静江に連れてこられた病院の看板には『池下産婦人科』とピンクのかわいらしい書体の文字で書かれていた。
春も本番になろうかという三月初旬の朝だった。
 カーテンの閉まった玄関口の前に佇む二人の間を、早くも散り始めた桜の花びらがゆるゆると落ちていく。
「今日は休みみたいだね。……また今度にしようか」 自分より五センチ以上背が高く、肩幅さえ広そうな静江を見上げて滋が気弱な声を上げた。
「あ、そうだ。忘れてた。休みの日だから裏口から入ってと言われてたんだったわ」 ちらりと滋を見た静江がひとつ頷いて言った。
 後は無言で滋を引っ張り右横のビルとの間の細い通路を入っていく。-----
 コンクリートを敷き詰めただけの通路は職員用だろうか。
掃除が行き届かずに缶コーヒーの茶色い空き缶が一つ転がっていた。
雨どいからの水跡に緑色の苔が浮き出ている。
じんわりとした湿気の漂う空気を吸ってか、滋の不安が急に膨らんできた。
「やっぱり考え直してくれよ。冗談なんだろ。勘弁してくれよ」 子供のように腰を落として滋が駄々をこね始めた。
「今更泣き言は言わないの。浮気したら去勢するって警告していたでしょ」「浮気だなんて。お昼ご飯を一緒に食べただけじゃないか。それ以上の事は何も無いんだよ」 抵抗の姿勢を変えない滋の頬に静江のビンタが見事に決まった。
 空気を裂く鋭い音と、風船を割ったような破裂音がほとんど同時に通路の空気を震わせた。
「嫌いな女と二人っきりで食事したりはしないでしょ。これ以上抵抗するなら手っ取り早く蹴りつぶすわよ。その方が何倍も苦しいけど、どうするの」 静江は言った事は実行するタイプだ。
これまでの三年の結婚生活で滋は散々思い知らされていた。
 きつい目をした静江の顔、薄いセーターごしに張りのある砲弾型の乳房、くびれたウエストから洗いざらしの色の抜けたブルージーンズ、そして今にも滋の股間を襲いかからんと待機しているアメリカブランドのトレッキングシューズ。
 ゆっくり落としてきた滋の視線がそこで止まる。
そこが終点だからだ。
 自分の男としての終点も来たのかもしれない。
この病院がそうなのだ。
 涙が出るかと思ったが意外に諦めてしまえば感慨はそれほどわかなかった。
 でも最後の最後で、実は芝居だったのよ、あなたを懲らしめるためにやったの、と笑いかける静江がいるのかもしれない。
いや、きっとそうに違いない。
 ほんの一筋の希望だけを胸に抱いて滋は立ちあがった。
その滋の背中を押すようにして、静江は裏口のドアの部に手をかけた。
「竹下さん変わってないわね。10年ぶりだと言うのに昨日会ったばっかりみたい」 二人を迎え入れたのはショートカットの髪を金色に染めて、耳には大きめのピアスをした派手な化粧の女だった。
白衣がこんなに似合わない女もあまりいないに違いない。
「池下さんこそ変らないわ」 しょんぼりと立つ滋を無視して、待合室のソファに腰掛けた二人は近況報告の話に花を咲かせ出した。
 この女が静江の高校時代の親友という理香子か。
姓が池下と言う事はこの女が院長なのだろうか。
そうじゃないとしても経営者の身内には違いないだろう。
 だとしたら本当に去勢されるのかもしれない。
 滋の不安が恐怖に変っていった。
 なんだかんだ言ってもまさか本当に去勢されるなんて思っていなかったのだ。
 どうせ警告の芝居だと思っていた。
今度やったら本当にやるからね、と言うのが落ちなのだと思っていた。
 しかし、理香子がこの産婦人科の院長か、その身内なのだとしたら、かなり自由が利くはずだから、その手術もやろうと思えば出来るだろう。
 滋の背中が冷たくなった。
脇の下もなんだかべたべたする。
「その人がだんなさんね。滋さんだっけ」 話が自分の方に来た。
滋はうつむいていた顔を上げてにやけた挨拶をした。
「でももったいなくない。結構ハンサムな人じゃない」 理香子は軽く会釈をしただけですぐに静江に向き直った。
「いいのよ。この人は給料運んでくるだけでいいんだから。セックスなんてもう1年間無しなんだからね」「ええ、良くそれで我慢できるわね。私だったら体がうずいてしょうがないと思うわ」「この人とやってないってだけよ。セフレなんか何人でもいるわよ」 セフレというのはセックスフレンドの事だ。
夫には浮気を厳しく禁じているのに自分は遊びたい放題。
勝手といえば勝手だが、子供を産むのは女のほうなんだから女は浮気してもいいのよ。
あなたとはセックスしていないんだから、間違ってもあなたは別の男の子供を育てさせられるなんて事にはならないわけよ。
でもあなたが浮気したらその女に金使うようになるわけでしょ。
だから駄目なの。
 私の浮気は、自分のお金を使うわけじゃないからいいのよ。
あなたには何の損害も与えないわけだから。
 そんな風にまくし立てられると、滋としてはうなずくしかないのだった。
「院長先生。準備が出来ていますが……」 エレベーターから下りてきたナースが、モデルのような足取りで近づくと、滋の横に立って理香子に礼をしながら言った。
 滋の心臓が動きを早める。
血圧が上がるのを実感した。
 やはり本当に去勢されるのかもしれない。
もしそうなったら、明日からの自分はどういう風に生きていけばいいんだろう。
「わかったわ。すぐ行くから、見学の人たちも呼んでおいてね」 理香子はナースを先に行かせると、重い腰を持ち上げるようにして立ちあがった。
 静江も立ちあがる。
「見学って、何人くらい呼んだの。もう、人のだんなを見世物にして」「ビデオも撮らせてもらうわよ。学術的な意味と趣味的な意味でね。だって無料で手術してあげるんだからそのくらい当たり前でしょ」 やはり本気なんだ静江は。
ギロチンの紐が斧で叩き切られた気がした。
 そのギロチン台に掛かってるのは、首ではなくて滋のペニスだ。
 胸のうちから笑いが込み上げてきた。
絶望の笑いだ。
でも、命が無くなるわけじゃない。
生きていれば何かいい事もあるはずだ。
 自分を慰める自分にますます可笑しくなる。
「変な人ね。今から去勢されるというのに、何が可笑しいのかしら」 静江があきれた顔をした。
「良くある事よ。気にしないで。本当に気が狂ったって訳じゃないから」 言い捨てると理香子は先に立ってエレベーターへと歩き出した。
 きびすを返して走って逃げたいという衝動を滋はなんとか抑えこんだ。
 逃げても始まらない。
これは仕方の無い事なのだ。
動物的な恐怖を抑えこめるのだからまだ理性が勝ってるんだな。
滋は不思議に思いながら二人の後をついていく。
 ドナドナドーナドーナと心の中で唄が流れ出し、また可笑しくなって笑ってしまった。
 手術室は3階にあった。
スライドドアを通る時にスリッパに履き替えさせられた。
「あなたはこれを着てね。滋さんはここで服を脱いで、この白衣に着替えてください」 静江には白い上っ張りが、滋にはブルーの特殊な紙で出来た薄いワンピースが理香子から手渡された。
 脱衣籠が台の上に用意されていた。
滋はため息を吐いてズボンのベルトを外した。
「下だけじゃなくて、全裸になってくださいね。ビデオに撮る時にその方が見栄えがいいから。着替えたら正面のドアを抜けて進んでね」 そう言い残して理香子は横のドアを抜けていった。
「冗談かと思っていたのに。本当だったんだね」 すでに準備の出来た静江に向かって滋が言う。
「冗談は嫌いよ。わかってるでしょ。私の性格」「でも、……。去勢なんかされたら俺、生きていけないよ」 涙声で滋が訴える。
「大丈夫よ。変な気が起きなくなるだけ楽になるんだから。それにそうした方が長生きするわよ。禿げる事もなくなるし、セックスする機会が無いのなら玉なんてないほうがいいのよ」 滋が悲しい声を上げるほど静江は活き活きしてくるようだった。
 二人でSMプレイはやった事が無いが明かに静江はサディストだと滋は思った。
「用意は出来ましたか」 さっきのナースが奥の扉を少し開けて顔を出した。
 目のくりっとしたかわいい看護婦だった。
「できました」 静江が答えて滋の背中を押した。
 奥のドアを抜けると広い部屋に出た。
正面に洗面台が二つ並んでいる。
左側には窓があって、春の太陽から生きとし生ける者に向かって公平に暖かい光が降り注いでいた。
こんな天気のいい日に去勢されるなんてなんて皮肉なんだろう。
 どうせなら土砂降りか吹雪にでもなればよかったのに。
 手術室のドアが開くとそこには大勢の白衣の女たちが待ち構えていた。
 当然かもしれないが男は一人もいなかった。
 無意識のうちに数を数えると理香子を除いて8人の女たちがそこにはいた。
 助手をするナースと思しき女が二人で、それ以外は皆見学者のようだった。
 女たちは無言で滋を見つめているが、その頬の赤みを見ればみんな一様に興奮しているのがわかる。
ワクワクしているのだ。
これから始まるショーへの期待で胸が高鳴っているのだろう。
  8畳くらいの部屋の真ん中に手術台が置かれていて、その周りに金属の台が幾つか並んでいた。
その台の上にはソラマメ型の金属のお盆やら注射器、それにメスが並んでいる。
 心臓の鼓動がさらに早くなった。
知らないうちに滋は後ずさる。
 その滋の首根っこを静江ががっしり捕まえて、手術台の側で待っている理香子の前に突き出した。
 三段の階段を上がって、滋は手術台に横にならされた。
「もう少し下にきて。そうそこ」 滋の顔の前にカーテンが張られ、足元が見えないようになった。
  助手のナースが滋の両足を大きく広げるようにして足乗せ台にベルトで固定した。
 自然とワンピースの裾が捲れあがり滋の股間が露わになった。
 おおーとどよめきが上がった。
「へえーきれいに剃ってあるみたいね。手間が省けていいわ」「剃ってるんじゃないわよ。結婚と同時に永久脱毛させたのよ。少しでも浮気しにくいようにね」理香子の横に立った静江が説明した。
「そういう人最近多いみたいね。知り合いのエステティシャンから聞いたわ。でも、パイパン男が一般的になったらあんまり効果なくなるわね」 言いながら理香子が自然な感じで滋のペニスをつかんだ。
 先端にかぶさった皮を剥いて亀頭を露出させる。
 ひんやりした空気を感じて、縮こまっていた亀頭が少し膨らんだ。
「見学の人達、こっちにきてよく見なさいよ。それからビデオ係の人、もうまわしていいからね」 横になった滋の位置からはよく見えないが、奥に立っていた見学者が近寄ってくるのが気配でわかった。
「やっぱり嫌だよ。許してください。浮気は絶対しませんから。静江さんに言うこと絶対守りますから」 滋の大声が、エコーまでかかって手術室に響いた。
「静かにしなさいよ。みんな期待して見にきてるんだからがっかりさせちゃいけないでしょ。男らしくすっぱりと切ってもらうのよ」 静江にいくらたしなめられても滋の恐怖は消えない。
「いやだー。離してくれー」 固定されていない両手で目の前のカーテンを引き剥がし、投げ捨てた。
 手術台が今にもひっくり返りそうにがたがた揺れる。
「みんな、手伝って。押さえつけていて」 理香子に言われてナース二人と見学者達が、暴れる滋の手や上半身に体重をかける。
片腕に二人ずつの体重をかけられて滋はまったく身動きできなくなった。
 それでも声は出せる。
人殺しーやめろーと思いきり叫び出す。
「あなた、ちょっとパンツ脱いでちょうだい」 理香子が見学者の一人に声をかけた。
 まだ若い新人のナースは一瞬戸惑いの表情を見せたが、理香子の意図がわかったのか、腰を屈めて脱ぎ始めた。
「良い濡れ具合ね。あなたも立派なナースになれそうだわよ」 受け取ったオレンジ色の薄手のパンティを広げて、その中心部を確認した理香子が、そこに鼻を近づけた。
 あ、と提供者の声が微かに上がる。
「すっかり本気汁ね。良い傾向だわ。では、滋さん、手術が無事に終わるように、しばらく黙っていてもらいましょうか」 理香子の手に握られたパンティが、大声を上げている滋の口に押し込まれる。
 口を閉じようとする滋の顎をナースが無理やりこじ開ける。
「手術の間これでも味わっていなさいよ」 滋の口の中にねっとりとしたすっぱい独特の味が広がった。
 身動きできずに、さらに声まで奪われてしまった。
 自分が哀れで仕方ない。
どうしてこんな事にならなければいけないのだろうか。
 滋はあふれる涙が両耳のほうまで伝って行くのを感じた。
 「それでは睾丸全摘手術を始めます。患者は32歳男性、って男性なのは言わずもがなだったわね。去勢の理由は浮気防止のため。それと健康維持のためもあるかな。最近多くなってきたのよね。うちではこれで五例目だけど。はい、カメラさんこっちを写して」 理香子はそう言ってビデオカメラを持つ助手を滋の広げた足の間に入れた。
「陰のうの下側を水平に三センチほど切開します」 滋のその部分に理香子の指が当たる。
 カメラに向かって解説するようにその指がゆっくり横に移動した。
 滋は睾丸が縮み上がるのを感じた。
体が無性に震える。
 寒気が背中からわきあがってきた。
「それから睾丸を摘出。精索と血管を電気で焼いて閉じた後、縫合します。今回は偽睾丸は必要ないとの事なので入れません。男の人が自ら去勢に来る場合は偽睾丸を入れる人が多いけど、今回みたいに奥さんがだんなを連れてくるときは、入れないケースがほとんどです。理由は考えればわかりますね。所要時間20分というところです。さて、局所麻酔の注射をするところだけど……」 理香子は最後まで言わずに静江を横目で見る。
 静江は一瞬戸惑った表情を見せたが、すぐにうなずいて言った。
「麻酔使わなくても出来るなら、そうしてくれても良いわよ。その方がいい画がとれると思ってるんでしょ」「いいかしら。まあショック死するケースなんてほとんど無いから大丈夫なんだけど……やっぱり麻酔しちゃうと画的に面白くないのよね。学術ビデオのほうはそれでいいんだけど、趣味の方がね」 冗談じゃない。
勝手な事を言うな。
そう言う滋の声は口の中に押しこまれたパンティのせいで、単なるうめき声に変換される。
 痛みを想像して気が遠くなった。
目の前に黒いカーテンが下りてきたみたいに滋は感じた。
「無料でやってもらうんだから、お好きにどうぞ。ついでに言ったら、取り出した玉も好きにしていいわよ。私も少しは興味あるから、いらないって言うのならもらうけど」 静江は落ち着いたものだった。
すでに結婚した相手を三人くらい去勢した経験でもあるみたいだ。
「睾丸、結構いろいろ使い道があるのよ。焼酎につけて玉酒つくって飲む人も知ってるし、蒸してスライスしたらすごくいけるって言う話も聞いた事あるしね。これはどう料理しようかしらね。スライスじゃ三人前くらいにしかならないから。やっぱり玉酒かな。味が出るまで最低でも二週間はかかるけど、ここにいるみんなに行き渡るからね。あなたもよかったらその時来なさいよ。だんなの玉酒だから味わい深いわよ」「いろんな趣味があるのね。どんな味がするのかしら。今から楽しみだわ」 静江の答えに一つ微笑むと、理香子は手術用のまじめな顔つきに変った。
「無影灯!……メス!」 滋の股間が手術用のハロゲンライトで真っ白に照らされた。
突き出された理香子の指の長い手の平に、助手のナースがメスを手渡した。
 いよいよだ。
自分は男を捨てさせられるんだ。
男を殺されるんだ。
 滋の頭の中が真っ白になったとき、股間に焼け火鉢を押し当てられたような熱い感触がやってきた。
 声を上げることも出来なかった。
ただ身体が弓なりにそって、ベルトがギリギリ身体を締め付けた。
 睾丸をぐいっと絞られる感触。
ずるりと何かが自分の奥から抜け出る感覚をわずかに感じた。
 コトン、コトンとのう盆の上に何かが落ちる音がした。
「電気メス!」 理香子の声だけがはっきり聞こえていた。
他の見学者は沈黙を守っていた。
 焦げ臭い匂いが少しした。
「縫合」 チクリチクリと針でさされる痛みがするが、切られた熱さからしたら大した痛みじゃなかった。
皮膚が引っ張られる感触。
今、切られた個所を縫われているのだと滋にもわかった。
 金玉を取られてしまった。
去勢されてしまった。
やけにあっさりと。
 滋の中でガラガラと音を立てて崩れるものがあったが、それが何なのか今の滋にはわからない。
 男の矜持というものなのか、人間の尊厳なのか、それとも生きがいなのか、DNAなのか。
「顔の表情もきちんととれた?」 ビデオ係のナースに理香子が聞く。
「大丈夫です。でもあんまり面白い表情はとれなかったです」 若いナースはすまなそうだった。
「いいのよ。その方がかえってリアリティがあるのよ。じゃあこれ、DVDに焼いて皆さんに送るからね。じゃあこれちゃんと保存しておくように」 のう盆の上の赤い紐の付いたピンクの玉二個に、皆の視線が注がれた。
「静江さん、満足した?」 理香子が手術用のマスクを取りながら聞く。
「すごく興奮しちゃった。多分アソコはベちょベちょだわ」「ここにいるみんなが多分そうよ。ふふふ。念の為1日入院させるから」 女たちはどうしてこんな事で興奮してるのだろう。
 たとえば自分が若い女性の卵巣摘出手術を見学したとして、興奮できるだろうか。
 自分に限って言えば、そんな事ではまったく興奮できない。
 興奮するどころか、そのあまりの痛ましさに気の毒に思うだろう。
 男と女は根本的に違うのか。
それともここにいる連中がサディストの集団だというだけなのか。
「そのままじゃ可哀想だから、最後に痛み止めの注射だけしてあげといて、じゃあ後はよろしく」 まだ滋の横についているナース二人に指示を出して理香子は手術室を出ていった。
 談笑しながら他の見学者も、そして静江も出ていった。
「お疲れ様でした。よく我慢しましたね。じゃあ痛み止めの注射を打ちますからね」 ナースの言葉がやけに優しく滋の耳に聞こえてきた。
 股間にちくりとした痛みの後、注射液が注入されるのを感じた。
「がっくりきたでしょうけど、去勢しても男性ホルモンの服用で勃起する事も出来るし、やる気も起きてきますからそんなに心配は要りませんよ。女性を妊娠させる事以外は出来ると思って結構ですから」 もう一人の中年のナースも同情的な事を言ってきた。
 ありがとうと言おうとしたが、口が動かない。
「あ、まだ入れっぱなしだったんだ」 中年のナースが滋の口の中に押しこまれたパンティを引き出す。
 唾液で重くなった布切れは異様な匂いがしていた。
「僕は別にがっかりしてなんかいないよ。静江の期待に答えてやれた事が僕には嬉しいんだ」 口がうまく動かなくて声が震えた。
震えながらも精一杯の強がりを言ったやった。
  今日はここに一泊か。
明日の朝は男じゃなくなって始めての朝だ。
 きっと何かが違ってるんだろうな。
性欲が無くなるのはむしろ歓迎だ。
 だっていくら願っても静江を抱く事なんて出来なかったし、浮気なんかしたくても出来ないし、一人でオナニーするのにも飽きてきたところだったから。
 でも性欲が無くなったとしたら、何が楽しいだろうな。
何か面白いことはあるだろうか。
今のところ特に思いつかない。
だって、今まで生きるって事は欲望を充足させる事だと思っていたのだから。
 明日の朝が楽しみだ。
どう変るのか実験だ。
 一瞬、自分の睾丸が漬かった焼酎を回し飲みする静江と理香子の笑みが浮かんだ。
 陶酔に似た感情に滋の心が包まれる。
 嬉しい。
そう思いながら、滋はゆっくりと目をつぶった。




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