2008年前半ってどうだった?
景気良かったよな?
その年の4月に大学卒業して就職したんだけど、超売り手市場だったし、バブルの頃は知らんけどその頃に近かったんじゃないか?

でそんな時に俺が選んだ会社がリーマン・ブラザース!
日本法人だけどな。
一応一流大学卒だし英語には自信がある。
内定も証券会社で4社、メーカー2社、全部外資だけどもらってたんだが結果的によりによってなところを選んじまったわけだ。

一年目の年俸なんてたかが知れてる。
もっともインセンティブがあるから結果出せれば金は付いてくるんだけど、転職組はまだしも本当のペーペーにゃ覚えることのが多いぜ。
実際2年目からが勝負だ
と思ってたしな。

まあ知っての通り半年後には会社は無くなっちまったよ。
外資を選んだ時点でリスクは覚悟してたけどなぁ・・・愚痴は言いたかないけど察してくれ!

それで再び就活を始めるんだが正直最は余裕こいてたよ。
会社の上司や先輩は引き抜きもあればコネやツテを使って潜り込んだ人も多かった。
俺には実績は無かったが将来性は武器になるだろうと甘く考えていたよ。
だけど会社が傾き始めてたのはウチだけじゃなかったんだよな。
半年前は超売り手市場だったのが、この年は内定取り消しが問題になるくらいだったんだから。

面接を受ける度に「おまえらのせいで我が社がどれだけの損害を被ったか・・・」全員に言われたぞ。
ちょっと待てって、俺のせいじゃないだろと。
日本法人も責任が無いとは言わんけど、少なくとも新入社員だった俺に言われてもねぇ。
面接すら受けさせてもらえない状況となって、まさか入社半年後から失業保険もらうことになるとは夢にも思って無かったよ。

あての無い就活ってマジで鬱になってもおかしくないぞ!
ここ最近就活したやつなら分かってもらえると思うが、レベル落そうが求人が無いんだよ。
介護だとか一次産業とか確かに人手不足の業種って確かにあるとは思うが、俺の唯一の武器である英語を活かしたいというのもあるんだよね。
つーか俺の売りってそれしかないと思うんだ。

4月になれば・・・そんな淡い期待ももろくも崩れ、失業保険の打ち切りが迫ってきた頃、俺の窮状を見かねた大学時代の友人の実家が経営しているアイリッシュ・パブの店長からウェイターとして働かないかと誘われた。
この店長は友人の兄貴なんだが、俺の身を案じてくれたのと、あと英語力を買われたってのがあった。
ここのアイリッシュ・パブってのは客の半分以上が外国人だから、英語を話せるウェイターってのは重宝されるんだ。
収入の面でも不安があったし、あと何より俺を必要とされてるってのが嬉しかったんで働くことにした。

飲食店で働いてる、もしくはバイトした経験があるやつって結構いるだろ?
外国人の客って最悪だよな。
本当に日本人の客が神様に見えるよ。
シナの人やハングル使う人たちは知らないけど、日本で英語話す外国人は基本的に日本をバカにしてるし見下してるよ。
なまじ英語がわかるだけに聞きたくないことまで耳に入ってくる。
あいつらは日本人の女を便器としか思って無いし、また便器になる女も多いから調子に乗せてるんだよ。
接客業だから愛想良くやってるけどはらわた煮えくり返ってることも多いよ。

で俺が一人の日本人女性を救った話ね。
彼女は同じアイリッシュ・パブで働いているバイトの娘で名前は沙織、大学2年生ね。
まあ普通の大学生なんだけど、便器とかそういうタイプでは無いのは普段の会話などからもわかっている。

でウチの店は一応閉店は23時なんだが、客は0時過ぎまで帰らない。
なんなんだろうね?外国人の客って自分のオーダーした酒を飲み干すまで残っててもいいんだと勘違いしている。
まあそれに慣れちまったってのもあるけど、最は意味分かんなかったよ。
23時以降はオーダーも受けないし片付けもサクサクやってるから、客が居なくなれば5分で店を閉められる状態にはしてるけどね。

それで沙織は終電の関係もあるからラストオーダーが出たら帰ってるんだ。
それを知っている外国人客もいる。
そのうちの二人が沙織を襲おうと話しているのが偶然聞こえた。
一瞬だったけど確かに聞こえた。
こいつらはレイプするのに計画とか一切無い。
どっか連れ込んで無理にでも犯せば泣き寝入りすると思い込んでやがる。
もしかしたら犯罪を犯してるという意識すら無いのかも、自分たちが突っ込めば日本人女は泣いて喜んでると本気で思っているのかもしれない。

俺がその話を店長にすると一気に眼の色が変わった!
放ってはおけないと思うが、その外国人客が本当に実行するかもわからないからとりあえず後を付けようということになった。
残りの作業をバイト君に押しつけて・・・すまん、帰ったら残りは俺たちがやっとくから留守番しててね。

沙織が着替えて店を出ると、二人の外国人客も後を追って出ていく。
俺たちは裏口から出てそのあとを追いかけていくと、店から100mも離れていないところで沙織に話しかけてる外国人客を見つけた。
ほんの一言二言話しただけで、いきなり沙織の腕を引っ張り暗いビルの非常階段に引っ張り込んだ。
「ちょ・ちょっと・・・」明らかに戸惑った感じで言う沙織の口を塞ぐ。
まさか繁華街のど真ん中で犯行に及ぶとは思って無かったので正直焦った。

慌てて3人の入って行ったビルの非常階段を上ると、2階の踊り場のところでちょうど沙織の顔面を平手で殴っているシーンが目に飛び込んだ!
一瞬にして殺意が芽生えたが、俺よりも早く店長のパンチが一人の男の顔面を捉えた!
不意のパンチで鼻血を吹き上げながら吹っ飛ばした後に追撃のパンチを叩き込む店長・・・正直カッコ良かった。

不意の出来事に呆然としていたもう一人だったが、我に返ると慌てて逃げようと階段を下りはじめ、途中にいた俺を付き飛ばそうとするが・・・
慌てていたのと酔っぱらっていたのと両方だったんだろう、自分でコケて階段を転がり落ちて行った。
落ちた時ゴキッというイヤな音が聞こえた。
右足首骨折だったんだが自業自得だろう。

タコ殴り完了した店長が携帯で警察を呼んだ。
その場で事情聴取した後、俺が沙織をとりあえず店まで連れて帰った。
店長はその後警察に行って事情聴取が続いたが、沙織の証言もあり店長が傷害罪に問われることは無かった。

外国人二人は今裁判中。
当然会社もクビで本国に残している奥さんとも離婚するはめになるそうだ。
骨折したほうが後日俺のところに来て、お前のせいで怪我して会社クビになって離婚することになった、慰謝料と治療費をよこせと言ってきやがった。
もちろん「俺のせいじゃないだろ」と言ってやったし、さらに恐喝の容疑で警察沙汰にしてやったよ。

その後なんか自然と沙織と付き合うこととなった。
店長は「ヒーローは俺なのになんで?」と言われたが・・・

もちろん言ったよ
「俺のせいじゃないだろ」