結局香織さん一人で空けてしまった。
食事をしながら聞いたところによると、学生時代からつきあっていた彼氏にくっつく形で都会で就職した。結婚するつもりだったが、彼氏が別の女性を妊娠させてしまい、あっけなく捨てられた。失意のうちに都落ちし、今の会社に入ったが、回りはおっさんばかりで仕事もつまらない。そんな話だった。
レストランを出てターミナルに向かおうとするときには、香織さんはすっかりできあがっていた。
人前にもかかわらず、「中部課長さん、だーいすき」とハグされたり、くずれ落ちそうになったのを支えてあげたり。
支える体は、妻の真帆よりは重い。妻の真帆がやせすぎか・・・抱え上げるとき、胸に触れると、押し返されるような張りのある感触が伝わってきた。
ターミナルに着き、香織さんをベンチに座らせる。高速バスの切符や飲み物を仕入れ、戻ると香織さんがいない。
すぐ戻ってきたが、トイレに行って吐いてきたとのこと。
「もう、吐くまで飲むなんて・・」
「ごめんなさい。中部さんが飲んでくれないんだもの・・」
俺は、高速バスのバスターミナルに車を預けており、駐車場から自宅まで30分ほど運転しなければならないことを説明し、ペットボトルの水を渡すと、香織はうがいをしにトイレに行った。
ベンチに並んで腰掛けてバスを待つ。香織さんは、俺の肩に寄りかかって甘えている。というか、アルコールが回ってへばっているのかも。
時間になり、バスが入ってきた。並んでいる乗客は少ない。珍しいことだ。
俺と香織はトイレに近い最後部右側の座席へ。他には、3、4名ぐらいの常連客が前の方に座ると、バスは発車した。
エンジンの音が軽やかに響く中、香織は俺の肩に頭を預けると寝息を立て始めた。
【高速道路で】
高速道路に入ってしばらくすると、前の方に座っていた客がドライバーに何か語りかけていた。ドライバーはパーキングにバスを入れると、車内放送で言った。
「蛍光灯が切れかかって(点滅していて)、目障りということなので、非常灯だけに減光しますがよろしいでしょうか。高速を降りましたら元に戻します」
バスの車内は電球色の非常灯だけになった。
「あれ、どうしたの??」香織は目を覚ましたようだ。
「電気が切れちゃったんだって」
「そうじゃなくって。レストランで食事をした後の記憶が・・・」
ここまでのいきさつを話した。
「本当にすみません」香織さんはまだ少し呂律が回っていない。俺の顔をじっと見ている。
そして、俺の左手を掴むと、自分の右胸に当てて
「ねえ、お願い・・・」そう言うと、目をつぶって唇をつきだした。
「かっ、香織さん」
「キスしてください。中部さんのこと好きになっちゃった」
「まずいよ、俺には妻子が・・・・」
「でも、お姉ちゃんのことは弄んでいるんでしょ」
「えっ」
【●世間は狭かった●】
「何のことだよ」
「私のお姉ちゃん、間尾直子っていうの。知っているわよね」
そうか・・・姓が違うから全く気が付かなかった。感じが似てるとは思ったが、まさか姉妹だったと…
「すいません、どうしたんですか」
「どうしたも何も、儂はこの会社の部品を見たくてわざわざ九州から出てきたのに、この娘はチラシ1枚で追い返そうとするんだ」と、町工場の社長さん風体のおやじ。
「香織さん、今日は一人なの??」
「はい。上司からは『チラシを渡すだけでいいから』と言われてきました」
「どうも、申し訳ありません、社長さん。私が代わりに説明しましょうか」
「あんたは??」
「私は、このB社製の部品を我が社の製品に取り付けているメーカーのエンジニアです。では・・・・・」
・・・俺は、しばし説明した・・・・
「そうか、そんなに良い部品なら儂の会社でも採用しよう。お嬢さん、怒鳴ったりして悪かったな。」
町工場のおやじは、満足して帰っていった。
「すいません、ありがとうございました」香織さんはほっとした表情でお礼を言った
「本当に香織さん一人なの??」
「はい」
B社社長、展示会の意味を間違えているぞ。皆、製品について詳しく知りたいからわざわざ東京まで足を運ぶのに・・・
そうしているうちにもひっきりなしにお客がブースを訪れる。俺は、香織さんと相談して、役割を変更することにした。
受付をくっつけて、香織さんは俺の会社とB社、二社分の受付とパンフレット渡し。俺は香織さんから受けたお客に対する説明を二社分。
受付係を任された香織さん、さっきとはうって変わって、水を得た魚のようにお客さんに接していた。
笑顔でパンフレットを渡し、説明を求めるお客が重なったときは、他愛のない世間話をして間を持たせる。俺は説明だけしていればいいので、気分的には楽。お客さんの流れもスムーズになった。
俺は改めてベージュ色のパンツスーツを着た香織さんを眺めた。丸顔に後ろで束ねられた髪は少し脱色している。ボーダー柄のキャミソールに包まれた胸がジャケットの胸元を押し上げ、パンツは大きめのむっちりとした尻に少し食い込み、ショーツのラインも見えている。B社の事務員は私服勤務なので、初めて見るスーツ姿、決まっているじゃん。
夕方、お客さんの流れが切れたとき、香織さんは会社に電話を入れた。
様子を話すと、電話口から罵声が聞こえ、香織さんは泣きそうな顔で電話を切った。
「どうしたの??」
「『取引先の人に迷惑をかけるな、まじめに言われたことだけやればいいんだ』と怒られたんです。中部さん(俺の仮名)、すみませんでした」
「ううん、香織さんが謝ることではないよ・・・」
俺は無性に腹が立ち、B社社長に電話をかけると、怒りをぶつけた。
「この展示会はパンフレットの頒布会ではない。どの会社もエンジニアをよこしているのに、お宅だけ入社して3ヶ月のolをよこすとは非常識だ。今日の彼女は私の片腕としての役割を立派にこなしている。が、明日、うちの会社は若い社員が来るからB社製品の説明まではできない。お宅のエンジニアが忙しいのならあんたが来い。それよりも、まず、香織さんに謝って欲しい」
B社社長は平身低頭して謝り、香織さんに電話を代わってほしいと言った。
「はい、いいですよ。社長、明日はお願いします。今日は中部さんに甘えさせてもらってがんばります・・・」少し顔に赤みが差した香織さんは電話を切った。
「中部さん、何から何までありがとうござ・・・」
俺は香織さんが涙ぐみそうなことに気がつかないふりをして言った
「さあさあ、あと1時間、がんばろう」「はい」
会場に蛍の光が流れ、場内は閑散となった。各ブースでは片づけと翌日の準備をする各社のスタッフが動き回っている。俺たちも、受付台を離し、パンフレットをそれぞれの会社に分けるなど、明日の準備を整えていると・・・・香織さんの手が止まった。
「ぐすっ、ぐすっ」
「香織さん??」
「うっ、うわーんっっっ」
香織さんは俺の胸に飛び込むと、いきなり泣き出した。
「うわーんっ、あーん、」
「香織さん、みんな見てるよ」
「ひーん、うわーん」
確かに、回りのブースからギャラリーが集まっている。
「私、今日、何にもできなかったの。中部さんやここにいる皆さんに一日中迷惑をかけてしまった、ごめんなさい、ごめんなさい」香織さんは俺にしがみつくと、今日あったいろいろなことをぶつけているのか、胸板にくぐもった泣き声が響く。
と、向かいのブースから別の会社のエンジニアがやってきて声をかけた。
「お嬢さん、そんなことはないよ。今日のあんたは、明るい声でお客さんを楽しませていたじゃないか。私たちも癒されたよ。こちらの中部さんと組んで、立派に大役を務めたよ。お疲れさま」
と、周りにいた人から拍手が。
香織さんは、俺にしがみついていた手を離すと、回りの人にお辞儀をして拍手に応えた。
【展示会のあと】
会場を出て駅に向かおうとすると「取り乱したりしてすみませんでした」と、香織さんがぺこりと頭を下げた。
「じゃあ、食事にでもつきあってもらおうかな。こんな若くてきれいな子と食事なんて、滅多に出来ないからね」と俺。
「まあっ。でも、お金が・・・。地元の駅に着いてからのバスにも間に合わないし」
「おごってあげるよ。帰りも送ってあげるし」
「はい。では、喜んで」香織さんは、俺の腕にぶら下がった。
以前、利用したことのあるレストランに入り、軽いコースを頼む。
と、メニューを見た香織さんが「わあっ」と目を輝かせた。
「このワイン、一度飲んでみたかったの」ということで、ハーフボトルを注文。
ところが、注文はしたものの、俺は向こうで車に乗らなければならない。結局香織さん一人で空けてしまった。
食事をしながら聞いたところによると、学生時代からつきあっていた彼氏にくっつく形で都会で就職した。結婚するつもりだったが、彼氏が別の女性を妊娠させてしまい、あっけなく捨てられた。失意のうちに都落ちし、今の会社に入ったが、回りはおっさんばかりで仕事もつまらない。そんな話だった。
レストランを出てターミナルに向かおうとするときには、香織さんはすっかりできあがっていた。
人前にもかかわらず、「中部課長さん、だーいすき」とハグされたり、くずれ落ちそうになったのを支えてあげたり。
支える体は、妻の真帆よりは重い。妻の真帆がやせすぎか・・・抱え上げるとき、胸に触れると、押し返されるような張りのある感触が伝わってきた。
ターミナルに着き、香織さんをベンチに座らせる。高速バスの切符や飲み物を仕入れ、戻ると香織さんがいない。
すぐ戻ってきたが、トイレに行って吐いてきたとのこと。
「もう、吐くまで飲むなんて・・」
「ごめんなさい。中部さんが飲んでくれないんだもの・・」
俺は、高速バスのバスターミナルに車を預けており、駐車場から自宅まで30分ほど運転しなければならないことを説明し、ペットボトルの水を渡すと、香織はうがいをしにトイレに行った。
ベンチに並んで腰掛けてバスを待つ。香織さんは、俺の肩に寄りかかって甘えている。というか、アルコールが回ってへばっているのかも。
時間になり、バスが入ってきた。並んでいる乗客は少ない。珍しいことだ。
俺と香織はトイレに近い最後部右側の座席へ。他には、3、4名ぐらいの常連客が前の方に座ると、バスは発車した。
エンジンの音が軽やかに響く中、香織は俺の肩に頭を預けると寝息を立て始めた。
【高速道路で】
高速道路に入ってしばらくすると、前の方に座っていた客がドライバーに何か語りかけていた。ドライバーはパーキングにバスを入れると、車内放送で言った。
「蛍光灯が切れかかって(点滅していて)、目障りということなので、非常灯だけに減光しますがよろしいでしょうか。高速を降りましたら元に戻します」
バスの車内は電球色の非常灯だけになった。
「あれ、どうしたの??」香織は目を覚ましたようだ。
「電気が切れちゃったんだって」
「そうじゃなくって。レストランで食事をした後の記憶が・・・」
ここまでのいきさつを話した。
「本当にすみません」香織さんはまだ少し呂律が回っていない。俺の顔をじっと見ている。
そして、俺の左手を掴むと、自分の右胸に当てて
「ねえ、お願い・・・」そう言うと、目をつぶって唇をつきだした。
「かっ、香織さん」
「キスしてください。中部さんのこと好きになっちゃった」
「まずいよ、俺には妻子が・・・・」
「でも、お姉ちゃんのことは弄んでいるんでしょ」
「えっ」
【●世間は狭かった●】
「何のことだよ」
「私のお姉ちゃん、間尾直子っていうの。知っているわよね」
そうか・・・姓が違うから全く気が付かなかった。感じが似てるとは思ったが、まさか姉妹だったと…