オレが会社に入社して5年目の時、短大を卒業したばかりの由紀恵がうちの課に配属された。
まだ二十歳そこそこの由紀恵は、男ばかりの職場にとって花のような存在だった。
顔は普通よりちょっと可愛いくらいだったが、スタイルが抜群に良かった。
特に大きい胸と、くびれたウエストのギャップがたまらなかった。
当然彼女はチヤホヤされた。
競争率は高かったが、オレは猛烈にアタックした。
その甲斐あって、2ヶ月ほどしてオレと由紀恵は付き合うことになった。
ただ、一つだけ由紀恵には心配な事があった。
というのも、彼女は酔うと場の雰囲気に流されやすくなる性質だったのだ。
本人も「「飲むとHな気分になる」と言っていた。-----
初めて由紀恵を抱いた時も、二人で飲みに行った帰りだった。
もちろん本人もこれじゃいけないと自覚しているらしく「信用できる人以外とは飲まない」と言っていた。
実際会社の飲み会でも、酒は一切口にしなかった。
ちなみに由紀恵の体は想像以上だった。
若くて白い肌、仰向けなのに形の崩れない乳房。
しかも由紀恵は感度もよかった。
まあ酒の力もあったと思うが。
しばらくすると、オレと由紀恵は社内で公認の仲となった。
隠す必要もなかったし、なによりもオレが安心したかった。
結婚もお互いに考えていた。
仕事も顧客がついてきたし、何もかもが順当にいっていた。
そう思っていた。
というのも、この頃からうち課の木沢部長が、由紀恵に対してセクハラまがいの行為をしていたのだ。
(木沢はがっちりとした体躯に浅黒い肌をしていた。
昔、柔道をしていたらしい。
そして、42歳という若さにして部長職に就くほどのやり手だった。
)当然オレはこの事を知らなかった。
まあセクハラと言っても、せいぜい肩に手を置いたりする程度で、あとは「食事にでも行かないか?」ぐらいのものだったから、由紀恵も油断をしていたらしい。
由紀恵が入社して、半年がたった初秋。
その事件がおきた。
それは社員旅行で山梨の温泉に行った時のことだった。
旅行当日、3台の観光バスで現地に向かった。
気の抜けたような名所めぐりを終えると、旅館でお約束の宴会が待っていた。
総勢60人ほどの宴会だったので、場も騒がしかった。
オレは宴会場に入ると、由紀恵の姿をさがした。
(オレと由紀恵は別々のバスに乗り込んでいたから、まだほとんど話をしていなかったのだ)すぐに末席にいる由紀恵を見つけた。
浴衣姿が色っぽかった。
しかし彼女は困ったような顔をしていた。
周りで騒ぐ男連中が原因だろう。
それを見て一瞬胸騒ぎをおぼえたが、その連中も、由紀恵とオレが付き合っている事、そして彼女が酒を飲めない事を知っていたので、無理にすすめる奴はいないだろうと思っていた。
オレも次々に酒を注がれて忙しく、なかなか由紀恵の方に行けなかった。
そうこうするうちに旅の疲れも手伝い、あっという間に酔いがまわってつぶれた。
オレは気づくと自分の部屋で寝ていた。
時計を見ると午前1時を回っていた。
まだ、頭がグラグラしていた。
そばで同僚が麻雀をしていた。
「おー復活したか」「お前もやるか?」と声をかけられたが、断った。
そのままぼーっとしていると、ふいに由紀恵の事を思い出した。
「由紀恵とかもう寝たのかな?」同僚に聞くと、「ん、由紀恵?そういえば途中で気持ちが悪くなったとか聞いたぜ」「めずらしく飲んでたからな」と返ってきた。
「あいつ、酒飲んでたの?」一瞬ドキリとした。
でもその後、旅先だし、普段、あまり会うことのない課の女子事務員がいるから、付き合いでちょっと飲んだんだろうと考えた。
だが一応心配になったオレは、由紀恵の部屋に向かった。
(うちは女子事務員が少ないので、彼女たちは一人部屋を与えられていた)部屋に着くと、鍵がかけられていた。
やっぱり寝てるのか・・・と思った。
だがこの時、ちょっとムラムラしてたオレは「起こしてやっちゃおうかな」と思い、しばらくノックを続けていた。
すると、隣の部屋のドアがガチャリと開いた。
そこにいたのは木沢だった。
「何時だと思ってんだ?うるせーぞ」と怒られた。
そして「もう由紀恵寝てんだろうし、お前も寝ろ」と言われた。
さすがにバツが悪かったオレは、謝ったあと部屋に戻り、やる事もないのでそのまま寝た。
もし、木沢が由紀恵にセクハラをしてると知っていたならば、無理やりにでも木沢の部屋に入っただろう。
だがこの時はそんな事思いもよらなかった。
部長だから一人部屋なのもおかしくないし、それが由紀恵の部屋の隣だとしてもたまたまだろう。
この時のオレは、まさかその部屋に、由紀恵がいたとは夢にも思わなかったのだ。
次の日から由紀恵の様子がおかしかった。
話しかけても生返事だし、すぐに他の事務員のところに行ってしまう。
なんかよそよそしかった。
それでもこの時は、「昨日ロクに相手もしなかったしすねてるのかな?」位にしか思ってなかった。
だが、旅行が終わったあともその態度は続いた。
それはよそよそしいというか、ハッキリ言えば避けられている様な感じだった。
食事に誘っても断られ、仕事以外の事は一切話さない。
そんな状態が一週間も続いた。
いよいよおかしいと思ったオレは、「最近様子おかしいぞ?今日の夜、おまえんち行くから。いろよ!」と、半ば強引に約束をした。
しばらくの間があった後「・・・分かった」と由紀恵が返事をした。
夜、オレは取引先から自分の家に直帰し、支度をして由紀恵の部屋に向かった。
9時頃つくと、由紀恵の部屋は明かりがついていた。
チャイムを押すと、由紀恵が出てきた。
やはり様子が変だった。
とりあえず部屋に入ると、単刀直入に聞いた。
「・・・あのさ、なんかあった?」すると、思いがけない事を言われた。
「・・・わたしを、フッてください」そして由紀恵はペタンと座って泣き出した。
まったく意味が分からなかったオレは、「なに言ってんだよ?全然意味わからねーよ」と言った。
由紀恵は「わたし、あなたの彼女の資格、ないです」「別れてください」と泣きじゃくるだけだった。
この時のオレは、最悪な事を想像していた。
いや、実はうすうす気づいていた。
最近の様子を見て、たぶんあの日、由紀恵の身に何か起きたのだろうと。
オレは何があっても動揺しないよう自分に言い聞かせた。
小一時間もすると、由紀恵はポツリポツリと話し始めた。
それは、あの旅行の晩、木沢にされてしまったという内容だった。
覚悟していたとはいえ、相当ショックを受けた。
オレの由紀恵が?あの木沢に?凄まじい怒りがこみ上げてきたが、由紀恵の手前、ぐっと堪えた。
その後オレは、「由紀恵を愛してるし、結婚もしたいと思ってる。この気持ちはどんな事があっても変わらない」「だから、どうしてそうなったか全部聞かせてほしい」と言った。
何度も何度も「一回だけの過ちなら、気にしない」と繰り返した。
気にしないというのは嘘だけど、由紀恵を失いたくないと言う気持ちは本当だった。
最初は首を振るだけだった由紀恵が「木沢が知っていてオレが知らないというのが我慢できないんだ」「オレの事を好きだと思っているなら、教えてほしい」「・・・覚悟はできている」と言うオレの言葉に、徐々にだが、あの晩のいきさつを話し始めた。
それは要領を得ないしゃべり方だったが、詳細をまとめると以下のようになった。
(最初に断っておくと、書かれている内容の半分以上はこの日ではなく、後日聞きだした)あの日、宴会でたくさんお酒を飲まされた。
特に部長がすすめてきた。
しばらくすると気分が悪くなった。
部屋に戻ろうとすると部長が介抱してくれた。
歩いていると、さらに酔いがまわってきた。
部屋に着くとトイレで吐いた。
その時も部長が背中をさすりながら「大丈夫か?」「飲ませすぎて悪かったな」と声をかけてきた。
吐き終わると、今度は頭がクラクラしてきて、ベットに倒れこんだ。
よく覚えてないけど、ベットまでは部長が運んでくれた気がする。
「苦しくないか?苦しくないか?」としきりに聞く部長に「大丈夫です、大丈夫です」と答えてた。
気づくと浴衣の前がはだけていて、オッパイがでていた。
Tシャツとブラがいつのまにか上にずらされていた。
「こうした方が苦しくないだろ?」と部長に言われた。
とっさにそれを隠そうとすると、押さえつけられた。
そして無理やりキスをされた。
頭がぼーっとしてたから分からなかったけど、しばらくして裸にされてた。
自分でも信じられなかった。
部長がしつこくオッパイを揉んできた。
形が変るくらい強くされて、痛かった。
いつのまにか下のほうを指で愛撫されてた。
すごく抵抗すると、またキスされて、もっといじくられた。
部長が足首を掴んできて、むりやり足を広げられた。
そしてアソコを舐めてきた。
抵抗したけれど力では全然敵わなかった。
ずっと舐められてるうちに、頭がボーっとしてきて、何がなんだか分からなくなってきた。
いきなり部長が上にのしかかってきた。
びっくりして押しのけようとしても「いいから、いいから」と取り合ってくれなかった。
そして、部長が入ってきた。
何回も「いや!」って抵抗したけど、その度に強く突かれた。
それを何度も繰り返されてるうちに、抵抗できなくなってた。
「腰を動かせ」って言われた。
ぼーっとしてて、ちょっとだけ動かした。
部長はさらに興奮したみたいだった。
しばらくすると、部長がいっぱい動き出した。
頭が真っ白になった。
なんにも分からなくなった。
気づいたら、部長が私にくっついたまま動かなくなってた。
ちょっと恐くなって「・・・(コンドーム)つけてますよね?」って聞いたら、「出しちゃったよ、中に」って言われた。
パニックになって部長の下で暴れた。
だけどやっぱり押さえつけられて、唇をふさがれた。
そのうちに入ったままだった部長が膨らんできて、また始まった。
されてるうちに、また頭にモヤがかかってきた。
だんだんどうでもよくなってきた。
その時ドアを叩く音がした。
部長が私の口を押さえると「そのまま」って言った。
しばらくして「やっぱり寝てるんじゃない?」「起こしちゃ悪いよ」ってドアの外から声が聞こえてきた。
多分、○○さんと××さん(他の女子事務員)だったと思う。
これで私の意識がハッキリしてきた。
その声が遠ざかると「部長、もうやめてください。この事は内緒にしておきますから」って言った。
すると「一回も二回も同じだろ。それに、ばれて困るのはキミも同じなんじゃないの?」って言われた。
その時、あなたの顔が浮かんできた。
本当に申し訳ないと思った。
「約束する。今晩だけだ。今晩だけ、オレの女になってくれ」って部長が言った。
私が返事をする前に、また動いてきた。
何度も何度も突かれて、その度に「いいだろ?いいだろ?」って言われた。
何にも考えられなくなって「・・・本当に、今晩、だけですか?」って答えてた。
わたし、どうかしてたんだと思う。
「本当だよ」って言われて、キスをされた。
「でもここじゃ落ち着かないな」っていうと、部長がわたしから抜いた。
そして「オレの部屋に行こう」「角部屋だから静かだしな」って言われた。
浴衣を着るとき、アソコから部長の精子がでてきて「取り返しのつかないことになった」って改めて思った。
そして「もう後には戻れない」とも思った。
浴衣を着てたら強引に引っ張られて、部屋を出た。
廊下に出たら、帯がほどけて浴衣の前がはだけた。
下着もつけてなくて、下は裸だった。
気づくと部長がじっと見てた。
そしてわたしのアソコに手を伸ばしてきて、指を入れてきた。
”もし誰かにみられたら”って思って、部長の手を両手でおさえた。
でもびくともしなかった。
そのまましばらくいじられてた。
そして耳元で「"わたしを抱いてください"って言えば離してやるよ」って言われた。
嫌だと思ったけど、誰が来るか分からないから「部長、私を抱いてください」と言った。
言った後に、お腹の中がじわっとした。
わたし、いやらしい女だなって思った。
部長が自分の部屋を開けると「先に入れ」って言った。
中に入ると暗かった。
後ろで鍵のしまる音がした。
玄関なのに、そのまま浴衣の後ろをまくられて、立ったまま挿れられた。
後ろからオッパイを揉まれて、いっぱい突かれた。
たぶん、声が出てたと思う。
しばらくそのままされてたら、部長がいきなり首筋を噛んできた。
そのとき、膝がガクガクして立てなくなった。
部長に「イッた?」って聞かれてうなづいた。
「浴衣を脱いで、ベットに仰向けになれ」って言われた。
言われたとおりにした。
そしたら部長が部屋の明かりをつけた。
とっさにオッパイとアソコを隠したら「その手どけろ。足も開け」って言われた。
躊躇ってたら「はやくしろ!」ってちょっと怒鳴られた。
ドキっとして、そうした。
そのまましばらくなにもされなかった。
目をつぶってたから分からないけど、たぶん、わたしの裸を見てたんだと思う。
その後オッパイを強く握られた。
先っちょ(由紀恵は乳首を先っちょという)も吸われた。
しばらくして、アソコに指を入れられた。
何回も出し入れされた。
「腰を動かせ」って言われて、動かした。
だんだん指の動きが激しくなってきて、わたしもいっぱい動かした。
軽くイキそうになった時、指を抜かれた。
その後「もっと足を開け」って言われて、足を開いた。
そしたら指でアソコを開かれて、中を見られた。
すごく恥ずかしかった。
しばらくしたら、部長が耳元で「"オレのペニスを入れてください"って言ってみろ」って言った。
なんか、言いづらくてだまってた。
そしたら恐い感じで「早く言えよ」って言われた。
「部長の、ペニス、入れてください」って自然に言ってた。
またお腹の中がじわじわした。
言い終わったら、一気に貫かれた。
いきなり奥に当たって、お腹の中がしびれた。
奥にあたるたびに気が遠くなった。
また膝ががくがくした。
声も出した。
なんか自分の声じゃないみたいに感じた。
「もっとほしいんだろ?」って言われて「もっとください」と繰り返した。
そのあと激しくされて、イキそうになった。
「中に出すぞ」って言われた。
「中に出してください」と答えた。
もうどうでもよくなってた。
一応安全日だし、さっきも出されたし。
部長のペニスが中で膨らんできたのが分かった。
「もういいから早く私の中に出してください」って思ってた。
この時、わたしの部屋のドアをノックする音が廊下から聞こえてきて、部長が動きを止めた。
そのまましばらく様子を伺ってたけど、「ちょっと見てくるから静かにしてろ」って言われた。
その後部長が浴衣を着て玄関まで行った。
なんかこの時、急に醒めてきて、現実に戻された気がした。
恐くなって布団をかぶって耳を塞いでた。
ちょとしたら玄関から部長が戻ってきて「四つん這いになれ」って言った。
さっきまでの気持ちなんて吹っ飛んでて「もうやめましょう」って言った。
でも聞いてくれなくて、無理やり後ろ向きにさせられて、挿れられた。
そのままいっぱい突いて来た。
わたしは早く終わらせて、自分の部屋に戻ろうと思って、動きを合わせた。
声を出せって言われて「由紀恵で早くイってください」って言った。
でも部長なかなかイカなかった。
ただ、何回も何回も突かれただけだった。
そしたら・・・ごめんなさい、わたしのほうがまたボーっとしてきて・・・。
結局、わたしバカなんです。
そのあと、すごい大きい声で「もっと尻あげろ!」って言われた。
びっくりして、お尻をあげた。
そしたらお尻を掴まれて、奥まで入れられた。
頭が真っ白になって、いっぱい声をだしたと思う。
すごく激しくされて、イッた。
その後、部長のペニスが由紀恵の中でビクンビクンって跳ねた。
(中に出されちゃってる・・・)って思った。
部長は出した後も後ろから、オッパイをしつこく揉んだり、キスをしたりしてきた。
その後仰向けにされて、足を開かされた。
そしてお腹を押された。
アソコから精子がドロってでてきた。
部長が何か言ってたけど、よく聞こえなかった。
ただ呆然としてた。
しばらくしたらシャワーの音がしてきて、部長がいないのにはじめて気づいた。
足を閉じたら、また出てきて、悲しいとか後悔とかそういうので、泣いた。
しばらくして部長が出てきた。
そして「シャワー浴びる?」って言われた。
無視してたら「悪かったよ」「機嫌直してよ」って言ってきた。
もう何も聞きたくなくて、布団にもぐりこんでうつぶせになった。
しばらくいろいろ声をかけてきたけど、そのうちに黙り込んだ。
わたしは布団の中から「部屋に戻ります」って言った。
そしたら無言で下の方だけ布団をはがされた。
お尻が表に出た。
それをグイって持ち上げられて、突き出すような形になった。
頭を持ち上げようとしたら、布団ごと手で押さえつけられた。
またやるのかって思った。
後ろから部長がが挿れてきた。
絶対感じるものかと思って布団を噛んだ。
でも、悔しいけどまた響いてきて、感じてしまった。
布団を全部はがされて、後ろからオッパイをギューって掴まれた。
痛くて「やめて、やめてください」って言ったら、「それじゃ言う通りにしろ」って、掴まれたまま起こされた。
部長に背中を向けて抱っこされてるような形になってた。
その後「動け」って言われて、部長がオッパイを掴んだまま上下させた。
そのままだとオッパイが痛いから、夢中で自分の体を上下させた。
そしたらまた感じてきて、声をだしてた。
部長も下からいっぱい突いて来た。
「オレの、女になれ!女になれ!」部長が苦しそうに呻いた。
でも、それだけは絶対ダメだと思って、「ダメ!ダメ!」って言った。
しばらく部長は「いいから言え!」ってしつこかったけど、そのうちあきらめたみたいで、わたしの腰を掴んで激しく動いてきた。
その後、やっぱり中に出された。
終わったあと、「もうちょっといろ」って言われた。
でも今度は部長がぐったりしてたから、浴衣を着て部屋に戻った。
そしてシャワーを浴びようと思ってバスルームに入った。
鏡を見てショックを受けた。
髪とかぐちゃぐちゃだし、オッパイとか青アザついてたし・・・。
特にアソコがひどくて、部長の精子がいっぱい出てきた。
それをみて「妊娠したらどうしよう」って恐くなった。
シャワーを浴び終わって、ベットに転がった時、あなたの事が浮かんできた。
本当に申し訳なくて、自分が情けなくて、いっぱい泣いた。
そして、別れてもらおうって思った。
捨ててもらおうって思った。
そしたら少しだけ気が楽になって、いつのまにか寝てた。
「・・・そして、今に至ります」と、由紀恵は締めくくった。
また泣き出すかと思ったが、全部話をして楽になったのか、意外と普通の顔をしていた。
オレはまず最初に「・・・(妊娠)検査、しないとな」と言った。
すると「・・・昨日(生理)来たから、大丈夫・・・」と答えた。
これでちょっと安心したオレは「すごいショックだったけど、でも、よく話してくれたね」と言った。
「わたし、すごいバカです」と、うつむいた。
オレはユキコを抱きしめて聞いた。
「もう、二度とこんなことないだろ?」「絶対にしない!」由紀恵は顔を上げてオレに言った。
それでもう、今回は終わりにしようと思った。
「だったらこの件は、お互い全部忘れる事。いい?」由紀恵は返事の代わりにまた泣き出した。
オレは彼女の髪をなでながら、大事な事を思い出し、付け加えた。
「あと・・・おまえ、絶対禁酒な」オレは週明けの会社終わりに、「ちょっと話があります」と、木沢をとあるスナックに呼び出した。
(由紀恵は会社を休ませた)そして「由紀恵から全部話を聞きました」と告げた。
いつも冷静な木沢が、かなり動揺していた。
多分、あの夜の事を、由紀恵がオレに言うはずがないと思っていたのだろう。
「・・・すまん。どうかしてたんだ。許してほしい」木沢は素直に認めた。
オレはあらかじめ用意していた言葉を口にした。
確かに話を聞いて、はらわたが煮えくり返った事。
もちろん怒りは今も収まっていない事。
だが、たとえ酔っていたとはいえ、由紀恵にも多少なりとも非がある事。
由紀恵は今回の件を非常に後悔している事。
そして、オレはそれを許そうとしている事。
だから、部長も今回の件は一切忘れてほしい事。
「もちろんだ。本当にすまなかった」木沢は平謝りだった。
そして、ちょっとほっとしたような表情になった。
そのまま続けた。
「で、これはオレ個人の疑問なんですが、答えてくれますか?」木沢はうなづいた。
「なんで避妊しなかったんですか?」途端に言葉に詰まる木沢。
答えなんて決まってる。
ただ、自分の欲望のはけ口として、由紀恵の体を使っただけなのだから。
「妊娠したら、傷つくのは誰ですかね?由紀恵ですよね?」木沢は「すまなかった」とうつむいた。
オレはその顔に向かって、「オレ、それが一番許せねぇから」と、グラスに入っている水割りを木沢の頭にぶっかけた。
店内にいた人間が一斉にこちらを見た。
全然気にならなかった。
木沢は、うつむいたままだまっていた。
「もし今後、少しでも由紀恵に近づいてみろ。殺すから」そう言ってオレは店を後にした。
オレは思いのほか冷静だった。
木沢は結局だまったままだった。
そして4年後の現在。
結果から言うと、由紀恵も木沢も、もうオレの職場には居ない。
木沢はこの半年後、体調を崩して入院してしまったのだ。
実は肝臓を悪くしてたらしい。
オレと由紀恵は「木沢のお見舞いにさ、一升瓶でも持って行こうか」なんて笑いあってた。
もうこの頃のオレ達にとって、木沢の存在なんてこの程度だった。
もちろん木沢が由紀恵に近づく事は、あの旅行以来一回もなかった。
木沢は退院後も、激務に耐えられないと会社に判断され、地方の支店に異動した。
それっきり彼とは会っていない。
由紀恵は、1年ほど前に会社を退社していた。
何をしているかというと、オレの奥さんをしている。
子供はまだだけど、結構うまくやってますよ。
そしてたまにだが、旅行の夜の事をネタにして夜の生活を営んでいる。
(上のあの話は、ほとんどこれで聞き出した)もちろん木沢は今でも許せないが、まあ今じゃオレ達のオナペット扱いなのだから、そろそろ許してやろうかと思ってる。




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