マサオくん、いつもありがと。
はい、これ登喜子から。
バレンタイン・デーのプレゼントよ!」寒空の中、いつものスポーツ・ウェアに身を包んだ快活な少女が、赤いリボンをつけた大きめの箱をスポーツバッグから取り出し、上着の上からでもわかるような猫背の小男に向かいにこやかに差し出す。
爬虫類のような表情のない男の眼差しにも、動揺した様子がうかがえる。
「あなたは私に気づかないようにしてるつもりだろうけど、全部知ってるよ私。」男の表情が凍りつく。
「扉の影から私のこといつも見てるでしょ? こっそり写真を撮ったり、買い物のときも、私の後に同じものを買ったり、それに……」登喜子は彼のしてきたことをひとつひとつ思い出そうと、首をかしげながら言葉を続ける。-----続きを読む