高校3年の6月の修学旅行。事件は2日目の夜のホテルで起きた。
事件を起こしたのは当時、しつこく俺に付きまとっていた女子だった。
名前はナミ子。実は小学校から高校まで一緒の同級生、というか幼馴染みだ。
外見は俺が言うのも変だが、そこら辺にいる女子よりは優れている。
ショートだが、サラサラの髪の毛。パッチリした瞳。豊満なバストにサラッと細くて長い足。キュッと締まった腰と。周りの男子から結構モテててもいたようだ。
しかし、俺よりかっこいい奴なんてゴロゴロいたのにナミ子は俺にしつこく寄って来た。

大勢の人がいる前で体を思い切り密着させたり、いきなり手
を握ってきたり、胸を触らされた事だってあった。
そのため、周りからは女子からはいやらしい目で、男子からは冷ややかな目で見られるようになった。
もちろん、嫌だったから何度も俺に近付かないでくれと言った。でも、アイツは聞かない。
中学時代は早くナミ子から離れたくてしょうがなかった。

そんな生活が続いても時は流れ、高校に進学した。ナミ子は頭良かったから俺の高校にはこないだろうと思って安心していた。
…ところがアイツは他のレベルの高い高校を捨てて、俺と同じ高校に進学していたんだ。
でも運がいい事にクラスは違った。一応8クラスまであったから。
1年の時は幸せだった。さすがにナミ子も俺に近付いてくる事はなかった。新しい友達もたくさん出来て本当に幸せな毎日が続く…はずだった。

最悪な事に、翌年のクラス替えでまた同じクラスに。
また中学と同じ状況に戻ってしまった。友達も変な目で見るようになっていった。
ナミ子は俺をあの頃はからかっていたのかもしれない。不思議な事にアイツの周りには友達はたくさんいたし、俺と違って減っていくようにも見えなかった。
俺はナミ子を恋愛対象には考えていない。確かに見た目は良いが、あそこまでしつこいとさすがにウザかった。

2年の時は耐えた。幸運にも俺の通ってた高校は3年にもクラス替えがあるから俺はそれに懸けた。もうナミ子と少しでも離れるにはそれしかなかった。
…しかし、祈りは届かなかった。高校最後の1年もナミ子と同じクラスで過ごす事になった。
すごく仲の良かった友達には、「付き合ってるって事にすれば、みんなも変な目で見なくなると思うよ。」と言われた。
確かに変な目で見る人は減ると思うが俺はどうなる。好きでもない女と付き合いたくない。当然だ。ますますくっついてくるのに耐えれる訳がない。

色々と悩んでるうちに、学校では3年全員で修学旅行に行く計画を立てていた。
修学旅行はうまくやり過ごせると思った。泊まる部屋は当たり前だが違うし、班別行動もクジで決めた結果、別々になったからだ。

修学旅行は楽しかった。高校で1番楽しめた。…1日目までは。
2日目に悲劇が起きる。夜、班別行動が終わり部屋で休んでいた。同じ部屋には友達の田辺という男と2人で泊まっていた。
田辺は俺が部屋の室長になると、夜の室長だけで行われるミーティングに出にくいだろうと気を使ってくれて、自分から室長になってくれた。
すごく嬉しかった。しかし、それが逆に悪かったのかもしれない。

夜の8時。ミーティングが行われている時、俺は部屋でくつろいでいた。
30分程度で終わると田辺から聞いていた。俺は何もせず、ずっと時間が流れるのを待った。
すると8時30分頃だった。扉を叩く音がした。
「お?い!開けてくれ。」
田辺の声だ。急いで扉を開けに行った。
「ミーティング終わり?」
田辺は慌てた様子だった。
「先に風呂使っていいよ。長引きそうだからさ。9時超えるかもな。明日の予定が合わなくなって今、班長も集めてまた作り直してんだ。」

聞けば、翌日に予定していた場所が使えなくなったそうだ。それで、緊急のミーティングが行われるようだ。田辺は班長でもあったから。
「じゃあ…先に使わせてもらうわ。」
「おう。じゃあ行って来る。」
急いだ様子で田辺は出て行った。田辺を見送ってから俺は彼に言われたとおり、先に風呂を使う事にした。
風呂場とトイレは同じ部屋に設置されている。着替えをもって、風呂場へ行き、服を脱いでシャワーを浴びた。
すると数分後、シャワーの音でよく聞こえないが、扉を叩く音がする。田辺が忘れ物でも取りに戻ったのかなと思い、シャワーを止め適当に水分を飛ばしてから体操着を来て、扉に向かった。
ガチャ。扉を開けるとそこには奴が立っていた。

ナミ子だ。
「な、なんだよ。なんか用?」
俺の顔を見るとニヤリと笑って中に入って来た。
「お邪魔しま?す!あれ?隆史1人?」
慌ててナミ子に帰るように言った。まだ体も完璧に乾いてないし、髪の毛に至っては雫が落ちるほど濡れている。
「馬鹿!早く帰れって!」
「乾かしてくれば?待ってるから。」

9時になれば、担任が各部屋に点呼を取りに来る予定。ただ今の時刻は9時10分前。旅行に行く前に先生達からキツく言われていた。男女の部屋の行き来は厳禁だと。
あーだこーだ言ってるうちに、時間が経ち後ろから扉を叩く音がした。
「隆史、開けてくれ。」
担任だ。

マズい。そう思って、鍵が付いている風呂場にナミ子を入れて、俺は担任がいる入口の扉を開けた。
「すまん。風呂入ってたのか。田辺はまだ来てないな。ではまたあとで来る。
…ん?シャワーの音がするが、出しっ放しにしてたのか?」
そんなはずはない…。さっきシャワーは止めてきたはず。でも風呂場にはナミ子がいる。まさか…!
「急いで来たので止めるの忘れてました…。」
嘘を言った。担任が帰った後、すぐさま風呂場に戻った。しかしその中にいたナミ子は先程とは全く違う姿だった…。「な、な、何やってんだよ!!。」
ナミ子はシャワーを浴びていた。もちろん全裸で。

「ごめ?ん。まだシャワー浴びてなかったから。部屋には戻れないし、今浴びておこうと思って。」
コイツ今の状況が解ってんのか?まだ田辺も風呂を使ってないし、また担任も来る。ナミ子と同じ部屋の奴もきっとナミ子を探している。
…今ナミ子がここにいるってのがバレたら終わりだ。
あの時はナミ子の裸を見とれてる暇などなかった。とにかくどうにかしないという事だけを考えてパニックになっていた。
「隆史も一緒に浴びようよ。まだ途中だったんでしょ?私が洗ってあげるから(笑)」
なんでコイツは笑ってられるんだ?見つかったら俺もお前も終わりなんだぞ?

時計を見てないから分からないが多分9時15分は過ぎている。早くしないと田辺が帰って来てしまう。
怒鳴ってもナミ子は絶対に言う事を聞かない。分かっている事だ。だから俺は頼みまくった。
「頼むから出てくれ。田辺が帰ってきたらどうするんだよ。」
「え?田辺君も一緒に入ればいいじゃん。」
何を言っても聞こうとしないナミ子に遂にはキレてしまった。
「お前…マジでいい加減にしろよ…。俺をからかってそんなに楽しいか?俺はお前の事なんか何とも思ってねーんだよ。
早く出ろ…。出なきゃ力づくでも出すぞ。」
さっきまであざ笑うような目で俺を見ていたナミ子に変化が。
「ごめん…。」と呟くとシャワーを止めて、船から出てタオルで体を拭き始めた。

やっと聞いてくれたか…。安心したのも束の間、今度は入口の扉から田辺の声が聞こえた。
「お?い!隆史、俺だ俺。開けてくれ。」
最悪のタイミングだ。せっかくナミ子を今、帰すところまできたのにこれでは帰そうにも帰せない。トイレを借りに来たなんて言い訳は通用する訳ないし。
ナミ子の髪の毛はバシャバシャに濡れている。シャワーを浴びた事は一目瞭然だ。

マズい…。マジでマズい…。慌ててどうしようか考えた。とりあえずナミ子に風呂場から出るなと言って入口の扉を開けた。
田辺は疲れた顔をして部屋に入って来た。
「あ?長かった…。隆史もうシャワー浴びたのか。じゃあ次、俺浴びるな。」
ダメだ!絶対にダメ!見られたら終わりだ。

「いや、ちょっと待ってくれ。まだ終わってないんだ…。」
「え?でも、お前もう着替えてるじゃん。」
どうにかして風呂場に戻らないと。必死に考えて出した結果、今日着た服を持ってくるの忘れた。これを理由にした。
早くしてな、田辺に言われて俺は風呂場に戻った。
入るなり、申し訳なさそうな顔をしているナミ子に小声で怒った。
「馬鹿!どうすんだよ!田辺はシャワー使いたいって言ってるし。でもそうすれば確実にお前が見つかる…。
バレたら俺もヤバい。アイツにだけ嫌われるのは絶対に嫌だぞ!」
外ではいつまで経っても出てこない俺に田辺は痺れを切らしていた。
「おい!隆史!早くしろよ。服取りに行くのになんでそんなに時間が掛かるんだよ!」

もうこの状況から逃げる事は100%不可能だ。俺は覚悟を決めるしかなかった。
「言うしかないな。お前はここにいろ。田辺には俺から言う。」
風呂場から出た。田辺は不思議そうな顔で俺を見ていた。「着替えは?どうした?さっきから何か変だぞお前?」
「…驚かないでくれ。俺は何もしてない。全部やったのはコイツだから。」
事情が全く理解できない田辺は更に不思議そうな顔をしていた。
「…中に入って。」
田辺は言葉を失って俺を見た。
驚くのも無理はない。いつも学校でベタベタくっついてる俺達が自分がいない間にシャワーを浴びていたのだから。俺もナミ子も髪が濡れている。最初は一緒に浴びたのだと田辺は思っていたようだ。
「お、お前…!隆史、ナミ子ちゃんと一緒に浴びてたのか!?」

「へ?ち、違うよ。俺が浴びてる最中にコイツがいきなり来て…。」
今まであった事を全て話した。最初はあんなに驚いていた田辺も除々に落ち着きを取り戻していった。
「…とりあえず分かったよ。まったく…何やってんだよ。俺じゃなかったらどうすんだよ。」
田辺は今あった事を誰にも言わないと約束してくれた。助かった…。田辺じゃなかっからどうなってた事か…。
とにかく、ナミ子の髪の毛を乾かしてから部屋に戻そうという事になった。これで全てうまくいく。そう思っていたが、俺は1つ大きな事を田辺に言うのを忘れていた。

髪の毛をドライヤーで乾かし櫛でとかした。これで風呂に入った事は分からない。
ナミ子を帰したんだ。これで一件落着かと思いきや、最悪の事が起きた。廊下から担任の罵声が聞こえたのだ。
「コラ!!平野、待て!今どの部屋から来たんだ!?」
俺と田辺に衝撃が走った。直ぐさま俺達も廊下に出た。そこには腕を掴まれているナミ子が。
チラッとナミ子がこちらを見ると担任も俺達の方を見た。…かなり怒っている。俺達3人は部屋に戻され、今まであった事を全て話さなくてはいけなくなった。最も恐れていた、俺が風呂場にいないのに、シャワーが使われていた。これもバレてしまった。
風呂場の2袋しか用意されていなかった、シャンプーとボディソープの袋の封が切られていた事が証拠になった。田辺はまだシャワーを使っていないのに、2袋とも使われているのおかしいから。

田辺は一生懸命、俺達をかばって先生を説得してくれたが、あまりにもこちらの分が悪い。
結局、田辺を除く俺とナミ子は淫らな行為をしたとして無期停学。翌日は俺とナミ子はホテルで自習。そして、その日の朝礼で俺とナミ子がした事は学年のみんなに伝わってしまった。先生が言ったのだ。
学校に帰ってから無期停学スタート。毎日、反省分を書く日々。親にもバレたし本当に今まで生きてきて1番最悪な出来事だった。10日間で無期停学は終わったが、俺は学校に行かなかった。…行けるはずがない。

田辺から毎日のように、励ましのメールや電話が着たが、一方でクラスの人達からは俺を悪く言うメールがたくさん着た。
…もう学校には戻らない。戻りたくない。学校を辞める事にした。ナミ子だってそうだろう。あの事件から1か月後、久し振りに学校に行った。みんながいない休日に。
荷物をまとめ、退学届けを出した。校長は3年なんだから残った方がいいと言ったが、残る事なんかもう出来なかった。

学校を辞めた後。毎日家に閉じこもる日々が続いた。俺の退学を知ったのかナミ子が毎日、俺に謝りに来るようになった。
しかし、アイツの顔を見るのが嫌で来ても「帰れ。」と言い続けた。家に1時間いた事はないと思う。その前に俺が帰したから。

すると俺は妙な事に気付いた。いつも私服でうちに来るナミ子が制服を着ていたんだ。
何も聞かずに帰したが、妙な胸騒ぎがして田辺に連絡を取った。
「ナミ子って学校辞めたんだよな?」
電話で聞くと田辺は黙り込んでしまった。
「答えてくれ。辞めたんだろ?」
「いや…。辞めてない。まだ学校にいるよ。」
この一言に俺の心に憎悪の心が芽生えた。

「やめてない…?誰のせいで俺は学校にいられなくなったんだと思ってんだよ…。」
アイツは平日でも私服を着ていた。つまり学校の帰りは、制服から私服に着替えていたという事になる。俺に学校を辞めたと嘘をつくために。
あの日、制服で来たのは私服に着替え忘れたからだろう。
「許さねぇ…。絶対許さねぇ…。俺の人生を目茶苦茶にしやがって。ナミ子…!
犯してやる。徹底的に犯しまくってやる。」

次に会う時、俺はナミ子を犯すと心に決めた。向こうが拒否ろうが、知った事ではない。
どんな事をしても、絶対にやると決めた。

そう決めた次の日。何も知らずにナミ子は俺の家に来た。もちろん私服姿で。学校の帰りだったから4時すぎ。奇跡的に家の人は誰もいなかった。絶好のチャンス。
また私服か…。もうバレてんだよ。今日は帰さねーぞ。ナミ子…。
呼び鈴がなり、玄関に行った。あの時は夏だったから、Tシャツにジーパンの簡単な格好をしていた。
「入れよ。」いつもより早く部屋に入れた。時間は有効に…と。

部屋に入って直ぐさま計画を実行した。いきなり襲うのではなく、まず恐怖を味わせた。
俺はベッド、ナミ子は床に座らせた。まずは学校について。
「お前さ…。学校行ってんだろ?」
「え?行ってないよ。だって制服着てないじゃん。」
事情を全て知っているので、必死に嘘をついているナミ子が哀れに見えた。
「そのわりには、うち来るの遅いよな、毎日。じゃあ明日は午前中に来てくれよ。」

少しナミ子は戸惑っていた。まさか、バレてる…、と思ったのかもしれない。
「午前中は無理だよ。私だってする事あるし。昼からはし、仕事探しに行ってるんだ。だからこの時間になっちゃう訳。」
ナミ子の必死さに思わず笑いが込み上げてきた。
「アッハハハハハ!!お前マジ、ウケルな。仕事探し?ハハハ!」
ナミ子はポカンとした顔で俺を見ていた。
「お前、学校辞めてないんだろ。もう知ってるから。田辺に全部聞いた。」
ナミ子の顔が曇った。急にオドオドし始めた。


復讐1  2