「あぁっ、ぁんっ、ぁぁあぁぁあっ」「マジでカワイイな、オマエ。反応もイイしよ。今年の新入生めてのアタリだぜ」「はぁっ、ぁあぁんっ、ぁはぁぁあっ」
――ナンダ、コレハ。酩酊した脳が、突然の状況に明確な答えを弾き出せない。
まるで電池の切れかけた電卓の様に、バラバラの思考が脳内に浮かんでは消える。
聞こえて来る声。
その持ち主は間違える筈もない、僕の彼女。
今時の学生にしては珍しい黒髪ロングの僕の彼女。
一緒の大学を目指して頑張って合格した僕の彼女。
今日も新歓コンパに一緒に参加した、僕の彼女。
周りの友人からも羨ましがられる清純派の――そうだ、僕の彼女だ。
「あーヤベ、きも
ちイイ」「はぁぁあんっ、ダメっ、激しいですセンパイっ」
セン、パイ?――おい。おかしいだろ?
なんでセンパイ、いや、コイツは僕の彼女とセックスをしてるんだ!?おかしいだろ!!
レイプか?だとすれば、いや、だとしなくても絶対に許さない。
センパイであっても関係ない。
僕はコイツは許さない。
コイツをボコボコに殴って、彼女を――
「はいっ、別れます……彼とは、別れますっ」
――え?
なぜだ。再び思考の海へと叩き落とされる。
僕はただ彼女を助けようとしているだけなのに、なんでそれを止めるような事を言うんだ?
「……はい、ぜんぜんきもちよくなかったです。センパイに比べたら彼のセックスなんて」
不可解だ。
意味がわからない、わかりたくもない、わかる筈がない。
確かに、彼女は一回もセックスでイった事は無かった。
でも、それでもいつも彼女は "気にしないで" って笑顔で言ってくれたじゃないか。
「それにあたし、彼の様な粗チンよりおっきなペニスのほうがスキだって気づいたんです……
 センパイに、こうやってされて、センパイに教えてもらったんです」
あり得ない!あり得ない!あり得ない!!
これは夢だ、酒で酔っているだけだ。きっと、きっとそうだ。そうに違いない。――でも、それは違った。夢は、僕のその甘い考えだった。
「じゃあ、カレシの目の前でセックスしながら別れのコトバいっとこーか?ハ八ッ!」
頬に落ちて来る、液体。
見上げると、そこには痛い現実。
夢を否定する、現実。
「あんっ、あたしぃっ、あなたとは別れますっ」「理由も教えてやれ、よっ」「ぁあはぁぁあんっ、はひぃっ、理由はあたしがセンパイをスキになっちゃって、
 あなたがキライになったから、ですっ、ふぁあっ、だからもう終わり、終わりなのぉっ」「ハハ、だとよ。ザンネンでした。こういうインランなオンナとオマエは不釣り合いだよ」「ねぇもうイイでしょぉっ?こんな人どうでもイイから早く、早くつづきぃっ」
熱い。
チリチリと、網膜が焼ける様に熱い。
あまりの屈辱に何をする事も出来ない。
立ち上がって、その場を立ち去る事すら出来ない。
僕の意思の"剣"は彼女に奪われ、折られてしまった。
つい数時間前までは味方であった筈の、彼女に。
「――にしてもよぉ、カワイイけどダセえなオマエ」「ふぇ……?」「黒髪で今時ピアスもシてないなんてはやんねーって。
 服もおとなしいしよ。そういう清純派?キライなんだよ、オレ」「ぁんっ、ごめん、なさいぃっ」「今度、オレ好みに改造してやっからさ。店いくぞ」
やめ、ろ。やめてくれ。
これ以上、僕から奪わないでくれ!
声にならないそんな叫びも虚しく、届かない。
染まり切った彼女は、従順に頷くだけ。
あの蕩けた瞳を僕ではなく、コイツに向けながら。
「はぁい、あたしをセンパイ好みに変えてくださいね?」「モチ、かわいくしてやるよ」「ぁあんっ、うれしいぃっ」
崩れていく。
あの日の笑顔が、あの日の思い出が。
そして、この先もある筈だった未来も。
大切な過去と未来が崩れ、崩したい現実だけが残っている。
「くっ、そろそろ出すぜ?」「はいっ、ナカにください、今日は大丈夫な日だからぁっ」「そらよ、と」「ぁぁぁあぁあーーーー!!!」
これが、彼女の絶頂か。
遂に、僕が一度も聞く事の叶わなかった絶頂の嬌声。
他の誰かに教えられるなら、一生知りたくなかった。
艶やかで、淫らな――あぁ、なんと浅ましい事だ。
こんな状況なのに、僕の下半身は反応を見せている。
生理的?
本能的?
勘弁してくれ。
これは種の本能なんかじゃない。
だって僕は、種をつけるその相手を現に失っている。
それなのに、どうして下半身の熱が収まらない!?
「……はぁ、スゴい……まだ、出てるぅ」「おい、見てみろよ。寝たフリしてるオマエの元カレ、オマエのイキ声でボッキしてんぜ?」「イヤ、きもち悪い……」
また、頬に落ちて来る。
これは愛液か、精液か。
違う、これは僕の涙――いや、関係ない。
何でもいい。
もう、どうでもいい。
思考も止めてしまえ。
「んじゃ、そろそろ寝てるヤツラも起きるだろーからホテルで続きな」「はいっ」「今夜は寝かさねーぞ?」「ふふっ、楽しみ……」
遠ざかっていく声、楽しそうな会話。
耳に入って来る不快なそれを遮断する様に、僕の意識は黒に沈んでいった――
侵姦コンパ~その後、彼女の独白~
私は、今も昔も気持ち良い事が大好きです。
だから、セックスの気持ち良さでセンパイと付き合い、あなたと別れる事を決めました。
思えば、あなたの下手なセックスにはいつもウンザリでした。それでも付き合いを続けていたのは恋の名残と言いましょうか。
有りがちに言えば、別れる理由も無いままに関係を続けてきた、ただの惰性でした。
故に、私の心にあなたはずっと存在していませんでした。
私はいつも、何か新しい事を期待していました。
でも、実際は大学生活が始まっても私は自慰に耽りながら満たされない欲望に悶え狂う日々
――そんな時、そう、私にとっては最高に素晴らしい今宵。
センパイが私の前に現れたのです。
センパイのテクやペニスは最高でした。
いつまで経っても上手くならないあなたの百年の恋も冷める様な粗末なモノとは大違い。
センパイのモノを味わった瞬間、私はセンパイから離れられなくなると本能で確信しました。
……この様に、私は周りやあなたが思うような清純派の女ではありません。
普通に汚れていて、普通に自分の欲望を満たそうとする女です。
私は、その清純派というレッテルが大嫌いでした。
あなたは、周りから貼られた私のそのレッテルに酔いしれて本当の私を見てくれませんでした。
ハッキリと言わせてもらいます。
あなたが私の最の彼氏であった事は人生の汚点であり、あなたと過ごした時間は無駄の極みでした。
淡い、くだらない少女の恋心があなたという人間を選んでいました。
そして、そんな自分はもういません。
何故なら、少女の華は散ったのですから――