「ほんとに、女の扱いがヘタよね」
わたしが勤めるパート先の店長は歳。
大手焼き肉チェーン店を任される将来有望な幹部候補の正社員だけど、女の扱いがヘタな彼はいつもわたしに小言を言われてばかり。
とにかく人を気持ちよく仕事させようとする気持ちのない人で、こちらが何かを言うと、すぐにそれをへこまそうと反論したがる。
業績はそこそこで男性社員の扱いはうまいけれど、こちらを女と見下して差別しているのか、まったくと言っていいほど私たちパート仲間からは人気がなかった。
「少しは、女のことを勉強したら」
そんな彼だから、いつもわたしは怒ってばかりいた。
年上だけど、ただのパートに過ぎないわたしが、雇い主である彼にそんなぞんざいな口をきくこと自体がおかしい。
でも、彼は話し方や仕草、その人をやり込めようとする考え方までが、すっかりわたしに見向きもしなくなった夫に似ていて、なぜか彼に対してだけは素直になることができなかった。
いつものことだから、厨房の人たちも他のパート社員も笑っているだけで仲を取り持とうなんてしてくれない。
そのうち激発して、いずれわたしはこの職場を去ることになるのね、なんて考えていたけれど、この彼とは離れるどころか、今ではわたしの大事なご主人様になっている。
ケンカするほど仲が良いと言うけれど、わたしが彼を気にするようになったのは、彼と激しい言い合いをするようになってからだ。
わたしは女だから激情の趣くままに言葉を投げつけてしまうけれど、彼は男で、ましてや社員を管理する立場にあった人だから、いつも最初に折れるのは彼だった。
「そんなに目くじら立てないでよ。可愛い顔が台無しになるよ。」
おどけたように言われて最初は腹が立っていたのに、いつの間にか、わたしは彼が「可愛い」と言ってくれるのを嬉しがるようになっていた。
子供たちを大きくすることで精一杯で、女であることもずっと忘れていた。
でも年下の男性にお世辞でも「可愛い」と言われて、忘れていたものがちょこちょこと顔を出すようになり、わたしの中でその言葉を期待するようになったのだ。
だからかもしれない。
社員を多く雇えば、店のやりくりは楽になる。でも、人件費に売り上げを持っていかれてしまうから、なかなか人を雇おうとしない。
「ねえ、今度の日曜、人がいないんだ。申し訳ないけど出てくれない」
わたしの契約は平日だけで、それも午前中だけだった。
でも、あまりに人手が足りなすぎてタイムカードを押してからも、サービス残業をすることなんてしょっちゅうだった。
それに加えて、今度は休みの日まで働いてくれと言われて、怒らないはずがない。
原因は、はっきりしているのだから、この若い店長がパートなり正社員なりを雇えばそれですむ話しなのに、彼は人件費を切り詰めたくてそれをしない。
「いい加減にしてよ。」
「ねえ、お願い。こんなこと頼めるの○○さんしかいないんだ。」
童顔で、顔つきはそこそこ可愛らしい彼だった。
わたしの夫も、若い頃はこんな顔をしていた。
宿敵が猫なで声で甘えて、わたしを頼りにする。
わたしを「可愛い」と言ってくれない彼だったら、わたしはすぐにでも「いや」と返事をしていたはずなのに。
「ほんとに、今度だけだからね。」
ため息混じりに渋々承諾したような顔をしていたけれど、本当は心のどこかで嬉しがっていた。
わたしは、清掃婦としてこの店に雇われ、開店までに所定の作業を終わらせてしまえば、それで仕事は終わる。
仕事は時からで開店は時。
他の社員さんがお店に来る時間は、だいたい時から時半くらいの間。
その間、お店の仕事をする店員は、わたしと店長だけしかいなかった。
店長の彼は、責任者らしく前日の閉店がどんなに遅くなっても時半には店に来ていた。
帳簿を見直したり、厨房に入って仕込みをしたり。
その日によって、お店の汚れ具合は違って、前日に流行らなかったりすると清掃の仕事はすぐに終わってしまう。
その仕事が終われば、わたしの役目も終わるのだけど、元々お節介好きで、料理も好きだったわたしは厨房に入って仕込みを手伝うことも度々あった。
彼が大っ嫌いだった頃は、厨房に入ることも少し躊躇ったりしていた。
でも、その躊躇いはいつの間にか消えて、彼と同じ空間で仕事をするのが楽しくもなっていた。
その日は、やっぱり前日にお客さんがあまり入らなくて、清掃の仕事はすぐに終わった。
わたしはいつものように、他の社員さんが来るまでの間、厨房に入って彼の仕込みを手伝っていた。
彼がニンジンの皮を剥きながら、わたしが隣りに立ってもやしのナムルを作っていたときだ。
「○○さんて、ほんとに可愛いよね。俺、好きだよ・・・。」
それまで真剣な面持ちでニンジンの皮を剥いていた彼が、おもむろに言ったのだ。
「えっ」
確かにはっきりと「好きだよ。」と言ったのは聞こえたけれど、わたしは聞こえないふりをした。
心臓が早鐘のようになって、顔が赤くなっていくのが自分でもわかった。
あり得ない。だって、わたしと彼は犬猿の仲の宿敵だもん。
わたしは彼に好意を持っているけれど、彼がわたしを好きなはずはない。
いつもの悪い冗談だと思って受け流そうとしたけれど、彼は唐突にニンジンとピーラーをテーブルに置くと、わたしに振り返った。
「俺、ほんとに好きだぜ。」
返事なんかする暇もなかった。
いきなり抱きしめられ、そしておもむろに唇を塞がれた。
わたしは、もやしを和えていた菜箸を離すこともできなかった。
身体が強ばり、咄嗟に逆らおうとしたのは、ほんの一瞬だけのことだった。
痛いくらい力強く抱きしめられ、わたしの身体から力が抜けた。
あまりにも情熱的なキスだった。
心底わたしを欲しがっている彼がいるのを知って、好きだったのはわたしだけじゃなかったんだとわかると、それからはどうしようもなかった。
すぐにスカートの中に手が入ってきて、お尻を触ってきた。
逆らうつもりはなかった。
荒々しく掴まれて、その手はすぐにわたしの部分に触れた。
欲しがっているのを教えるように、彼の堅くなったものがわたしのお腹を押していた。
もう、時に近かった。
他の社員さんが来るまで、そんなに時間はない。
でも、彼は許してくれなかった。
抱きしめられたまま器用に引きずられ、社員が休憩する事務室に連れて行かれた。
そこには横になれるくらい大きなソファがあって、わたしはそこに押し倒された。
荒々しくシャツをはだけられ、おっぱいを出されて彼がむしゃぶりついてきた。
手は、わたしの下着を一生懸命下ろそうとしていた。
わたしの気持ちも急いていた。
お尻を浮かせて手伝ってあげた。
ストッキングごと下ろされ、まだ片足に残ったままだったけど、わたしの下半身が露わになってしまうと、彼は急くようにベルトを弛めて、張り詰めたものを自分の手で掴みだした。
何も考えたりはしなかった。
見つかってもかまわない。
わたしは、あの時心の底からそう思っていた。
彼が覆い被さり、自分で握りながら一生懸命わたしの場所を探した。
わたしは自分から握って、彼に教えてあげた。
欲しくて仕方なかった。
愛撫なんかほとんどなかったけれど、わたしは恥ずかしいほど濡らしていた。
彼の大きなものが、一気に奥深くまで入り込んできて、頭の先から痺れるような快感に悲鳴を上げた。
声を出しちゃだめ。
そんなことはわかっていたけれど、嬉しくて声は次から次へと湧いて出た。
「大丈夫、中に出して・・・。」
わたしは、自分からせがんでいた。
大丈夫、なんて言い切れる時期じゃなかった。
どっちに転んでもおかしくない。
でも、わたしは彼の身体から出るものが欲しかった。
わたしの上で呻きながら、一生懸命腰を使ってくれる彼が可愛くて、何度も彼の舌を求めた。
苦しいほどに唇を塞がれながら、彼が喘いで、わたしの奥深くに温かいものが勢いよく注ぎ込んでくれたとき、わたしはどうなってもいいから、彼のものになろうと決めた。

「今度の休みもいい」
あの日は幸いにも、誰にも見つかることはなかった。
わたし達は、いつもの振りをして、何食わない顔で同僚たちを迎えた。
それからも、わたし達は決して気付かれないように、細心の注意を払いながら逢瀬を重ねた。
彼が仕事に来るのは時半。
わたしは、時に行けばいい仕事に、時半から入るようになった。
わたしとの時間を少しでも作りたくて、店が閉まったあとに掃除までしてくれる彼が可愛くて仕方なかった。
肌を重ね合うのはいつもお店の中。
それは、あの休憩所代わりの事務室であったり、座布団を敷き詰めた小上がりであったり。
時々は、彼がしてみたいというので、男性トイレの中で立ったまましたこともある。
彼は、わたしの隅々まで欲しがるようになって、至る所に口を付けた。
四つん這いにされ、お尻の穴を舐められそうになって、恥ずかしさのあまり「いやっ」と、咄嗟に逃げてしまった。
申し訳なかったけど、まだわたしにそれを許せるほどの淫らさはなかった。
でも、彼は許してくれなかった。
おもむろに両手を背中にねじ上げられ、傍にあったガムテープで縛られた。
抗えなくなったわたしのお尻の穴を、彼は嫌と言うほど舐め尽くした。
穴の中に舌まで入れられそうになり、わたしはほんとに泣いた。
「これからは俺好みの女にしてやるからな。」
メソメソとするわたしの唇を荒々しく貪りながら、彼は自分の本性を露わにしていった。

夫とはすっかりレスになって年近く経っていた。
自分でも無理にしたいとは思わなかったし、嫌がるのを無理にしてもらっても嬉しくなんかない。
どうしても我慢できなくなったときは、自分で慰めた。
それを惨めとは思わなかったし、そんなときわたしが頭の中で思い描いていたのは、とても実現なんかしないような醜いセックスばかりだったから、最初から諦めてもいた。
お店での逢瀬はそれなりに楽しかった。
子供たちを学校に送り出し、セックスをするために朝早くからお化粧をして出掛ける。
鏡に向かいながら、なんていやらしくなったのと、自分に問いかけることさえ楽しくて仕方なかった。
でも、彼はお店の中で済ませる慌ただしいセックスだけでは満足できなかった。
わたしを蹂躙し、屈服させることに異常な執念を燃やすようになったのはすぐだった。
「亭主と比べて、どっちがいい」
「孕ませて俺の子を、お前の亭主に育てさせてやるからな。」
「お前は亭主に貸してるだけだ。お前の持ち主は俺だからな。」
セックスの合間に、彼はずっとこんなことをささやくようになった。
それはとても陳腐で程度が知れる言葉だったけれど、わたしは彼の望む答えを口にした。
「あなたの方がいい」と声の限りに叫び、「あなた、ごめんなさいわたしはもうこの人のものなの」と彼に喜んでもらうために、痛いくらい突かれながら声を出して泣いたりもした。
そんなことを繰り返しているうちに、わたしは心底彼のものになったと思えるようになった。
だから、「これからは、ご主人様と呼べ」と彼から言われた時も、素直に受け入れることができた。
事務室のソファはラブホテルのベッドに代わり、狭いトイレで立ったまましたセックスは、専門のホテルで十字架に貼り付けられながら責められるものに変わった。
夫は、わたしの裸になんて興味もない。
お風呂は、夫がさっさと寝てしまってから夜中に一人で入ることが多かったし、彼に喜んでもらうために買った若い子が付けるような下着は、やっぱり夫が寝静まってから洗って乾燥機に掛けていた。
その下着は、タンスとは別のところにしまってあって、夫が仕事に出掛けてから、彼に見てもらうために履いている。
夫は、わたしの背中やお尻に鞭の痕が生々しく痣になって残っていることを知らないし、性器を隠す陰毛がすっかりなくなって毛根さえ見あたらないことも気付かないでいる。
すっかりお尻も使えるようになって、そこが気持ちよくてならないなんて、きっと思いもしないだろう。
セカンドカーで使っている軽自動車のトランクには、彼がわたしを虐めるために買ってくれた道具がたっぷり。
それは、夫が結婚年の記念に唯一買ってくれた贅沢なシャネルのバッグに収められて、ご主人様が使ってくれるのを今か今かと待っている。
わたしは、そのバッグを携えて彼の元に向かう。
わたしのすべてを征服してくれたご主人様。
浣腸の痛みにも、もう慣れた。
あんなに気持ちが良いものだなんて知らなかった。
ウンチに塗れて鼻が馬鹿になるくらい臭い中で、ご主人様はわたしをたくさん可愛がってくれる。
わたしのウンチを美味しいと言って笑いながら食べてくれる。
わたしも早く彼のウンチを全部食べられるようになりたい。
女は、気持ちよくしてくれる人だけが本当のご主人様。
気持ちよくしてもらえるなら、オシッコだって美味しいし、ウンチを食べるのだって全然平気。
この間は、夜中までお店の手伝いに入り、お客さんも社員さんも誰もいなくなった後で、ご主人様に調教していただいた。
年下の可愛い彼。
わたしがお客さんと楽しそうに話しをしただけで、不機嫌になっていっぱいお仕置きしてくれた。
彼のものをたくさん膣に注ぎ込んでもらい、それを拭いもしないで下着を履いて、そして、「迎えに来て」と、夫に電話をした。
不機嫌な顔をしていたけれど、夫は迎えに来てくれた。
彼が店先まで出てきて見送ってくれた。
「大事な奥さんを夜中まで申し訳ありませんでした。気を付けてお帰りください。」
助手席に座りながら、ハンドルを握る夫に「店長さん」と私が紹介したら、わざわざ見送ってくれた彼に夫も恐縮したのか、「いえいえ、何もできない奴ですけど、これからも忙しいときはお手伝いさせますので。」と、自分のをまた差し出すことを約束していたっけ。
「お前の話と違って、ずいぶん礼儀正しい男じゃないか。」
帰りの車の中、夫はわたしに向かってそう言っていた。
「すごくいやな奴がいてね・・・。」
彼と関係を結ぶ前、わたしは夫にそうこぼしていた。
それは、今でも変わらない。
「中身は全然違うわよ。」
確かに彼は、外面と本性をうまく使い分ける。
「まだ嫌いなのか」
意外そうな顔で訪ねた夫にわたしは答えた。
「当たり前じゃない。あなたとは全然違うもの。」
そうあなたとは違う。
彼は、わたしを悦ばせてくれる。
幸せな気持ちにしてくれる。
膣から彼のものが、すっと流れ出してわたしを喜ばせた。
「ねえ、ずいぶんとしてないから、今夜どう」
「ええ今から」
案の上の返事。
「寝てるだけで良いから。ずいぶんしてもらってないんだもの。全部わたしがしてあげるから。」
もうすぐ、わたしは彼の子を産む。
「ったく、面倒くせえなぁ。」
だから、あなたはだめなのよ。
「ちょっとでいいからしよぅ・・。今晩だけだから。部屋も真っ暗にして寝てもいいから。ちょっとだけしたい・・。」
わたしはご主人様のもの。
あなたには、貸しているだけ。
「ほんとにちょっとだぞ。俺はすぐに寝るからな。」
「うん。」
あなたなんて欲しくない。
でも宿り木がなくなるのは困るの。
あなたに、ご主人様の子供を育ててもらうために。
「うれしい、あなた。」
これでまたわたしは、ご主人様の言いつけを守れる良い子になって、たくさん可愛がってもらえると喜んでいた・・・。